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2012.03.07 (Wed)

大蛇森の返事

あちらを待っていて下さる皆様、すみません。
ない頭を頑張ってフル回転させて書いているのですが、ヘビーな内容なので結構時間がかかって…。
申し訳ありません、もう少々お待ち下さい!





【More】



『三月三日
今日は雛祭りということで、一応こんなもんを買ってみた。
こんな駄犬に勿体ないと思うが、まあこいつも一応メスだし。』

と、こんな感じで僕のブログ『駄犬日記』は現在も続いている。
こんな駄犬のどこがおもしろいのか、いつの間にか一日のアクセス数が一万を超えた。

『やーん、チンチクリンちゃんがおめかししてますね!』
『お雛様飾ったんですね!ブレイン博士さん、優しい!』

…ふん、こんな駄犬の記録にコメントをするなんてどいつもこいつも暇人ばっかだ。
ああ、面白くない。

そうだ、この日はこいつのためにわざわざ雛人形を買ったんだった。
で、ちょっと服も着せてみた。
ああ、なんて僕は素晴らしい飼い主なんだろう。
で、一応写真なんて撮ってブログにUPしている間に…この駄犬、雛人形に目もくれず犬用のひなあられにがっついてやがった!!

ああ、本当に花より団子な所は人間のチンチクリンそっくりだよ!!
いつまで経っても成長しないやつだ!!

それに比べてこの僕を見てみろ。
お前の写真をUPするために画像処理を完璧にマスターしてしまったじゃないか!
まあ天才脳神経外科医のはしくれとして、そこそこ画像は使いこなしていたけどね。
まったくこれ以上進化したら僕はどうなってしまうんだろうか。
全人類が僕に追いつかなくなってしまうのではないだろうか。

さて、この写真を…ああ、そうだよ。
この駄犬チンチクリンのために僕のパソコンにフォルダまで作ってしまったんだった!!
まったく、フォルダは『直樹LOVE』しかなかったのに。
しかもこの『直樹LOVE』フォルダと『駄犬』フォルダを並べておかないと…。

「ガウ、ガウ、ガウ!!!」

こうやって駄犬が吠えまくる。
「これ、近所迷惑だからやめなさい!」
「ガウ、ガウ、ガウ!!」
仕方ない奴だ。僕はしぶしぶ、二つのフォルダを並べた。

「フンッ!」
満足したのかチンチクリンはまたひなあられの方へ…と、あれ?
こいつ、何を見てるんだ?

チンチクリンはじっとカメラを見ている。
僕の愛用している一眼レフだ。

「…バウッ!」
チンチクリンが顎を動かしカメラを示す。
「何だ?お前の不細工な写真ならもうさんざん撮ったぞ?」
「バウッ!」
不細工に御不満なのか。んなこといってもお前も人間チンチクリンと同様、顔は平凡なんだから仕方ないだろ。

「バウッバウッ!!」
「まさか…お前…。」

このカメラの中に、昨日隠し撮りした入江先生の新しい写真が入っていることに気付いているのか!?

「ワウ、ワウ。」
「そうだ」というように頷くチンチクリン。

僕は隠し撮りした入江先生の写真をA4サイズに拡大し印刷した。ちなみに最初に印刷したものは手術終了後、汗で濡れた前髪を後ろへかきあげている、かなりレアなものさ。

「ワン、ワン、ワン!」
チンチクリンの前に印刷ホヤホヤの写真を置くと、尻尾をちぎれんばかりに振って喜びやがる…。



**********

「あ、更新されてる!!」
パソコンの前で琴子がはしゃいだ声を出している。
最近の琴子はとあるブログに夢中になっている。

「きゃー、雛祭りだ!可愛いなあ!」
キャッキャッとはしゃいでいる琴子の後ろから、俺もパソコンを覗きこんだ。

「あ、入江くん。見て見て!チンチクリンちゃんがおひな祭りしてるの!」
琴子がどんなブログに夢中になっているかよく知らなかったが、そこには犬の写真がアップされていた。
「何だ、これ?」
タイトル…『駄犬日記』。なんていうセンスのないタイトルだか。

「この子の飼い主さんがね、こうやって写真とか時々動画なんかも含めて日記を書いているの。すごく愛されているんだよ、このワンちゃん!」
…愛犬家が駄犬日記なんてタイトル、つけるか?

