日々草子 一輪の花 8

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水玉

Author:水玉
『イタズラなkiss』のほかには『ゴルゴ13』が好きです☆
多数あるイタキスの二次小説の中で邪魔することなく、ひっそりとマイペースで我が道をゆきつつ生息しております。
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当ブログは、『イタズラなkiss』の二次創作をメインとしておりますが、時折管理人の趣味や日々の出来事についての記事も書いております。

原作者様や関係各位とは一切関係ありません。

二次創作については、いわゆる原作の隙間をぬった作品もありますが、主人公以外のキャラクターをメインとしたものや オリジナルキャラクターが出てくるものもございます。

そして、原作と違った時代(平安や明治やその他の時代を舞台にしております)、異なる設定(主人公を医者と看護師じゃない職業にしております)で書いてあるものが多いですが、原作を冒涜しているつもりは全くございません。

二次創作が苦手という方及び原作のイメージと合わないと思われる方はどうぞお引き取り下さいますようお願いいたします。

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一輪の花 8

コメントのお返事がまた遅れて申し訳ありません。
ちょっと乗っているので(この間まで凹んでいたくせに)、突っ走れるところまで突っ走ってみたいのでお許しを!










――沙穂子を馬鹿にするな。
そう言った。しかし、それを口にした時直樹の頭には沙穂子の存在などなかった。
それなのに、どうして琴子にこのようなことを言ったのか。

「直樹さん…?」
沙穂子に名前を呼ばれ、直樹は我に返った。
「お疲れなのでは?でしたら今日はもう…。」
今日は結婚式の招待客を相談していた。そういっても殆どは、入江と大泉両家の事業の関係者であり二人の直接の関係者は限られた人数である。
――本当に家と家の結びつきのための結婚なんだな。
式の準備が進むにつれ、直樹の中でそう思うようになってきていた。

「直樹さん?」
心配そうに自分を見つめる沙穂子に、直樹は笑顔を向けた。
「すみません、大丈夫です。」
「でも…。」
「大丈夫です。さ、続きを。」
「無理をしないように」と沙穂子は念を押し、招待客の名簿に再び目を戻した。

沙穂子のことを好きか嫌いかと尋ねられたら、「嫌いではない」と答えるだろう。
では「愛しているか」と問われたら…直樹は答えにつまる。

最初に会った時に、沙穂子が自分に好意を抱いたことは分かった。
大泉家の実権を握る沙穂子の祖父、そして沙穂子の両親も直樹を気に入ってくれた。
「望まれて嫁ぐことが女の幸せ」という言葉があるが、それを直樹は自分にあてはめた。
望まれて嫁いでくれるというのなら、受け止める方が正解であろう。
沙穂子が生理的にだめだと思ったら断るつもりだったが、そのようなことはない。
何より自分を一生懸命愛してくれる。きっと沙穂子なら自分を支えてくれる良き妻となってくれるに違いない。
そう思い婚約したのである。

それなのに…。

「あら、琴子さん!」
沙穂子の声に直樹は顔を動かした。
いつもはきちんと閉じているはずの扉が、何かの拍子で開いていた。そしてその隙間に琴子の姿を沙穂子が見つけたのだった。

「そうだわ、直樹さん。あのパーティに琴子さんも。」
琴子はドアの向こうで困ったように止まっている。自分の名前が出され、通り過ぎることもできないのだろう。
「琴子さん、少しよろしいかしら?」
沙穂子は扉を開け、琴子を中へ招き入れた。

自分の姿を見た途端、直樹の顔に不機嫌の色が浮かんだことを琴子は確認する。
きっと空気を読めない奴と思っているに違いない。
怪我はすっかりよくなっていたが、あの日以来直樹とはあまり話をすることがなかった。
また何か余計なことを口にして直樹を怒らせ、更に自分をも傷つけることが琴子は嫌だったのである。



「今度、こちらでパーティが開かれることは御存知ですよね?」
沙穂子の言葉に琴子は頷いた。
入江家でパーティが開かれることは知っている。そのために使用人たちは準備に忙しくしている。
だが家庭教師である自分が出席することはありえないので、関係ないと琴子は気にもしていなかった。
「ぜひ琴子さんも出席してくださいな。」
沙穂子は笑顔で琴子に話した。
「ですが私は…。」
「あら、裕樹くんも出席するんですのよ?先生の琴子さんもご一緒にぜひ。」
沙穂子に琴子を困らせる意図がないことは、琴子にもよく分かっている。
だが直樹と沙穂子が揃って出るパーティ。きっと招待客も口々に二人の結婚を祝福するに違いない。
そのような場に出るなんて、まるで針のむしろに座らせられるも同然だと琴子は思った。

