日々草子 西垣医師襲撃事件 4(最終話)

西垣医師襲撃事件 4(最終話)







何はともあれ、琴子に関する容疑は晴れた。

「視点を変えるか。」
金之助は言った。
「今まではガイシャを恨んでいる人間を考えていた。その逆はどうやろ?」
「逆というと、ガイシャから恨まれている人間ってこと?」
幹が言うと金之助は、
「そうや。」
と頷いた。

「何らかの事情でガイシャが嫌っている人間と顔を合わせた。んでもって言い争いとかになった。そこでバコーンッと!!」
金之助が拳を振り上げ、殴る真似をした。

「どうや?俺の推理は?」
「うーん、至極まともで逆に不安だわね。」
幹の言葉に琴子たちも「うん、うん」と頷いた。
「何や、まともだと不安って。失礼な奴らやな。」
プンプンと金之助は膨れかけたが、
「お、そうや。忘れとった。」
と笑顔になった。
「忘れた?何を?」
琴子の問いに金之助は「フフン」と笑いながら、言った。
「すみませんね…細かいところがどうしても気になるものでして。」
「は?」
「…いやいや、この台詞も言いたかったんや。なんか本物っぽくないか?」
得意気な金之助に、
「…いきなり言われても。」
「ここで右京さんの台詞とか無理ありすぎだし。」
「ていうか、まだなりきっていたのかよ。」
と、幹、啓太、真里奈が呆れた。

「じゃあ、ガイシャが嫌っていた人間を探すことにするで!」
気を取り直した金之助がはしゃいだ声を上げた。とても事件現場の刑事とは思えない。
「で、誰や?誰かおるやろ?」
「西垣先生を…。」
「嫌っている…。」
「人物…。」
幹たちが一斉に見たのは…。

「お前か!!入江!!」
入江直樹だった。

「ちょっと、いい加減にしてよ!さっきからあたしとか入江くんとかを犯人に仕立て上げようとして!!」
直樹の前に琴子が両手を広げて立ちはだかった。
「何なのよ、あんたたち、あたしたち夫婦に恨みがあるわけ?」
「恨みはないけれど。」
「西垣先生がライバル心を燃やしているのって、入江先生しかいないし。」
「入江先生が来てからこの病院での人気ナンバー1の座を明け渡しているしな。」
幹たちは困ったような表情を浮かべた。

「なるほど。それじゃ入江が犯人ってことでいいんやな?」
皆の話を聞いていた金之助が直樹を指さして叫んだ。
「入江直樹!傷害の容疑…いや殺人未遂で逮捕や!!」
「はあ!?」
直樹がポカンと口を開けた。
「ちょっと金ちゃん!!」
「お前、何を言ってるのか分かってんだろうな?」
直樹が眉を潜めた。
「わかっとるで。お前が犯人ってことはわかっとる!!」
「でもいきなり逮捕っていうのは、おかしいんじゃないの?」
自分たちで直樹を疑うよう仕向けておきながら、幹は戸惑っている。
「いいや、俺の刑事としての長年の勘がいっとる。入江、お前が犯人や!」
「というか、入江先生のアリバイは調べねえのか?」
啓太も金之助に抗議する。
「アリバイ?んな細かいことは気にせんでええんや。」
「お前、今さっき細かいことが気になるって言ったじゃねえか。」
直樹が睨んでも金之助はそっぽを向き言い返す。
「それはそれ。これはこれや。」
「無茶苦茶じゃない!金ちゃん、何よそれ!」
「何が杉下右京よ!」
「ていうか、陣川警部補以下だぞ、この刑事。」
琴子に続き幹と啓太も金之助を責めるが、本人はどこ吹く風といった調子である。

「うるさい、うるさい、うるさい!!入江が犯人なんや!!」
「証拠を見せろよ。」
直樹が金之助に迫った。
「証拠?んなもんあるかいな!というかなくてもええんや!」
「はあ!?」
「お前はなあ犯人顔なんや!その顔は昔から犯人の顔なんや!!」
金之助の頭にはもう直樹以外に犯人は浮かんでいなかった。