「ほら、見て!この動画がすごいのよ!」
琴子がクリックすると、動画が再生される。
そこには器用に家具を使ってジャンプして、『奪還』という文字が書かれた紙を破る犬の様子が映し出されていた。

「すごいよねえ。この子、頭いいわあ。」

この犬、どっかで見たような…?

「駄犬なんて言ってるけど、絶対謙遜しているのよね。」
「お前よりは賢いな。」
「何よ、それ!」
琴子は文句を言いつつも、画面から目を動かさない。

「でもね、このワンちゃんだけじゃないのよ、人気の秘密は!」
「他に何かあるってわけ?」
「このブログを書いている人、ええと…ブレイン博士っていうんだけどね。この人のコメントの返事がすごく面白いわけ!」

ブレイン博士?何だ、そのふざけたハンドルネームは?
ブレイン…脳…まさか?

「ほら、見て!」
今度は琴子はコメント欄を画面に出した。

『チンチクリンちゃんの愛らしさに毎日癒されています。これからもどんどん、チンチクリンちゃんの画像をUPして下さいね!』
『はん!君はどんだけ飢えているんだね?こんな駄犬に癒されるなんて!他に癒しを見つけた方が身のためだぞ!』

「…この返事が人気なのか?」
「そう!この嫌味な感じがくせになるって、もう大人気!!」
「物好きがいるもんだな。」
「そう?面白いよ?」

お前も結構なMだもんな、琴子。

「このコメントの返事が面白くて、最近は人生相談もやってたりするんだよね。」
「人生相談!?」
また琴子が新しいコメント欄を画面に出す。

『ブレイン博士さん、こんばんは。男と女の性別の差というものはそんなに重要なのでしょうか?』

こりゃまたヘビーな相談だな…。
俺は先を読む。

『…間違えて男に生まれてしまった女がこんなに苦労する世の中って、おかしくありませんか!!こういっちゃなんですけれど、私はそんじょそこらの女より余程女らしいと思うんです!!(投稿者:キョーキ)』

投稿者キョーキ…きょーき…ききょー…桔梗…お前か。
こんなことをあの人に主張してどうするんだ、桔梗。

『男だろうが女だろうが生まれてしまったもんはしょうがないだろう。しかし愛は自由だ。性別によって愛が阻まれることは絶対にない!君も努力を続けたまえ。そうすれば僕のように完璧な人間になれるだろう。(管理者:ブレイン博士)』

…間違いない、このブログを書いているのは…大蛇森先生だ!!

「ね、深い回答だと思わない?」
琴子が俺を見る。
「そうか?」
「そうよ。もうズバッと言ってくれるのよ。ほら、歯に杵つかないっていうの?」
「歯に衣きせないだろ、それを言うなら。」
「そう、それ、それ。」

ていうか、琴子。
この犬、お前も会ったことあるだろ?まあ犬は似たような顔が多いからこいつの頭で分からないのも無理はない。
だけど、この回答の口調!!
これで大蛇森先生って分かるだろうが!
間違えて男に生まれてしまった女ってところで、投稿しているのが桔梗だって気付けよ!



「でね、私も今、ちょっと相談してみたんだよね。」
「相談!?」
お前が大蛇森先生に!?
「そう。ほら、見て。」
琴子は自分が書いたコメントを俺に見せた。

『ブイヨン博士さん、こんばんは。困った人のことで相談させて下さい。』

「ブレインだろうが、ブレイン!!」
「あ、そっか?でもブレインもブイヨンも似たようなもんじゃない。」
「似てねえよ!」
ったく、せめて名前くらいは正しく書いてやれよ。

『実は私の夫にしつこく言い寄る人間がいて困っています。私という美しい妻がいるのにその人は夫の周りをコバエのようにまとわりついていて、うんざりします。何とかならないでしょうか?』

