日々草子 一輪の花 23

一輪の花 23

気づいたらカウンターが150万を超えていました!!←教えていただきました^^;
来て下さる方、ありがとうございます!!

そして『例のもの』のためのカテゴリ、作っちゃいました!(いや、いつかは狙ってましたけどね)
携帯からお越しの方で未見の方、よろしければ年末年始のお伴にどうぞ。






琴子に手を貸してもらいながら居間にやってきた直樹を見て、重樹たちは驚いた。
「まあ…部屋から出てくるなんて!」
紀子は喜びのあまり声もそれ以上出せなかった。

この様子に戸惑っている琴子に、直樹が話す。
「ここに来てからずっと部屋に籠っていたからな。」
自分の部屋の中は自由に歩くことができるが、広い邸内を歩くことは不安がある。
だから誰かに手を借りなければならないのだが、人に頼ることがあまり好きではなかったために部屋から出ることが億劫になっていたのだという。

そんな直樹が頼れる存在である琴子は、やはり直樹にとって特別な存在なのだと重樹と紀子は実感した。

「親父たちに話があって。」
ソファに座った直樹が切り出した。
「それじゃ、私は。」
家族の話に他人の自分がいてはと、琴子は遠慮しようとした。
が、その手を直樹がつかまえる。
「琴子にもいてほしい。」
「でも…。」
琴子は重樹たちを見た。
「さあ、遠慮しないで。」
「座って。」
重樹たちは琴子にも同席を求めた。
いいのだろうかと思いつつ、琴子は直樹の横に座った。

「琴子と結婚する。」
直樹は言い切った。
「俺には琴子が必要なんだ。もう二度と離れたくない。」
まさかもう結婚の話を切り出すとはと、琴子は驚きを隠せなかった。
確かに先程「もう離れない」と約束したが、いくらなんでも早すぎるのではないだろうか。

「その…相原さんは?」
重樹が琴子を見た。
「私は…。」
琴子は直樹を見た。
「…許されるならば、お傍にいさせて下さい。」
そう答えた時、重樹と紀子の顔に一瞬戸惑いが浮かんだことを琴子は確認した。

「相原さんがそう言ってくれるのならば。」
重樹は紀子と顔を見合わせる。
「わしたちは反対しないよ。なあ?」
「ええ、そうですわね。」
両親の返事を聞き、直樹は微笑を浮かべた。
しかし、琴子の中には不安が残っていた。



琴子は別荘に滞在することになった。
重樹と紀子は琴子にとても優しくしてくれたし、琴子も二人のことが大好きになった。
琴子は直樹に寄り添い、ほとんどの時間を共に過ごしていた。
自分と一緒に過ごすことで、心から幸福を感じている直樹を見ていると琴子も嬉しかった。
が、結婚についてはまだ琴子の心に影を落としたままだった。



そのような日々の中、重樹たちが琴子一人を呼んだのは夜も更けた頃だった。

「ごめんなさいね、遅くに。」
紀子が琴子に謝った。
「大丈夫です。」
琴子は笑顔を作ったが、話の内容は予想がついている。

「実は、結婚についてなのだが。」
重樹が切り出した時、やはり自分の予想は当たっていたと琴子はスカートを握りしめた。
「あの…私はそのような大それたことを願ってはおりません。」
重樹が話す前に琴子が口を開いた。
「直樹さんはああ仰って下さいましたけれど、私は結婚なんてそんなこと、望んでもおりません。私は両親もいませんし、立派な実家もありません。美しくもなければ賢くもないことは自分でもよく分かっております。直樹さんや入江家にふさわしい人間じゃないことはよく分かっております。」
重樹たちは大泉家の人間とは全然違うということは、一緒に過ごしているうちに分かった。
しかし、上流階級の人間には違いない。やはり家族として迎えるのに自分のような生い立ちの人間は相応しくないと思っているのだろう。
誰もが直樹、入江家にふさわしいと思っていた沙穂子と自分は天と地の差があることを琴子は自覚している。