「酷い…金ちゃん…。」
「こうやって冤罪って生まれるのねえ。」
「こういうのって抗議できる機関とかないわけ?」
琴子、幹、真里奈がひそひそと言葉を交わす。

「琴子にちょっかい出していたガイシャをお前は気に入らんかった。それで殺そうとした。どうや?違うか?」
金之助の迷推理に、一同は開いた口がふさがらない。


「単純すぎる…。」
「入江先生ならもっとまともな方法を考えるだろうよ。」
「琴子にちょっかい出したくらいで人生を棒に振るような真似しないわよ、入江先生は。」
「入江くんはそんなことしない!ちょっと性格が悪くて口が悪いけど人殺しなんてしないわ!!」
最後の琴子の言葉に、幹たちは更に口を大きく開けた。
「お前、旦那にそれはねえだろう…。」
さすがの啓太ですら、直樹に同情を寄せる。

「とにかく、アリバイを調べろ。」
そんな中、犯人扱いされている直樹が一番冷静だった。
「そうだ、アリバイくらいは調べた方がいいと思うぞ?」
啓太も直樹に同調する。
「うるさいやっちゃなあ。わかった、わかった。」
金之助は面倒臭そうに顔をゆがめた。

「それじゃあ、最後に一つだけ。」
金之助が人差し指を立てた。
「まあた、杉下語録。」
真里奈が冷めた目で金之助を見た。
「お前は犯行時刻にどこにおったんや?え?」
「俺は手術をしていた。」
「手術?」
「そうよ、入江くんは手術をしていたわ!」
これ以上のアリバイはないだろうと琴子が言った。
「そうね。入江先生、緊急オペしてたんだった。」
幹が思い出す。
「これで入江先生のアリバイは鉄壁ね。」
真里奈も喜んだ。

「…鉄壁?フッ、素人さんが考えそうなことやな。」
しかし金之助はその鉄壁のアリバイを鼻で笑った。
「手術してたからって、入江のアリバイになるとは限らん。」
「ちょっと、金ちゃん!いい加減にしなさいよ!」
琴子の堪忍袋の緒が切れ始めた。
「入江くんは手術してたんだってば!!」
「それが本物の入江だと、誰が証明できるんや!!」
金之助の言葉に、全員「あ?」という顔をした。

「ええか?手術というと帽子、手袋、あとあの変な着物着ているやろ?」
「そうだけど?」
琴子が口を尖らせる。
「あんな格好していて、中身が本物の入江だって誰が分かる?あ?どうや?」
「中身って…。」
「俺は入江でーすって言っているけれど、実は入江に頼まれた別人かもしれへんやろ?」
「あほらし、付き合ってられねえ。」
直樹がドカッとパイプ椅子に腰を下ろした。
「フン!お前もこれまでや、入江!」
「勝手にしろ。」
どうせ本当のことはすぐに明らかになると、直樹は思っているので動じない。

その時だった。

「違います!!」

突如響いた女性の声に、一同は振り返った。

「ち、違います!入江先生は犯人なんかじゃありません!!」
「あなたは…。」
「丸石さんじゃないの。」
カンファレン室に入ってきたのは、看護師の丸石だった。

「犯人は…犯人は…私なんです!!」
丸石の突然の告白に一同「ええ!!」と声を上げる。
「丸石さん、とういうことですか?」
琴子が丸石の傍に寄った。
「それは…。」

「僕から説明しよう。」
そこにまた新しい声が響く。
「僕が説明するよ。」
「西垣先生!!」
次に現れたのは、何と被害者の西垣だった。

「西垣先生、大丈夫ですか?」
幹が訊ねると西垣は笑いながら、
「ああ、全然平気。ちょっとコブを作って気を失ったんだ。」
と答えた。

「で、真相なんだけどね?」
西垣は話し始めた。

「僕と丸石さんはまあ、リネン室で念入りに“打ち合わせ”をしていたんだ。」
西垣が話すと、丸石はポッと頬を染める。それで何の打ち合わせか、金之助以外の人間は全て分かり、呆れる。
「だけどまあ…ちょっと頑張りすぎちゃってね。ハハハ。」
「頑張りすぎた、ね。」
直樹が冷めた声を出した。
「私が悪いんです。」
丸石がうなだれる。
「私が…私が勢いあまって…先生を突き飛ばしてしまったんです!!」
「それで僕が壁に体をぶつけたら、棚の上から金タライが落ちて来て頭を直撃したんだ。衝撃がちょっと強くて気を失っちゃった。それが全てだよ。」
西垣は「これが証拠のタライ」と、直径50センチ程度の金タライを出した。

