日々草子 タフな後輩
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タフな後輩






今日も僕は入江と行動を共にしている。
こいつの謎を明らかにするまでは、どこまでも追いかけて行くつもりだ。

「…余計なおしゃべりはやめて下さいよ。」
「分かってる、分かってるって。」
もう心配症なんだなあ、入江って。

そして僕たちはカンファレンスルームの前に立った。
今日はどんな患者が僕たちを待っているんだろう?
何かもう、最近は楽しみにすらなってきたよ。

入江はドアをノックした。

「…新しいメスには。」
え?
え?
何?中から変な呪文が聞こえてきたけど?

「…血の匂いがしみついている。」
入江は平然と答えた。

これってもしかして合言葉!?
何だよ、もっとまともな合言葉を考えろよ!
「山」「川」とかさ。


するとドアがガチャッと開いた。

「お待ちしてました、入江先生。」
そこには笑顔で、看護師の小倉智子くんが立っていた。



「こちらです。」
中に入ると、小倉くんは黒い革ケースをテーブルの上に置いた。
僕はもう、それが何であるかが分かる。
入江はケースを手に取ると、ふたを開けた。

「…相変わらずいい出来だ。」
「お父様もかなりの出来だと自信満々でしたよ?」

また、パンダイ社長のサイドビジネスかよ!
でも何で、今回はパンダイまで取りに行かないんだ?

「…親父は今日から出張なんですよ。」
入江が今日も面倒くさそうに、僕が知りたい理由を説明する。
態度は滅茶苦茶悪いけど、こいつ結構気が利くよな?

と、関係ないことに話題が移りそうになった。
ああ、そうか。
入江は昨夜まで泊り込んでいたもんな。
家で親父さんと顔を合わせる機会がなかったってことか。

でも、なんで小倉くんが?


「私はメスにさわれるってことで、このお役目に立候補したんです。」
これまた、エスパーのように僕の考えを読んじゃった小倉くん。
メスにさわれるって、そんなウットリとした顔を見せられてもさあ…。

「とっても幸せでした。このメスちゃんと一緒に行動を共にできて。」
メスちゃん…そんな可愛い呼び方をしなくても。
何でも小倉くんはわざわざ東京駅まで出向いて、入江の親父さんからメスを受け取ったらしい。

桔梗くんが情報屋(時々工作員)。
鴨狩くんが救援部隊(部隊っていっても一人だけだけど)。
そして小倉くんが…運び屋。

「小倉になら安心して頼めるからな。」
入江はそう言いながら、またいつものように懐から封筒を出した。

「じゃ、これ。」
「ありがとうございます。メスちゃんと一緒にいられてお金までいただけて!」
小倉くんは金額の確認すらせずに、白衣のポケットに封筒を突っ込んだ。
…結構ワイルドな性格なんだね、君。




「あ、入江くん!」
人気のない廊下を歩いていたら、琴子ちゃんが前からパタパタ走って来た。
「走るなよ。」
入江は冷たく琴子ちゃんを注意した。

もうお前は本当に冷たい奴だ。
愛妻にもっと優しくできないのかよ。


「ごめんね、ちょっと抜けるのに時間がかかって。」
抜ける?何だ?
「大丈夫だ。」
入江は傍のドアを片手で器用に開けた。
「入って。」
「はあい。」
二人は部屋の中に入った。

ガチャッ。

鍵がかかる音がした。

そこは仮眠室だった…。


そういや、入江は今日これから手術が入っていたっけ。
ああ、そうだ。だからわざわざ小倉くんにメスを運ばせたわけか。
となると、この部屋の中で入江と琴子ちゃんは――。




一時間後。
再び仮眠室の前を通りかかった時に、入江が中から出て来た。
言っておくが、一時間も中の様子をうかがっていたわけではない。僕だって一応医者だから仕事は山積みだ。