「入江家に入ることは望みません。でも、どうか…どうか直樹さんのお傍にいることだけは許していただけないでしょうか。」
琴子は必死に頼み込む。
「四六時中お傍にいられなくとも、毎日少しの時間でいいのです。その時間に直樹さんの顔を見ることができれば私は十分です。」

「ちょっと待って。」
紀子が止めようとするが、必死になっている琴子の耳に入らない。


「こちらで働かせていただけないでしょうか?なんでもします。もちろん、お屋敷に置いていただくなんて滅相もないことです。どこかに部屋を借りて通わせていただければ…。」

そして琴子はここ数日考えていたことを言った。
「もし、直樹さんの目が治ったら…家柄のいいお嬢様を奥様に迎えられたいと考えることはごもっともです。その時は私はお暇をいただきます。」

「琴子ちゃん、それはだめよ!!」
とうとう紀子が大声を出して、琴子を止めた。
「え?」
突然「琴子ちゃん」と呼ばれ、琴子は目を丸くした。
「あの、今…。」
「ごめんなさいね。」
紀子は恥ずかしそうに笑った。
「その、裕樹のお手紙を読んでいるうちに親しみがわいてきてしまっていたの。」
「会ったこともないのに、わしらは君のことを“琴子ちゃん”と呼んでいたんだよ。」
重樹も照れくさそうにしている。
「今日は琴子ちゃん、何をしてくれたのかしらって、ね、あなた?」
「そうそう、琴子ちゃんは元気いっぱいだなあとか。」
琴子は驚きのあまり呆然となったが、少しずつ嬉しさがこみあげてくる。

「とにかく、何てことを言うの、琴子ちゃん!」
紀子は軽く琴子を睨んだ。が、その口元は笑っている。
「そうだよ、琴子ちゃんが直樹にふさわしくないなんて誰が決めるんだい?」
重樹も紀子に続く。
「わしたちが心配しているのは、家柄や財産なんかじゃないんだよ。」
「では?」
一体何が問題なのだろうかと、琴子は不思議に思った。

「琴子ちゃんに、直樹の人生を背負わせることになってもいいのかと思ってね。」
そう話す重樹の顔が少し曇った。
「直樹は心因によるものとはいえ、これから先治るかどうか分からない。そんな直樹と結婚させることが琴子ちゃんにとって不幸なことにならないかと思って。」
「直樹さんが無理を言ったから、従っているのじゃなくて?」
重樹たちが心配していたのは、琴子の未来だった。
優しい琴子は直樹の願いを断りきれなかったのではと思っていたのである。

「大泉の問題もあったし。」
重樹の言葉に琴子はハッとなった。
息子の目が見えなくなったことで、手のひらを返した大泉家。
直樹は淡々としていたが、息子にされた仕打ちに一番傷ついているのはこの両親ではないだろうか。

「あの家はもう気にしなくていいじゃありませんか。」
紀子が不愉快な顔をした。
「本当に失礼だわ。でもあのお嬢様がお嫁さんにならなくてせいせいしましたけれど。」
「これ。」
重樹は妻をたしなめる。
「いいえ。直樹さんは何だかどうでもいいって感じで縁談を受け入れていましたけれど、私は反対だったんです。あちら様はうちの財産目当てだってことを露骨に出していましたし。」
紀子は身の毛がよだつという様子で体を震わせた。
「いい加減にしないか、琴子ちゃんが驚いているだろ。」
「あら?ごめんなさいね。」
紀子は子供のように笑った。
どうやら紀子はあまり沙穂子、大泉家を気に入っていなかったらしい。
「まあ、確かにわしも気は進まなかったがな。」
重樹がため息をついた。
「さっさと直樹に跡を譲って隠居しろと言わんばかりだったからな。」
「ほら、あなただって!」
紀子に言われ、重樹も笑った。

