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2012.05.09 (Wed)

西垣医師襲撃事件 2


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琴子たちはカンファレンスルームへと移動した。

「ええと、ガイシャはこの病院の外科医の西垣さん…やな。」
手帳を広げ確認する金之助。この部屋で今から事情聴取が行われるのである。

「…西垣さんはリネン室で倒れている所を発見された。命に別条はないものの、意識不明で現在治療中。何者かに頭部を殴られた痕がありってことで。」
そこまで話すと金之助は琴子たちの顔を見回した。
「さて、こういう事件の場合はまず怨恨を疑うもんやけど…。」
「え!西垣先生がそこまで!?」
琴子が目を丸くする。
「そこまでって、何や?」
まだ話は全く進んでいないのにと金之助は不思議な顔をした。
「いや、確かにだらしない人だったよ?西垣先生は。でもまさか、そこまで…それって犯罪じゃない?」
ブツブツと口にする琴子。
「何や?何か知ってるんか?」
「金ちゃん、今言ったじゃないの。」
「へ?」
まったく話がかみ合ってない琴子と金之助はお互い首を傾げる。

「今言ったでしょ?まずは援交を疑うって。」
「琴子…。」
琴子の隣で話を聞いていた直樹は「はあ」とまたもや呆れ果てた溜息をついた。
「援交って、援助交際の略でしょ?いくらなんでも西垣先生、そこまでは…。」
「ばかか、お前は!!」
琴子の耳を引っ張り直樹が怒鳴った。その声に幹たちが耳を塞ぐ。
「援交じゃない、“怨恨”だ!」
「えんこん…?」
「恨みって意味よ。まったくアンタ、そんなんで入江先生の相棒なんてよく名乗れたもんだわ。」
幹も「はあ」と溜息をついた。
「あ、そっか。恨みね、恨みか。ハハハ…。」
頭に手をやり笑って誤魔化す琴子である。

「さて。」
「コホン」と金之助は咳払いをした。
「話を元に戻して、西垣先生が誰かに恨まれていたか知っている人は?」
琴子たちはそれぞれ顔を見合わせた。
「あ、いや。皆さんの気持ちはよう分かるで?」
金之助が笑顔を作る。
「そりゃあそうやろうな。同じ病院で働く人間を恨んでいる奴なんて考えたくもないやろ?でもな勘忍やで。これが捜査の基本っちゅうやつでな…。」
「…今夜一晩で終わるかしら?」
真里奈がポツリと呟いた。
「へ?」
「…まずこの病院のナースだけでも何人いるかしらねえ?」
幹が指を折り始めたが、すぐに十本全て折られたため手を引っ込めてしまった。
「どっかの男から女を奪っている可能性だってあるしな。」
両手を天井へ上げ伸びをしながら言うのは啓太。
「この間、“私たちのどっちが本命なの”って言われているところ、あたし見ちゃった。」
琴子が言う。

「ええと…皆さん?」
何だか変な雰囲気になってきたことに金之助が戸惑い始めた。

「金之助。」
最後に口を開いたのは直樹だった。
「な、何や?」
「あの人を恨んでいる人物を挙げると、一晩かかっても終わらないがいいか?」
直樹の言葉に琴子たちは一斉に大きく頷いた。
「一晩って。」
金之助は腕時計を見る。まだ午後11時である。
「…とりあえず、それは後に回しておくことにするっちゅうことで。」

とんでもない男が被害に遭ったものだと、金之助は泣きそうになっていた。


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