日々草子 空飛ぶ後輩

空飛ぶ後輩




ハア、ハア、ハア…。

もう、何で僕がこんな思いをしないといけないんだ!
エレベーター生活に慣れてしまい、階段を一気に屋上まで駆け上がると息が切れる。
…無事に生還したら、絶対スポーツクラブに入会しよう!

そんなことを考えながら、階段を上がり続ける僕と謎の後輩。

え?
何で逃げているんだって?
また二股かけていたんだろうって?

冗談じゃないよ。
また今日もこの後輩がらみで追いかけられているんだ!

「入江、鴨狩くん!鴨狩くんはどうしたんだ!」
階段を上がりながら僕は尋ねる。
こんな時こそ、入江専門の救援部隊、鴨狩くんがいるんじゃないのか?
「あいつは今日休みです。」
絶体絶命だっていうのに、こいつは今日も顔色一つ変えない。
ていうか、休みってどういうことだよ!

いつでも助けに来てもらえるよう、鴨狩くんの両親が年に何度も旅行に行けるくらいの報酬を支払っているんじゃないのかよっ!

「たまに休みをやらないと、労働基準法とかに引っ掛かりそうなんで。」
…非合法の救援部隊に労働基準法なんて関係ねえだろうが!
何でそんな細かい所に真面目なんだ、お前は!

「じゃあこの状況をどうやって切り抜けるんだよ!」
「あなたに関係ないでしょう。追われているのは俺だけなんだから。」
「ここまで来て僕が残ったら、何をされるかわからないじゃないか!」
「映画の見過ぎですよ、西垣先生。」
お前に言われたくねえ!
この状況がもはや現実とは思えないんだよ!



「いたぞ!」
ああ、追いつかれた!
今日僕たちを追いかけているのは英語圏の人間だ。
だから何を言っているのか、うっすらと分かる。

先を走っていた入江が屋上へのドアを開け、一直線に走る。
ドアが開いたと同時に、轟音が耳に飛び込んできた。

「何だ!?」
入江の後を追いかけて屋上に上がった僕は空を見た。
そこにはヘリコプターがホバリングしていた。
な、何でヘリが!?

そして、ヘリから梯子がスルスルと下りて来た。

ヘリの操縦席にいるのは…入江の親父さん!!

ということは、このヘリはパンダイの社用ヘリ!
いいのか、社長がこんな所にいて!会社は、社員はどうしているんだろう?
これも親父さんのサイドビジネス…いや!
きっと息子の仕事をサポートすること(特殊メスの製造、息子へのコンタクトを取る手伝い、息子の救援活動…まだ他にもある気がする)が親父さんのメインビジネスであり、パンダイ経営がサイドビジネスなんだ。うん、きっとそうだ!

と、親父さんについて考えている間に、僕の皺ひとつない白衣が追手に掴まれてしまった。

「直樹!」
親父さんが入江の名前を呼ぶと同時に、ヘリから何かが落ちて来た。
入江がまた見事にそれをキャッチした。

それは…銃!!

「入江、何だそれは!」
「M16アーマライトカスタムです。」
違う、僕が尋ねたのは銃の種類なんかじゃないよ!

そうこうするうちに、入江はそのM何とかって銃を僕らに向ける。

「待て入江!それはやめろ!」
そうだ、入江!
お前の気持ちは嬉しい。
銃なんてぶっ放したら、お前が犯罪者になってしまうぞ!
先輩の僕を助けてくれるその気持ちだけで十分だよ。

しかし、入江は銃を構えた状態のままだ。
ああ入江…僕のために!この恩は忘れないよ!
刑務所まで僕は月一回面会に行くからな。…ただし女の子とデートの約束が入らなかったらの話だけどね。

ビシュッ!!

…銃をぶっ放した割には、変な音だな。

「冷てえっ!!」
英語でそんな言葉が叫ばれた。
冷たい?何で?
僕はそっと白衣を触った。
…濡れてる!

「早く、今の内に!」
入江の声で僕は奴らから逃げる。



「入江、それは一体…。」
「水鉄砲ですよ、これ。」
入江はそのM何とかを掲げた。確かにその先から水が滴り落ちている。

「実弾なんて入っているわけないでしょう。そんなことやったら俺が捕まるし。何で俺が西垣先生のために危ない橋を渡らないといけないんです?」
「…そうだね。」
お前のことを少しでも信じた僕がバカだったよ…。

「直樹、今の内に早く!」
ヘリから親父さんが叫ぶ。
入江はそのM何とかを持ったまま、白衣のポケットに手を突っ込んだ。
中から出したのは、レイバンのサングラス!

