日々草子 臆病な後輩 6

臆病な後輩 6











今、僕の目の前では一人の男性が所在なさげにしていた。

「あの…入江先生は本当にいらしてくださるんですよね?」
「ええ。」
僕は部屋の時計に目をやった。針がぴったりと12の文字に重なった。

「…用件を聞きましょう。」

突然聞こえたその声に、僕と男性は驚く。
そこには、入江直樹が壁にもたれて立っていた。

「いつの間に!!」
ドアが開いた気配などあっただろうか。
もしかしたらこいつ、窓から侵入した…いやいや、テーブルの下にずっと隠れていたのかも。

用件を聞きましょうかって、病院に来る用件なんて一つしかないじゃないか。
何だよ、こいつ。
いつも格好つけやがってさ。

「入江先生!!」
しかしその男性は入江の侵入経路などに興味はないのか、会えたことに感激していた。

「どうぞ、どうぞ!」
そして前の席を入江に勧める。

「いや、俺はここで結構です。」

そうそう、そうなんですよ~。
こいつはね、絶対に僕たちと並んで座ることなんてしないんですよ~。
僕はそう言いたい気持ちをぐっと堪えた。

「では、話を…。」
男性は入江のスタイルに納得したのか、口を開いた。

「あの、ええと、私はこちらに来るまでに各地の病院を転々としまして、それで○×大病院の△山先生とかにも…。」
「要点だけで結構です。」
入江は無情にも、その男性―患者の話を冷たい声で遮った。

おいおい。
確かに話は長くなりそうだけど、そんなに冷たくしなくたっていいじゃないか。
ただでさえ患者は不安になっているんだぞ?

「手術して下さい。」
「いいでしょう。」

早っ!!
何?このやりとり!
確かに要点はそれに尽きるけどさ。
でも、早っ!!


となると、また例のやり取りか。

ちなみに今回の手術にも僕は立ち会うことになっている。
執刀医は入江なんだけど、僕も後に引けなくなって。

だってさ、ここまで来たら入江の謎を全て解いてやりたくならない?
それが人間ってもんじゃない?

「たったひとつの真実見抜く、見た目はイケメン、頭脳は天才、その名は名ドクター西垣」ってね。
と、おっといけない。
これじゃ某アニメのパクリになっちゃう、ハハハ。



さて、この部屋に目を戻そう。

「入江先生にはこちらをご用意しました。」
患者は黒いアタッシュケースを開けた。
中から出てきたのは…。

「す、すごい!!本物ですか!!」

思わず僕は声を出してしまった。
入江に睨まれ、あわてて口を閉じる。

いや、だって声も上げたくなるよ。
中に入っていたのは、巨大ダイヤだったんだから!

すごいなあ、これ。
どうりでこの部屋の外にガードマンが立っていたわけだ。

くそ、入江の奴!こんなもんを手に入れられるなんて!
これで琴子ちゃんに何か作ったりするんだろうか。

「どんなダイヤも、お前の美しい瞳にはかなわないけどな。」
「そんなあ、入江くん。」
なあんて、甘ったるい会話をこいつが交わす…わけないな。



「残念ながら、このお話はなかったことにしましょう。」
「ええ!?」
入江の台詞に、思わず僕と患者は一緒に声を発してしまった。

何で、このダイヤのどこが不満なの、お前?


「い、入江先生、そんな…何がお気にさわることでも?」
オロオロとする患者。
「…僕についての情報が、どうやら正確にあなたの耳に入っていなかったようですので。」
入江は相変わらず壁に背をつけたまま、冷たい。

「俺はキャッシュでしか報酬は受け取らないことにしています。」

キャ、キャ、キャッシュ!?

僕、現実の世界で「キャッシュ」て単語を使う人間に初めて会ったよ!


「大変失礼しました、入江先生!!」
患者はバタンとケースを閉じた。

ああ…ダイヤ…僕でよければそれでもいいのですが。


そして患者はパチンと指を鳴らした。
すぐにドアを開けて、黒服の男が入ってきた。

「すぐに現金を入江先生のスイス銀行の口座に!早く!」
「かしこまりました。」
黒服の男はすぐに消えた。

「入江先生、すぐに先生の口座に前金として全額をお支払いいたしますから。」
「…入金が確認され次第、引き受けましょう。」
偉そうな入江の返事に、患者は胸を撫で下ろしていた。



そして、患者の手術は入江の執刀で無事に終了したのだった。

ところで、今回の報酬はいくらだったんだろうか?
あの巨大ダイヤと同程度のキャッシュがスイス銀行に…。

こいつ、なんでそんな金持ちなのに勤務医をやめないんだ?








ゴルゴ13の習性

報酬は必ず現金。しかし事情によってはそれ以外を受け取る場合もあり。

ゴルゴ13の名言
『用件を聞こうか。』
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水玉

Author:水玉
『イタズラなkiss』のほかには『ゴルゴ13』が好きです☆
多数あるイタキスの二次小説の中で邪魔することなく、ひっそりとマイペースで我が道をゆきつつ生息しております。
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