「美しい妻?どこに?」
「ここ、ここ!」
調子いい馬鹿に俺はデコピンを一発お見舞いした。

**********

うーん、この入江先生も美しい…。
このちょっとお肌が見えている部分がまた、たまらないんだなあ。
僕が今パソコンで見ているのは、手術着を脱ぎかけている入江先生の写真だ。
終わった後だけに表情もリラックスしていて、本当にいい写真だ。

ピクッピクッピクッ。

ん?僕のモミアゲレーダーが反応した。
おいおい、ここは僕の家だぞ?
ここにチンチクリンが潜んでいるわけないだろう?
いや、待てよ?
あいつはゴキブリのような奴だから、もしかしたらゴミ箱に…。

僕はキッチンの生ごみ入れを確認する。
…いるわけないよな。
というかあいつ、このスタイリッシュなゴミ箱に入る体型じゃないし。

まったくモミアゲレーダーの誤作動か。
正確さが売りだったのに…僕は相変わらず入江先生の写真をうっとりみている駄犬を見た。
お前がレーダーを狂わせる何かを体内に持っているんじゃないのか?

さて、ちょっとブログを見て…あ、コメントが来ている。
夫の周りをコバエのように…?まったくくだらないコメントばかりだな、最近!
しかも僕のことをブイヨン博士とか呼びやがって!
どこの馬鹿だ、こいつは!!
ええと投稿者…クレオパトラ!?



**********

「お前、クレオパトラって何だよ。」
琴子が付けたハンドルネームに俺は心底呆れていた。
「だってクレオパトラって絶世の美女だったんでしょ?私にぴったりじゃない。」
ああ、このポジティブシンキング、すげえ。

「あ、返事が来た!早いなあ!」
どうやらコメントに返事がついたらしい。
俺は琴子と一緒に画面を覗きこんだ。


『コバエにたかられるってことは、君の夫は生ゴミなのだろう。どっちもどっちだね。そんな汚い環境にいる君に哀れさを感じるよ、僕は。』

うわ…俺、生ゴミにされてるし。

「うーん、なかなかシビアな返事だわね。」
いや、お前さ。夫が生ゴミ扱いされてるんだぞ。そんな感心してないで怒れよ!

「…なあ。」
「なあに?」
「もしさ、この答えを大蛇森先生が言ったとしたら、お前どうする?」
「はあ!?」
琴子が目を剥いた。
「何でそこに大蛇森が!?」
「ま、いいから。答えろ。」
「“はあ!?どの口が言ってるんですかあ!そんなふざけたことをいう口はその鬱陶しいモミアゲをビューンと伸ばして、それで結んじゃった方が世のため人のためですよ!!!”って言い返す。」
ご丁寧に琴子は自分の耳の前で手を動かしながら答えた。

「お前、大蛇森先生を前にするとボキャブラリーが豊富になるよな。」
「不思議なことに、次から次へと言葉が浮かぶのよね。」
そして琴子は眉を寄せる。
「もう、こんな時に大蛇森のことなんで思い出させないでよ!」
「いや、だってこのブログ、大蛇森先生が書いてるんだろ?」
とうとう俺は言った。

「これを?大蛇森が?」
琴子はキョトンとなった。そしてパソコンと俺の顔を何度も見比べる。
そして、
「いやだあ、入江くんったら!!」
と、大笑いして俺の背中をバシバシと叩いた。
「ちょっと、大蛇森がこんな愛犬家なわけないじゃない!」
「前に会っただろうが。」
「会ったけど、でもこれは違うって!!」
琴子は笑い続けている。
「あの大蛇森が、犬のために豪華おせちやひな人形を用意すると思う?」
「だけどさ。」
「もう、入江くんたら!分かった、拗ねちゃったのね!」
突然琴子は俺に抱きついてきた。
「ごめんね、もうパソコンはおしまいにする。」
「そうじゃなくて。」
「入江くん、大好き。」
そして琴子は俺にキスをせがむ唇をする。

ま、いっか。知らぬが仏って言うし。
お互い知らない方が幸せだろう。

俺はそう思って琴子の腰に手を回し、キスをしてやった。










ペンタゴンも調査したくなる、モミアゲレーダーの正確さ。
とうとうパソコンを通じてまで琴子ちゃんの存在をキャッチできるようになりました☆



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