それを素早くかけると、入江はヘリから垂らされている梯子につかまる。

その様子を見ていた僕の脳裏には、『西部警察』のメインテーマが高らかに流れ始めた。
お前は大門か!!

「大門の銃はレミントンM31です。俺のはM16アーマライトカスタム。」
入江はまたエスパーよろしく、僕の考えを見破る。
だから種類の説明はいいよ!言われたって僕には区別つかないし!

と、そんなことを突っ込んでいる暇はない。
僕も急いで後を追わないと。
入江の後に僕は梯子につかまる。

ところが、途中でなんとヘリが動き始めた。

「ちょ、ちょっと!僕たちヘリに乗り込んでないじゃん!」
「そんな暇はありませんよ、ほら。」
入江が顎で指した先には、追手がギャーギャーわめいている。

見る見るうちに、僕の足元から屋上が遠ざかっていく。

え?え?
ちょ、ちょっとこのまま、どこまで飛んで行くんだ!?

何でこの僕が、こんな目に遭わないといけないんだよっ!!

「どうせ今日も聞くんでしょう?」
上からサングラス姿の入江が僕を見下ろす。
「何を?」
「今日は誰から追われていたんだって。聞かれる前に答えておきます。今日はMI6です。」
MI6…?
MIって…ミッションインポッシブルってシリーズ6まであったっけ?
ていうか、あの中にトム・クルーズがいたか?
それにしても、やたらとMがつく単語ばかりお前は口にしやがるな。
区別がつかないよ!

「…映画じゃなくて。」
入江はこんな状況でも溜息をつく。
「イギリス情報局秘密情報部のことです。少しは見聞を広げる努力をして下さい。」
「だから、何でそんな物騒な所からいつも追いかけられているんだよ!」
「それはシークレット。」
何がシークレットだ!
どうしてこんな空中でお前に叱られないといけないんだよ!

と、危ない!怒った拍子に手を滑らせそうになった。
僕は落ちないよう、しっかりと梯子につかまる。
汗で滑るよ~怖いよ~。

入江はというと、M何とかの銃を手に持ち、悠々たる感じで梯子につかまっている。

ああ…もう僕、普通の医者に戻りたい!!

怖いから絶対に下を見ないようにして、僕は必死で梯子につかまりながら切に願っていた…。







ゴルゴ13の豆知識
使用武器:M16アーマライトカスタム
関連記事
プロフィール

水玉

Author:水玉
『イタズラなkiss』のほかには『ゴルゴ13』が好きです☆
多数あるイタキスの二次小説の中で邪魔することなく、ひっそりとマイペースで我が道をゆきつつ生息しております。
そっと見守っていただけたら嬉しいです。

※当ブログに掲載されている文章及びイラストの無断転載・使用はご遠慮下さい。

現在の御訪問者
現在の閲覧者数:
御訪問ありがとうございます
このブログについてのお願い
当ブログは、『イタズラなkiss』の二次創作をメインとしておりますが、時折管理人の趣味や日々の出来事についての記事も書いております。

原作者様や関係各位とは一切関係ありません。

二次創作については、いわゆる原作の隙間をぬった作品もありますが、主人公以外のキャラクターをメインとしたものや オリジナルキャラクターが出てくるものもございます。

そして、原作と違った時代(平安や明治やその他の時代を舞台にしております)、異なる設定(主人公を医者と看護師じゃない職業にしております)で書いてあるものが多いですが、原作を冒涜しているつもりは全くございません。

二次創作が苦手という方及び原作のイメージと合わないと思われる方はどうぞお引き取り下さいますようお願いいたします。

コメント及びメールなどでの苦情及び批判は公開、非公開を問わず、私へ告げることはご遠慮いただけますよう、お願い申し上げます。

このブログ及び掲載されている話が嫌いだと思われたら、黙ってあなた様の中から、このサイトの存在を消去していただけますよう、お願い申し上げます。

カテゴリー+月別アーカイブ
 
最新コメント
最新記事
カボチャの世界
Private
カレンダー
07 | 2017/08 | 09
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -
リンク