つまり、両親は大泉家と姻戚になることは嫌だったのである。
琴子は美しい沙穂子を思い出した。
あの完璧な女性ですら気に入られなかったのだから、自分など…。

「でも、琴子ちゃんは違うわ!!」
紀子が琴子を抱きしめた。
「一目見て、私は大好きになったんですもの。」
「あ、あの…。」
「可愛いくて優しくて、なんて素敵なお嬢さんなんでしょう!」
「だから、こんな素敵なお嬢さんに直樹を背負わせるのは気の毒じゃないかと言っているんだ。」
重樹の言葉に、紀子は琴子の体を離した。
「…そうでしたわね。」
しゅんとなる紀子。

「私は直樹さんをお荷物なんて思ったことはありません。」
琴子が口を開いた。
「私は直樹さんのお傍にいられたら他に何もいりません。」
直樹に言ったことと同じことを、琴子は重樹たちに話す。
「直樹さんの目が見えても見えなくとも、その気持ちは変わりません。何より直樹さんが私を必要としていることが幸せなんです。」
「琴子ちゃん…。」
自分を見つめている重樹と紀子に、琴子ははっきりと告げた。
「私も直樹さんが必要なんです。」

重樹と紀子はお互いの顔を見る。その顔には笑顔が浮かんでいる。

「火事でとんだ目に遭ったが…。」
「何物にも代えられない宝物を手に入れられましたわね。」
「琴子ちゃん。」
重樹が琴子を優しく呼んだ。

「…直樹をよろしく頼むよ。琴子ちゃんになら安心して任せることができる。」
「旦那様…。」
「だめですよ、結婚なんてしなくていいなんてことは言っては。」
紀子が笑う。
「ちゃんと結婚しないと、私たちの可愛い娘って呼べないもの。」
「奥様…。」
琴子の目に涙が浮かんだかと思うと、すぐにこぼれ始めた。
「ありがとう…ございます。」
「お礼を言うのはこちらの方だよ。」
「ええ、ええ。来てくれてありがとう、琴子ちゃん。」
重樹と紀子は琴子の肩に優しく手を回した。



「…戻るから、また手を貸してくれないか。」
直樹が小声で裕樹に頼んだ。
「うん。」
裕樹の腕を直樹が掴む。

両親が結婚に不安を抱いていることは、直樹にも薄々分かっていた。
まさかとは思うが、琴子の出自が気に入らないということだろうかと心配していた。
そんな時琴子が両親に呼ばれたことを裕樹から聞き、部屋の外でこっそり話を聞いていたのである。

「お兄様。」
直樹の部屋に向かいながら、裕樹が呼んだ。
「何だ?」
「結婚、おめでとう。」
少し照れたように祝いの言葉を述べた弟の頭を、直樹はくしゃくしゃと撫でたのだった。



そして直樹と琴子は入籍し、琴子は晴れて「入江琴子」となった。
それを見届けて重樹たちは建て直された本邸へと戻って行った。
直樹は琴子と共に、しばらく別荘で療養を続けることになっている。



そして――。

「…今夜からよろしくな。」
「よろしくお願いします。」
直樹と琴子は、ベッドの上で向かい合っていた。

「俺の目がこうだから、不安だろうけれど。」
「そんな!!」
直樹の言葉に琴子は頭を振った。
既に部屋は明かりが落とされ、ベッド傍の小さなライトだけが灯されている。

直樹は琴子の体に手を伸ばし、キスをした。
不思議なことに、キスは一度も外れたことがない。

そしてそのまま、琴子の華奢な体を直樹は倒す。

二人の体からすべての衣がなくなった。
直樹のキスを全身に受けながら、まるで目が見えているのではないかと琴子は思う。
それくらい、直樹の手の動きは自然なのである。

「…おい。」
しばらくした後、直樹は琴子を呼んだ。
だが返事はない。
「…おい。」
直樹は琴子の頬をつねった。
「痛いっ!」
やっと琴子から声が出た。

「声を出してくれないと、お前の様子が俺には分からないんだけど。」
むにゅっとつねったまま、直樹が笑う。
「だって…恥ずかしい。」
「俺とお前しかいないんだから、気にするな。」
そして直樹は言った。
「まあ、我慢できるのも今のうちだろうけれど。」
「え?」
そしてまた、直樹は琴子の体に手を伸ばす。

