日々草子 臆病な後輩 5
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水玉

Author:水玉
『イタズラなkiss』のほかには『ゴルゴ13』が好きです☆
多数あるイタキスの二次小説の中で邪魔することなく、ひっそりとマイペースで我が道をゆきつつ生息しております。
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当ブログは、『イタズラなkiss』の二次創作をメインとしておりますが、時折管理人の趣味や日々の出来事についての記事も書いております。

原作者様や関係各位とは一切関係ありません。

二次創作については、いわゆる原作の隙間をぬった作品もありますが、主人公以外のキャラクターをメインとしたものや オリジナルキャラクターが出てくるものもございます。

そして、原作と違った時代(平安や明治やその他の時代を舞台にしております)、異なる設定(主人公を医者と看護師じゃない職業にしております)で書いてあるものが多いですが、原作を冒涜しているつもりは全くございません。

二次創作が苦手という方及び原作のイメージと合わないと思われる方はどうぞお引き取り下さいますようお願いいたします。

コメント及びメールなどでの苦情及び批判は公開、非公開を問わず、私へ告げることはご遠慮いただけますよう、お願い申し上げます。

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臆病な後輩 5





研修医でもないのに、こんなに緊張する手術は久しぶりだよ。
少しドキドキしながら、僕は自称臆病な後輩と並んで手を一生懸命洗っていた。

自動ドアが開いて、誰かがやってきた。
ああ、そうだった。確か今日の手術は研修医が見学するとか言ってたっけ。

手洗い場は全て埋まっているので、彼は僕たちの後ろに並んで順番を待つ。
その時だった。

ヒュンッ!!!

…この風を切る音、前にもどっかで聞いたな。

僕は嫌な予感を覚えながら、後ろを振り返った。

「あわわわわ…。」
そこには、メスでキャップを壁に刺された状態の研修医が腰を抜かしていた。

勿論、このメスを投げた奴はここに一人しかいない。

「…俺は背後に人に立たれることが嫌いなんで。」
入江は冷たい目で研修医を見下ろしていた。
「背後って、お前それは明らかにおかしいぞ!」
こいつの異常さにはすっかり慣れたつもりでいたけど、それでも怯えている研修医くんを前にそう言ってしまう僕。

「すみません、僕が悪いんです!」
研修医くんは自分でメスを抜くと、立ち上がった。
「いや、どう考えたって無言でメスを投げたこいつが悪いよ。」
「いえ。入江先生は背後に他人が立つことを極端に嫌うということをすっかり忘れていた僕が悪いんです。」
すみませんと頭を下げると、研修医くんは着替えに出て行ってしまった。

何だよ、また僕が一人おかしいみたいじゃないか。
どう考えたって、入江の行動が尋常じゃないのにさ。
ああ、もうみんな、どうかしてる!!



装甲車をも切ることができるメスは見事な切れ味だった。
悔しいが入江のメスさばきは美しい。
この僕が後輩の助手を務めることは屈辱的だったけど。

それにしても、本当にこの手術のために、どうして斬鉄剣並みのメスを必要としたんだろうか?

だってさ。
この手術…痔の手術だぜ?
痔の手術に三千万円用意するこの患者さんもどうかしてると思うけど。
保険適用できるってのに。

…世の中は謎に満ちている。
でも一番の謎は、この自称臆病な後輩だろうけど。



ということで、手術は無事に終了。

「それじゃ、患者さんに会ってこようよ。」
どんな気分かとか聞きたいしね。
当然、執刀医である入江だって同じ気持ちのはずさ。

「いえ、俺は結構です。」
「はあ!?」
またこいつは!!
どうして素直に「そうですね」の一言を口にできないんだよ!!

それともあれか?
手術終わりました、琴子ちゃんと朝までガッツリコースでも行く気か?

訝しむ僕に、入江は面倒くさそうに言った。

「俺は患者に二度会うことを好みませんから。」

はあっ!?
患者に…二度会うことを…好まない、だあっ!?

「お前、それでも医者かよ!!」
もう怒鳴ることはないと思ったのに、僕は思わず怒鳴ってしまった。

医者ってのはな、切りました、はいおしまい、じゃねえんだよ!!
きちんと患者さんとのコミュニケーションが必要な職業でもあるんだよ!!
大体、患者さんだって色々訊きたいことがあるだろうが!!

「何を思われても、それが俺のポリシーなんで。」

入江はそう言い残し出て行った。

やっぱ、あいつ、絶対おかしいって!!!





「ああ、入江先生はそういう方ですよ。」
医者としての責務を果たそうと、僕は術後の患者さんに会いに行った。
入江の暴言をそっくりそのまま伝えると、患者さんは笑顔で驚くべきことを言ったのだ。

「私も入江先生にはもうお会いしたくありません。」
「そりゃあそうですよね、あんな失礼な男。僕だって一緒に働くのも…。」
「いや、違います。そういう意味ではなく。」
患者さんはベッドの上で手を振った。
「じゃあどういう意味ですか?」
「入江先生が二度目に患者の前に姿を現した時は、患者が入江先生に嘘をついた時、もしくは入江先生を裏切った時と決まっているんです。」
「はいぃぃぃ!?」
僕は患者さんの前で素っ頓狂な悲鳴を上げてしまった。

嘘をついた時か、裏切った時だってえ!?
何だ、そりゃ?

「だから入江先生がまた患者の前に姿を現した時は…。」
そう言いかけた患者さんの顔が真っ青になる。

「どうしました?」
僕は急いでモニターをチェックした。
急変か?

「いえ、すみません。体は大丈夫です。」
患者さんは大きく深呼吸をした。
確かに血圧も脈も正常のようだ。

「入江先生が姿を現した後、その患者がどうなったか…それは恐ろしすぎて口にできないもので。」
「恐ろしすぎて…口にできない…。」

僕はゴクリと生唾を飲み込んだ。
一体、何が起きるというのだろうか。
メスでメッタ刺しにされるとか?
いやいや、そんなことが起きたらニュースになる。
それどころか、今ここにあいつがいるわけがない。





「疲れたなあ。」
やっと自宅に戻った僕は、机の前で伸びをした。
医者としての仕事よりも、違うことで疲れを感じた数日間だった。

僕はパソコンを開いた。

そして、入江の情報をまとめ始める。
こいつ、絶対他にも何か隠していることがあるに違いない。
それを調査するのは、先輩である僕の務めだ。
色々調べてみる必要があるよな。

僕がそう思いながら、キーボードを叩いていた時だ。

ヒュッ!!!

トン、トン、トン…!


「うわぁぁっ!!!」

キーボードを打つ僕の手が止まった。
いや違う、止まったのではない。
…動くことができない!!

なぜなら。
僕の両手の指の隙間に、きれいにメスが突き刺さっていた!!

僕は机の前の、開け放った窓から外を見た。

ここ、マンションの7階だぞ!?
一体どこからこんなものを!!

だがどこを見回しても人影は見当たらない。

僕は全神経を集中させて、何とか手をキーボードから離した。

こんなことをやる奴は、あいつしかいない!!

なるほど…。
自分のことを調べたり、データを作成する人間は許さないってことか。

今回はこの程度で済ませてやるぞという意味なんだな?
つまり警告ってことか。

入江直樹――。
僕は絶対、お前に負けやしない!!





ゴルゴ13の習性
1.背後に人が立つと無意識に攻撃する
2.依頼人には二度会うことはしない(会う時は依頼人が自分を裏切った時、または自分に嘘をついた時)。
3.自分について調べる人間は排除する





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