日々草子 西垣医師襲撃事件 1

2012.05.09 (Wed)

西垣医師襲撃事件 1


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池沢刑事の事件簿
― 西垣医師襲撃事件 -


斗南大学医学部付属病院にて、事件は起きた。
場所はリネン室。

「怖いわあ、大丈夫かしら?」
「犯人、まだ病院にいるのかな?」
ざわざわと現場で騒いでいるのは、お馴染みのメンバーである。

「失礼。」
そこに到着したのは、○×署の刑事、池沢金之助だった。
「あ、金ちゃん…って、何、その恰好!!」
そう言って噴き出したのは、金之助の旧知の友人でありこの病院で働いている入江琴子である。
「何がや?俺のどこがおかしいって?」
「いや、全ておかしいし。」
そう冷たく言ったのは、琴子の夫であるこの病院の医師、入江直樹。
「何やと、入江!!」
この直樹の唯一のライバルと自負している金之助は激昂した。
「だってえ、どう見たっておかしいわよねえ?」
琴子の同僚看護師、桔梗幹も頷いた。
「正直言って、その髪型も服も似合わないわよ?」



金之助の髪はピシッと決めたオールバックだった。そして服はスーツ。これまた似合っていない。さらに目には眼鏡をかけている。
「どうしたの、金ちゃん?結婚式の帰り?目も老眼?」
琴子が首を傾げた。
「違う!!あのなあ…いや、まあいいや。」
金之助はフッと笑った。そして取り出したのは…水筒だった。
金之助は水筒の蓋を開けると、それをカップの代わりにして中身を注ぎ始める。
「えっと、こうやったな?」

なぜか金之助は水筒を頭の高さまで上げて傾けた。
「うわっち、熱っ!!!!!」
当然のことながら、中身の紅茶は思い切りこぼれ金之助の手にかかった。



「おかしいなあ、何でや?何でうまくいかへんのや?あの人はうまくやっとったのに…。」
フーフーと手に息を吹きかけながら金之助はこぼした。
「あの人?だあれ?」
琴子はまた首を傾げた。
「もしかして…。」
ピンと来たのは幹だった。
「まさか…相棒の右京さん!?」
「ピンポーン。」
金之助が人差し指を立て、にんまりと笑う。
「あの人ほど俺に似合う人はおらへんな。というか、俺の方が優秀かもしれへん。」



「…はあ!?」
その場にいた全員が疑問の声を上げた。
「右京さんっていったら、どう考えたって合っているのは入江先生よねえ。」
幹が直樹をうっとりと見て口にした。
「そうよねえ。東大卒のあの優秀な頭脳。上品なスーツの着こなし。」
真里奈も頷いた。
「ちょっと待って。入江先生が右京さんだったら相棒はアタシでいいわよね?」
「はあ?あたしよ!ミッチーの後釜、成宮ポジションはあたし!」
「ちょっと待ってよ!入江くんの相棒っていったら正真正銘、あたしでしょうが!」
真里奈と幹の言い争いに琴子が鼻息荒く加わる。
「何を言ってるの!琴子なんてあれよ、あれ。目立たない鑑識のあの人…。」
「米沢さんを馬鹿にするなあ!!!」
叫んだのは啓太だった。
「あの職人肌の米沢さんを馬鹿にするなよ!!」
「やだ、啓太。アンタってああいうのが好みなの?」
「お前らなんて三人まとめて、トリオTHE捜一で充分だろ。」

「やあよお!!あんなおっさんトリオにしないで!!」
「入江くんの相棒はあたしだってばあ!!」
ギャーギャーと騒ぎ続ける看護師たちを「やれやれ」と呆れて見ているのは直樹。



「あ、あの…皆さん、そろそろ本題に入っていいやろか?」
すっかり看護師たちの迫力に押されてしまった金之助はがオドオドと話しかけた。
「本題?何だっけ?」
琴子がキョトンとなった。
「え?相棒のキャラクターについての話し合いじゃなかったの?」
幹もキョトンとなっている。
「違う!!あれや、あれ!!」
金之助が指差した方向を全員一斉に見た。そこでは本物の鑑識が現場検証を行っているところだった。



「ああ、そっか。」
琴子がポンと手を叩いた。
「そうだったわね。」
幹と真里奈、啓太も「ああ」と頷く。
「西垣先生が襲われたんだった!!」



斗南大医学部付属病院で起きた事件、それはこの病院で働く外科医西垣が何者かに襲撃されたことだったのだが…皆それをすっかり忘れていたのである。


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