入江はやけにスッキリした顔をして、仮眠室に鍵をかけていた。
普通鍵なんてかけないけどね。
だって用事がある時に看護師とかが呼びに来るから。

こいつ、どこで鍵を手に入れたんだろう…なあんて野暮な詮索はやめておいた方が無難だろう。

「琴子ちゃんは戻ったんですかあ?」
ちょっとからかってやろう。
「いえ、中にいますよ。」
入江は鍵をブラブラと揺らしながら、平然と答える。
「中って、勤務がまだあるだろ?」
「だって腰が立たないんですから、しょうがないでしょう。」

…今、サラッとすごいことをお前は口にしたの、分かってるのか?

ここ、病院!!神聖な職場!!
そんな場所でお前は何をやってるんだあ!!

「前にも言ったでしょう?大事な仕事の前には女を抱く、これ常識。」
記憶力がない、もう脳は老化しているんだろうって、こいつはうるさい。
お前の非常識さに俺は驚いているんだよ!!
そんなことも気づかねえのか、この色魔!!


「まあ、師長には手を回してあるんで、このまま早退扱いってことにしてもらえるでしょう。」
この間から疑問なんだけどさあ。
師長にどういう手を回しているんだ?
それはやっぱり、沢山の諭吉さんとお友達って意味か?

「お前、たまには琴子ちゃん以外の子とどうこうしたいって気にならない?」
色魔に僕は疑問をぶつけた。
だって、さっきだって琴子ちゃん、お前にどうこうされるのを楽しみにしているかのようにやって来たんだもん。
あの可愛い笑顔…それが今は腰が立たない状態って可哀想過ぎるだろ。
ちょっとはその力をよそへ分散させることも考えないのかね、こいつは。

「琴子以外?」
フッと入江は小馬鹿にしたように笑った。

「二度、三度と味わえる女は、そうざらにいませんから。」

…つまり琴子ちゃんは二度、三度…もういいよ。


僕は話を変えることにした。

「手術って大変な手術だったっけ?」
「それほどでも。でもファミリーがうるさいから気は遣いそうですけどね。」
ファミリーがうるさい?
ファミリー?

「…橋田?」
ファミリーと聞いた僕の脳裏には、あの有名ドラマのテーマ曲が流れていた。

入江は「はあ」とかなり大げさに溜息をつき、額に手をやった。
「…本当に想像力の貧困な人ですね。」
そ、想像力が貧困って…!
だってファミリーって聞いたら、橋田ファミリーが浮かばないか?

「ファミリーといったら、マフィアに決まってるでしょう。」
「いつ決まったんだよ!」
マフィアに決まってるでしょうって、そんな物騒な単語を平然と口にするな!

僕の脳裏のBGMは渡鬼からゴッドファーザーの愛のテーマに変わった。

「イタリアのファミリーのドンの母親なんでね。まあ、ドンがうるさい、うるさい。」
だから、どうしてイタリアのマフィアが、日本の一大学病院まで手術に来るんだ!

「あっちはほら、家族の結びつきが濃厚でしょう?」
マフィアの結びつきの濃度なんて知るかよっ!


そして入江は、手術前の「一仕事」を終え、今日は何を突き通す威力があるか不明のメスを手に手術室へと向った。







ゴルゴ13の名言
「二度三度と味わえる女は、そうざらにはいない…。」

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『イタズラなkiss』のほかには『ゴルゴ13』が好きです☆
多数あるイタキスの二次小説の中で邪魔することなく、ひっそりとマイペースで我が道をゆきつつ生息しております。
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二次創作については、いわゆる原作の隙間をぬった作品もありますが、主人公以外のキャラクターをメインとしたものや オリジナルキャラクターが出てくるものもございます。

そして、原作と違った時代(平安や明治やその他の時代を舞台にしております)、異なる設定(主人公を医者と看護師じゃない職業にしております)で書いてあるものが多いですが、原作を冒涜しているつもりは全くございません。

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