「…ドリフかよ?」
啓太があんぐりと口を大きく開けて呟く。
「何、それ?」
「事件じゃないのね。」
「バカバカしい。」
琴子たちは口々に言うと、疲れ果てて体をテーブルに倒してしまった。

「金之助…。」
そこに一際冷たい声が響いた。
「てめえ、殴られた痕なのか、物がぶつかったのかくらい見分けられねえのか?」
「あ、いや…その…。」
形勢逆転である。怒る直樹に震える金之助。

「じゃ、何ですぐに出て来んかったんや!!」
金之助は丸石にぶつけた。
「それは…恥ずかしかったからです。」
「リネン室でいちゃついていたなんて言えねえよなあ。」
啓太が言うと琴子たちは頷いた。
「いいんだ、丸石くんは悪くない。悪いのは僕さ。」
西垣が丸石の手を取る。
「西垣先生…。」
「女の子が放っておかない僕のこの魅力が全て悪いんだよね?」
「…そうです、西垣先生の魅力があまりにも素晴らしいからです。」
丸石は目をトロンとさせて、頬を染めた。

「…さて、帰るぞ、琴子。」
「はあい、入江くん。」
「アタシたちも帰りましょう。」
「そうよね。」
「ああ、そうだ。帰って『相棒』を録画したやつ観ねえと。」
琴子たちは席を立ち、カンファレンス室を出て行く。

「つきあってられねえよ。」
直樹は最後に捨て台詞を残すと、ドアをパタンと閉めた。

こうして『西垣医師襲撃事件』は幕を閉じたのだった。










☆あとがき
本当にくだらなくてお恥ずかしい…でもこのくだらなさは癖になるんだな。

刑事ドラマのパロディを一度書いてみたかったんです。
記念すべき?第一作は『相棒』で(笑)
結構色々ドラマを見ているので(二時間ドラマも)、今後も金ちゃんが懲りずにいろいろな刑事コスプレをするかと思います(って、シリーズ化決定かよ!)←カテゴリをちゃっかり作っちゃったし。

あまりのくだらなさに、拍手掲載時は反応が僅か2件でした(笑)

「こんなの書いていたってことは相当おかしかったんだな、水玉は」とでも思っていただけたらと思います。

あ、私はミッチーの次の相棒の成宮くん、OKです!イケメンでよかったわ~。
ミッチー降板が決まった時「萩原聖人だったらどうしよう…」とドキドキしてましたか(あの刑事、うざっ!)。


関連記事
プロフィール

水玉

Author:水玉
『イタズラなkiss』のほかには『ゴルゴ13』が好きです☆
多数あるイタキスの二次小説の中で邪魔することなく、ひっそりとマイペースで我が道をゆきつつ生息しております。
そっと見守っていただけたら嬉しいです。

※当ブログに掲載されている文章及びイラストの無断転載・使用はご遠慮下さい。

現在の御訪問者
現在の閲覧者数:
御訪問ありがとうございます
このブログについてのお願い
当ブログは、『イタズラなkiss』の二次創作をメインとしておりますが、時折管理人の趣味や日々の出来事についての記事も書いております。

原作者様や関係各位とは一切関係ありません。

二次創作については、いわゆる原作の隙間をぬった作品もありますが、主人公以外のキャラクターをメインとしたものや オリジナルキャラクターが出てくるものもございます。

そして、原作と違った時代(平安や明治やその他の時代を舞台にしております)、異なる設定(主人公を医者と看護師じゃない職業にしております)で書いてあるものが多いですが、原作を冒涜しているつもりは全くございません。

二次創作が苦手という方及び原作のイメージと合わないと思われる方はどうぞお引き取り下さいますようお願いいたします。

コメント及びメールなどでの苦情及び批判は公開、非公開を問わず、私へ告げることはご遠慮いただけますよう、お願い申し上げます。

このブログ及び掲載されている話が嫌いだと思われたら、黙ってあなた様の中から、このサイトの存在を消去していただけますよう、お願い申し上げます。

カテゴリー+月別アーカイブ
 
最新コメント
最新記事
カボチャの世界
Private
カレンダー
05 | 2017/06 | 07
- - - - 1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 -
リンク