日々草子 恋に落ちた執事 上

恋に落ちた執事 上

コメントやメールのお返事もそのままで申し訳ありません。
もう少ししたら、きちんとお返事できると思いますのでもうしばらくお待ちください。
本当にすみません。

書いてみたい話を好きなようにちょっと掲載してみようかと思いまして、こんな状態になってしまっております。
申し訳ございません。
タイトルの「執事」という言葉から、あの執事さんを想像された方もいらっしゃるかもしれませんがすみません、ちょっとダメな方の執事さんです。




イーリエ家の(自称)有能な執事、シップが恋をしたらしい。

「まあ、それは素晴らしいことだわ!」
モッティから話を聞いたコトリーナは手を叩いて喜んだ。
「それで?それでお相手は?」
ノーリー夫人が目をキラキラと輝かせてやって来る。
「お花を売っているお嬢さんなんです。」
「まあ、それなら私の知っている人かしら?」
ナオキヴィッチと出会う前は花売り娘をしていたコトリーナの目がますます輝いた。
「お名前は?」
「ええと確か…マリーナさん。」
モッティは指を唇にあてて名前を思い出した。
「マリーナ!?」
コトリーナの目が大きく見開かれた。
「まあ、コトリーナちゃん、知ってるの?」
「ええ…まあ…。」
コトリーナはなぜか言葉を濁した。

その恋に落ちた執事,シップは何をしているかというと。
「マリーナさんは僕を好き…嫌い…好き…嫌い…。」
とコトリーナが挿した花を一輪、花瓶から取り出して花占いをしている。
「シップさんの恋は上手くいきそうなのかしら?」
そんなシップを見ながらノーリー夫人が呟く。どうもシップの表情は浮かない。
「それが、相手にもされていないのですわ。」
モッティが気の毒そうに答えた。
「まあ…。」
「やっぱり…。」
ノーリー夫人の声にコトリーナの声がかぶさった。



「玉の輿志望だ?」
寝室でコトリーナからシップの話を聞いたナオキヴィッチは「くだらねえ」と漏らした。
「何だ、それ?」
「だからね、マリーナって子は昔から“王子様のお嫁さんになる”ってのが口癖なのよ!」
機嫌のいい声を出しているジュゲムをあやしながら、コトリーナが語気を強めた。
「いくつだ、そいつは。」
「あら、女の子だったら誰もが見る夢よ?私だって白馬に乗った王子様がいつか迎えに来てくれるって思ってたもの。そしたらちゃんと叶ったわ。」
「俺は王子じゃねえけどな。」
「私にとっては世界にたった一人の王子様よ。」
コトリーナがうっとりとナオキヴィッチを見つめた。

「それでね、ここは私が動かないといけないと思ったわけよ!」
ベッドに並んで入った後、コトリーナが鼻息荒くナオキヴィッチに告げた。
「何でそう思う!?」
どこをどう理解したらそうなるのかと、相変わらずナオキヴィッチにはコトリーナの思考回路が分からない。
「だってマリーナとは知り合いだし、シップさんは我が家の大事な一員よ?ここは私の出番だと思わない?」
「そうかあ?」
どう考えてもそう思えないナオキヴィッチは、更に顔をしかめた。
「そうよ。恋の勝利者の私が力になってあげれば、きっとシップさんの恋は実るわ!シップさんは真面目な人だもの。絶対マリーナとお似合い!」
「ふうん。」
ベッドに入って、どうして自分以外の男の話を延々と聞かされなければいけないのだろうと、ナオキヴィッチは面白くない。
「まずはシップさんのいい所をマリーナに教えてあげて、そして…ねえ、先生。先生にもいい考えはなくて?」
コトリーナは不機嫌な夫の様子に全く気付かず、意見を求めて来た。
「他人が入るとうまくいくものも余計こじれるという考えだけどな、俺は。」
「もう、先生は恋ってものに疎いのね!」
プンプンと怒るコトリーナ。
「シップさんはとっても奥手だもの。他人が入らないと駄目なパターンなのよ。」
「あ、そ。」
「シップさんはメガネを取ったら結構きれいな顔しているし…。」
ついこの間、スープがかかったといってメガネを外した時のシップの顔をコトリーナは思い出し、なぜか頬をポッと赤く染めた。
それがナオキヴィッチにはますます面白くない。

「ねえ、そう思わな…。」
「ストップ。」
ナオキヴィッチは話しかけたコトリーナの唇に長い指を当てた。
「…俺はいつまで他の男の話を聞かなければいけないわけ?」
「先生…。」
「ベッドの中で俺以外の男の話をしていいなんて、俺は教えたっけ?」
「…教えてない。」
コトリーナがそう答えるのが分かっていたナオキヴィッチは自信たっぷりの笑顔を浮かべた。それを見てコトリーナは顔を真っ赤にして俯いてしまった。それはこの後に何が待っているかが分かったからである。
「それじゃあ、今夜は一晩かけて、教えたことを復習してもらおうかな?」
ナオキヴィッチの言葉に、コトリーナは自分の予想が当たっていることを知る。
仲睦まじい両親がベッドで重なり合う傍で、二人の愛児ジュゲムはスヤスヤと気持ちよく眠っていた。