「ねえ、直樹さん。直樹さんからもお願いして下さらないと。」
パーティの主催者は直樹である。
「…ここまで言ってくれているのだから、出たら?」
直樹の言葉は素っ気ないものだった。

――婚約者が言うことは、何でも聞いちゃうんだ…。
直樹に駄目だと行ってほしかった。しかし直樹は沙穂子の願いを聞くようにと暗に琴子に命じた。
沙穂子の願いは何でも聞いてやりたい。琴子には直樹が沙穂子を思いきり甘やかしているように見えた。

「それでは決まりね?楽しみだわ。」
沙穂子は琴子の返事も聞かないうちに決め込んだ。
ここまで言われると、琴子も拒むことはできなかった。



あの日、なぜ琴子に沙穂子のことを言われて腹が立ったのか。
その理由が今、直樹には分かった。
なぜなら今も直樹は腹を立てていた。しかし琴子は今日、ほとんど話をしていない。別に自分から出しゃばってパーティに出たいと口にしているわけでもないというのに。

自分と沙穂子が一緒にいる所を、琴子に見られたくないのである。
そして、琴子に沙穂子との仲を心配されることが嫌だということにも気がついたのだった。

それは、なぜだろうか。
答えは直樹にはまだ分からなかった。
琴子は家庭教師、そして自分はその雇い主。それだけの関係である。
なのに、なぜこうも琴子の視線が気になるのか、行動一つが気になるのか。
琴子が怪我をした時、気が付いたら走っていた。
あのような時は誰か人をやればいいし、手当だって女中に任せればよかったのだ。
そうすれば、あのような嫌なことにならなかったものを。

そこまで考えた時、直樹は思った。

――なぜこうも自分は、気がつくと琴子のことばかり考えているのだろうか。



「それでは直樹さん。次はパーティの日に。」
玄関まで沙穂子を見送る直樹。沙穂子は何の疑いも持たずに微笑んでいる。
そう、自分が見つめなければいけない、気にかけなければいけないのはこの女性なのである。
それなのに、今日は沙穂子の話はずっと上の空で聞いていた。
これでは自分を慕ってくれる沙穂子に申し訳がない。
自分が生涯を共にする相手は、この女性なのである。

「…直樹さん?」
やはりどこか具合でも悪いのかと、沙穂子は不安になった。



最近眠れない琴子は、何か本を読もうと図書室へ行っていた。
そしてその帰り、二階へあがる階段の上から玄関に目をやった。
沙穂子が帰る所で、直樹が送っている。



直樹は沙穂子の頬に手を添えた。
そしてゆっくりと沙穂子に顔を近づけ、その頬に唇を落とした。

「直樹さん…。」
直樹が唇を離した後、沙穂子はその場所に手を置き恥ずかしそうに俯いた。
「沙穂子さんを心配させてしまったお詫びになればと…。」
直樹は微笑んだ。というより、笑顔を作った。
「無礼な真似をしてしまい、申し訳ありません。」
「無礼だなんて、そんな!」
頬に手を置いたまま、沙穂子が直樹を見た。
「…とても嬉しかったです。」
沙穂子の言葉を聞き、これでいいのだと直樹は自分に言い聞かせた。



どうやって部屋に戻ったのか。琴子には記憶がなかった。
ただ覚えているのは、沙穂子の頬に口づけをする直樹の姿だけだった。
忘れようとしても忘れることができない。
何度も何度も頭の中でその場面が再生される。
また直樹が、沙穂子をいかに愛しているかを知ってしまったことが辛く悲しい。
琴子はベッドに飛び込み、声を殺して泣いた。

パーティなど出たくない。
これ以上自分を苦しめることはしたくなかった。
二人で楽しく過ごせばいいのに、どうして自分に構うのだろうか。

泣いて泣いて泣き続けた後、琴子は考えた。

直樹は沙穂子の願いを何でも聞いてやりたいほど、彼女を愛している。
つまり沙穂子の喜びが直樹の喜びなのだろう。

ということは、沙穂子の願いどおりに自分がパーティに出れば…。
沙穂子は喜んでくれるだろうし、直樹も喜ぶ沙穂子を見られて嬉しいに違いない。
最終的には、直樹の幸せにつながるということに琴子は気がついた。

「直樹さんが喜んでくれるのなら…。」
自分が我慢することくらい、何でもない。
相思相愛の二人に割り込むつもりなど毛頭ない。ただ直樹の幸せと喜びだけを考えることができれば…自分もそれで幸せなのだと琴子は思い直したのだった。








口にするか頬にするか、ギリギリまで迷いました(笑)

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