「あ…。」
荒くなる息遣いと、今まで聞いたことのない声に直樹はぞくっとなった。
この声がこれから何回も聞けるかと思うと嬉しくてたまらない。

沙穂子の時は義務的で、まるで仕事をこなすかのような気分だったが今は違う。
どうすれば琴子が喜んでくれるだろうか、どうすればもっと愛してくれるだろうかとそればかり直樹は考えている。

「これが人の喜ぶ顔を見る嬉しさってやつか。」
「え…?」
また聞こえた声に、直樹はニンマリと笑った。
そして琴子の細い腕を自分の首に回し、その耳元にこれからが本番だと囁いた――。

直樹の目が見えないことを、この時だけ琴子は感謝していた。
きっと今、すごく変な顔をしているに違いない。
今まで感じたことのない痛みと快感で、琴子の頭はどうかなりそうだった。
そんな自分を見られてしまったら、直樹はきっと冷めてしまっただろう。

「…目が見えないことを今、ちょっと後悔してる。」
そんなことを考えていた琴子に、直樹が言った。
直樹の息もかなり上がっている。

「琴子の今の顔を見られないのは、すげえ残念だ。」
「…からかうつもりなんでしょう?」
気にしていることを言われ、琴子は意地悪だと思った。
「違うよ。」
直樹は琴子の頬を両手で挟んだ。
「俺のものになったお前の顔は、今までで一番綺麗だろうから。」
そして直樹は琴子にキスをする。もう何回もされているので琴子もだいぶ慣れて来ていた。

「でもいっか。見えない分、声で満足させてもらうから。」
「声って!!」
まるでいたずらっ子のような直樹に、琴子も笑わざるを得なかった。

直樹の手が琴子の全身をくまなく探る。
「まるで真珠みたいだ。」
すべすべな琴子の肌に、直樹が頬をつけた。

「いつか…見られるといいな。琴子の全てを。」

それを聞き、琴子も思った。
いつか、いつか自分の全てを直樹に見てもらいたい。
そんな日が来るようにと願いながら、琴子は直樹の柔らかい髪を撫でたのだった。






なんか頭の中では、すごいきれいなシーンに仕上がるはずなんですが…。
入江くんが足を上げたりとか(笑)
その辺は皆様のお好きなように想像してください。
私に肉体的接触は無理だ…涙

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プロフィール

水玉

Author:水玉
『イタズラなkiss』のほかには『ゴルゴ13』が好きです☆
多数あるイタキスの二次小説の中で邪魔することなく、ひっそりとマイペースで我が道をゆきつつ生息しております。
そっと見守っていただけたら嬉しいです。

※当ブログに掲載されている文章及びイラストの無断転載・使用はご遠慮下さい。

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当ブログは、『イタズラなkiss』の二次創作をメインとしておりますが、時折管理人の趣味や日々の出来事についての記事も書いております。

原作者様や関係各位とは一切関係ありません。

二次創作については、いわゆる原作の隙間をぬった作品もありますが、主人公以外のキャラクターをメインとしたものや オリジナルキャラクターが出てくるものもございます。

そして、原作と違った時代(平安や明治やその他の時代を舞台にしております)、異なる設定(主人公を医者と看護師じゃない職業にしております)で書いてあるものが多いですが、原作を冒涜しているつもりは全くございません。

二次創作が苦手という方及び原作のイメージと合わないと思われる方はどうぞお引き取り下さいますようお願いいたします。

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