「…あなたも行くんですか?」
「勿論!」
結局コトリーナはナオキヴィッチの忠告を聞き入れず、マリーナと話をしに行くことにしたのだった。そしてその日の朝、なぜかウェスト男爵もやってきたのである。
「こんな面白いイベント…じゃない、一大事に僕が行かなければどうする!」
「行かない方がいいのに。」
「何を言ってるんだい、ナオキヴィッチ!」
男爵はナオキヴィッチに詰め寄った。
「僕は恋の達人だよ?僕がいけばどんな恋だって思いのままさ!」
「…じゃあなんで今も独身なんでしょうかね?」
ナオキヴィッチの呟きを見事に無視した男爵は、コトリーナに向き直った。
「大丈夫だよ、コトリーナ。僕がついているからね。君と僕で愛の天使となって…。」
どさくさにまぎれてギュッと小さなコトリーナの手を握る男爵。その手首(手に下ろすとコトリーナの手にも被害が及んでしまうから)にすかさずナオキヴィッチの怒りのステッキが振り落とされた。

結局、コトリーナ、シップ、男爵、そしてナオキヴィッチの命によりモッティも一緒にマリーナの元へと出かけて行ったのである。

「やれやれ、これでシップの失恋は確定的だな。」
あのメンバーでうまくいったらそれはもう奇跡だと、ナオキヴィッチはジュゲムを抱きながら溜息をついたのだった。



マリーナは今日は仕事が休みだった。仲間からマリーナの家を聞き出し、一行は向う。
「あれ?ここって…。」
到着した場所を見て、コトリーナが驚いた。それはコトリーナがかつて住んでいたアパートだったのである。しかも部屋まで同じ部屋だった。
とりあえず、コトリーナが昔なじみを訪ねるといった風を装うことにして、モッティだけを連れてマリーナの部屋のドアをノックした。

「コトリーナじゃないの!」
「マリーナ、久しぶり!」
昔は一緒に市場へ花を仕入れに行った二人は懐かしさで顔を綻ばせた。
「まさかこの部屋に住んでいるなんて!」
中の家具もコトリーナが暮らしていた当時のままだった。
「ここ、すごい倍率だったのよ。」
マリーナが誇らしげに言う。
「倍率?」
「そうよ、この部屋はね“玉の輿ルーム”って別名がついているのよ!」
「た、玉の輿?」
「ええ、だってコトリーナ、あんたが見事に玉の輿に乗ったでしょうが。村から出て来た花売り娘が国一番の大貴族である公爵夫人になったんだもの!」
「それで、そんなことに!?」
自分が玉の輿に乗ったという実感のないコトリーナは目をむいた。
「そうよ。この部屋に住んだら玉の輿に乗れるって噂が広まってね。あんたが出て行った後にそりゃあもう、すごい争奪戦が繰り広げられて…まあ、あたしが見事に勝って晴れてこの部屋の住人になったってわけ。次の玉の輿はもう決まったものよね。」
誇らしげなマリーナに、コトリーナとモッティは顔を見合わせた。少しは現実を見るようになったかと期待していたが、むしろどんどん玉の輿願望が加速している。

「やっぱり公爵夫人は違うわよねえ。お付きを従えているんですもの。」
モッティを見ながらマリーナは羨ましげに溜息をついた。
三人は場所を変えて、近所のティールームにいた。
「いや、そういうわけでは。」
自分一人じゃ心細いし、言葉に詰まったらフォローしてもらう目的でモッティに付き添ってもらっただけである。
「でもまあ、あたしも少しは現実を見るようになったわよ。」
「え?そうなの?」
玉の輿の輿の色が金から銀に変化したのかと、コトリーナとモッティは淡い期待を抱いた。
「そうよ、白馬の王子様なんてそうなかなか見つからないって分かってきたの。」
「そうなの、マリーナ?」
コトリーナの目に期待という文字が浮かぶ。
「ええ、もうね…愛人でもいいかなって。」
「はあ!?」
マリーナの予想外の言葉に、コトリーナの口から素っ頓狂な声が飛び出した。
「お金持ちになれれば、正妻なんて期待しないわ。愛人にしてもらってたっぷりとお手当いただければ十分よ。」
マリーナはそう言うと紅茶をすする。
「駄目よ、愛人なんて!」
コトリーナが叫んだ。
「ちゃんと愛する人と幸せな結婚をしないと!」
「だって見つからないんですもの。」
「お金が全てじゃないでしょ、マリーナ!」
「全てよ!」
マリーナのきっぱりとした答えに、コトリーナは怯んだ。

「まあまあ。確かにお金はあったに越したことはありませんわ。」
見かねてとうとうモッティが口を挟んだ。
「でもね、マリーナさん。真の愛情が何と言っても一番必要じゃありませんこと?」
妖艶な美女に微笑まれ、さすがにマリーナも言葉が出ない。
「例えば…一途な執事さんとか。」
かなり強引な話の持って行き方だとは自覚しつつ、モッティは何とか本題へと入る。
「そうよ、そう。その…仕事ができる人ってとても素敵よ!」
コトリーナがモッティに合わせた。
「仕事ができる執事?あ、もしかして。」
マリーナはそれが誰だか分かったらしい。
「そういえば、シップさんって公爵家の執事だって言ってたわ。ということは?」
「うちの大事な執事さんなの。」
コトリーナが頷いた。
「はは―ん、それでコトリーナが来たのね。」
マリーナはそういうことかと、腕を組んだ。
「何よ、あの人、コトリーナに泣きついたってわけ?」
「違うわ。私が勝手に来たの。」
コトリーナははっきりと言った。
「だってシップさんはとてもいい人だし、マリーナはお友達だし。二人に幸せになってほしくて。」
それは嘘ではない。
「ふうん…。」
マリーナもコトリーナの性格を知っているだけに、それは本当だろうと思った。

「でもあの人、お金持ちじゃないもの。」
「そんな!それだけで!」
「そうよ。なあに?それともお金持ちって言えるくらいお宅じゃシップさんに沢山のお給料を払っているの?」
マリーナがコトリーナを追及する。
「お給料って…。」
コトリーナは考え込んだ。シップやモッティ、ノーリー夫人へのお給料はナオキヴィッチが計算している。コトリーナはノータッチだったので金額が分からない。
「どうなのよ?」
「それは…。」
コトリーナは思い出す。そういえばシップを雇った時にナオキヴィッチが言っていたことがあった。
「…執事さんの平均給料の二割から三割引きでいいからと頼まれたとか。」
ついそれを正直にコトリーナは洩らしてしまった。それを聞いて「あちゃー」とモッティは額を手で押さえた。

「はあ!?何、それ?それが仕事のできる執事への態度!?」
シップの評判を上げるどころか下げてしまったコトリーナは必死になる。
「仕事はできるわ!ただ、その…。」
「その?何なのよ?」
「…。」
「二番」と言ったら常軌を逸脱してしまう性格が災いしているから、なかなか就職口が決まらずにナオキヴィッチが貧乏くじを引かされたとは、コトリーナは口が裂けても言えない。

「もしかして。」
コトリーナの服装を見つめたマリーナが口を開いた。
「…名門の公爵様って結構生活苦しいの?」
「え?」
「あんた、普段からそういう格好なの?」
コトリーナの服装はとても貴族の奥方には見えない、シンプルなドレスだった。マリーナが会ったことのある貴族の女性は皆、派手な帽子をかぶり派手なドレスを着ていた。コトリーナは全然違っている。
「そうよ。家の中ではエプロンもつけているわ。」
「エプロン?何、もしかしてあんた、台所仕事もしているわけ?」
「ええ、そうよ。お洗濯もするしお掃除もするわ。応接間の花瓶を磨くのが私の日課なの。」
今度はコトリーナが胸を張る番だった。

「嘘でしょう…。」
そしてマリーナはショックを受けていた。
「そういうことをしたくないから、玉の輿に乗りたいのに…。」
大金持ちに見初められ、大勢の使用人にかしずかれた生活を送る。それがマリーナの夢である。
それを実現したと思っていたコトリーナは、公爵夫人になった今も家事をやっていることがマリーナには衝撃的だった。
「貴族ってそんなにお金持ちじゃないのね…。」
「お金のことはよく分からないけれど…。」
コトリーナはマリーナが何にショックを受けているのか、今一つ分かっていない。

「今住んでいる家って、広いんじゃないの?」
マリーナは顔を上げた。
「タウンハウスはそうでもないけれど…カントリーハウスは結構大きいわ。」
これまたコトリーナが正直に答えてしまう。
「どれくらい?」
「私も迷ってしまうから、一部しか歩いたことがないの。」
「使用人は?」
「たくさんいるわよ。」
「なあんだ、やっぱりお金持ちなんじゃないの!」
コトリーナの答えに、マリーナは元気を取り戻した。

「やっぱりお金よね!お金、お金が一番!」
「だから…。」
「お金さえ持っていれば年齢も未婚、既婚も問わないわ!」
「そんなあ!」
もうどうやっても友人の考えは変わらないのではないかと、コトリーナが思った時だった。

「ん?」
マリーナの後方に目を向けたコトリーナは、思わず声を上げそうになった。




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水玉

Author:水玉
『イタズラなkiss』のほかには『ゴルゴ13』が好きです☆
多数あるイタキスの二次小説の中で邪魔することなく、ひっそりとマイペースで我が道をゆきつつ生息しております。
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二次創作については、いわゆる原作の隙間をぬった作品もありますが、主人公以外のキャラクターをメインとしたものや オリジナルキャラクターが出てくるものもございます。

そして、原作と違った時代(平安や明治やその他の時代を舞台にしております)、異なる設定(主人公を医者と看護師じゃない職業にしております)で書いてあるものが多いですが、原作を冒涜しているつもりは全くございません。

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