日々草子 二つの報酬
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水玉

Author:水玉
『イタズラなkiss』のほかには『ゴルゴ13』が好きです☆
多数あるイタキスの二次小説の中で邪魔することなく、ひっそりとマイペースで我が道をゆきつつ生息しております。
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当ブログは、『イタズラなkiss』の二次創作をメインとしておりますが、時折管理人の趣味や日々の出来事についての記事も書いております。

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そして、原作と違った時代(平安や明治やその他の時代を舞台にしております)、異なる設定(主人公を医者と看護師じゃない職業にしております)で書いてあるものが多いですが、原作を冒涜しているつもりは全くございません。

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二つの報酬

親父の会社を手伝うようになって、数か月。業績も上がってきたし、何とか倒産はまぬがれた。けれど、まだ景気がいいといえる程ではなく、社員の生活を保障できると堂々と宣言できるほどではない。これでは会社を立て直したと胸を張って言えない。だから、琴子と入籍することもしばらく延期することにした。社員の不安を取り除けないまま、俺だけがのうのうと幸せに浸るわけにいかないからだ。
何か、起爆剤となる商品はできないかと俺が頭を悩ませていたそんな時に彼らはやってきた。
俺に会いたいと言う青木という人間に心当たりは全くなかった。けれど結婚や仕事という恐らく俺の人生最大の忙しさの中、忘れている可能性も否定できなかったので、とりあえず会うだけ会ってみることにした。 …忙しい時間を割いてまで会ったことに、俺はすぐに後悔した。青木とは、大学のアニメ部の人間だった。アニメ部のこのメガネの男が、青木という名前だということを、俺は今初めて知った。

青木たちは1枚のフロッピーディスクを持参していた。おそらく中身はゲームソフト、これをうちの会社へ売り込む魂胆らしい。どうせくだらない代物だろうとは想像がついたが、通した以上、目を通すのも礼儀の一つかと思い、気は進まなかったがパソコンの電源を入れてみた。
…2度目の後悔が俺を襲った。ディスプレイに映し出された『ラケット戦士コトリン』のロゴと、琴子そっくりのキャラクター…。傍で見ている彼らはこのゲームソフト作成のため、就職を蹴ったとか言っているが、こんなくだらない代物を作っていて就職できなかったということが正しいだろう。
20分後、俺はこのゲームを難なくクリアした。制作に1年以上かけたと自慢した割には、簡単すぎる。あらゆるテレビゲームに精通した最近の小学生の手にかかれば、このゲームは半日もかからずにクリアするだろう。それくらいのレベルだった。無駄な時間を取ってしまったと俺は思った。

俺にボロボロにされた青木たちは肩を落として、部屋を出て行こうとしていた。そんな時、俺の頭の中に何かがひらめいた。そして気づいた時には青木たちを呼び止めていた。

「ちょっと待って。」
青木たちが俺を振り返った。
「そのゲーム、俺に預けてみますか?」
俺の言葉に青木たちがまた近寄ってきた。
「そのゲームをうちが買い取ってもいいと言っているんです。ただし、このままでは使い物になりませんから、いろいろと改善しなければいけませんけれど。その制作チームに参加しますか?」
「え?」
青木たちは目を丸くして、俺の話を聞いていた。
「もちろん、キャラクターデザインとしてあなたたちの名前も制作スタッフに入れましょう。このゲームが売れたあかつきには、あなたたちにも注目が集まるはずです。どうです?悪い話ではないと思いますが。」
「そりゃあ…。」
「ただし、1年かかる作業を最低1か月…、いや、2週間で終わらせるペースでやるので、相当ハードになることは覚悟してもらいますが。」
青木たちは、少しの間3人でごそごそと話していた。やがて、
「うん!入江くん!君の話に乗るよ!」
とOKサインを出してきた。
「それから、もう一つ、このゲームを商品化するに当たって条件があるのですが…。」
俺の出した条件に、青木は最初猛反対したが、最後は渋々承諾した。
かくして、俺とパンダイの企画室、それから青木たち3人はチームを作成し、『ラケット戦士コトリン』の商品化へ向けて動き出した。

それから2週間というものの、俺は会社へ泊りこみ、家へ帰らずゲーム作りに没頭した。この『ラケット戦士コトリン』のオタク受けするキャラクター、そしてゲームの王道でもある数々の難関をクリアして、敵を倒すというストーリー、この2つを今までのゲームにはない、ハイレベルなものに仕上げれば間違いなくヒットする、俺はそう確信していた。
正直、アニメ部の連中はキャラクターデザインくらいしか役に立たないので、チームに必要はなかったのだが、ゲームの購買者はオタクが多い。オタクに受けるキャラクターはオタクである彼らに作らせることが一番確実だ。だから、チームに残したのだった。
入籍を待たせて、家にも帰ってこないと琴子は泣いて会社へ抗議しに来たこともあったが、今はただただ琴子に我慢してもらうしかないと自分にも言い聞かせながら、予定通り2週間で『ラケット戦士コトリン』を作り上げた。

そして、制作発表を兼ねたパーティーで、俺は満を持してそのゲームを発表した。その場に琴子を連れてきて、正式に俺の妻だと紹介した。琴子は泣いて喜んでくれた。ゲームの成功も確信した。

そして、ようやく青木にあの時提示した条件を実行してもらう時がきた。
「あなたが今しているマフラーを、俺に渡すこと。」
これが俺があの時出した条件だった。青木がしていたマフラー、それは去年のバレンタインに琴子が俺の為にと不器用な手で編んでくれたマフラーだ。バレンタイン当日、実家へと戻った俺と行き違いになった琴子のマフラーは、どんな因果か青木の手に渡っていた。
翌日、マフラーをした青木の姿を見て、琴子は返せと叫んでいたが、俺は余裕を見せて、そんなマフラー全然いらないと素っ気なく言ったものだ。だが本当は、琴子が俺の為に毛糸を選び、恐らく睡眠時間を削って編んでくれたマフラー、たとえ左右の幅とふさの量が違って目も飛んでいる物でも、俺以外の男が身につけることは我慢がならなかった。俺はつまらない意地を張ってしまったことを少し後悔したが、その場はあきらめるしかなかった。

そして、それから1年近く経ち、青木があのマフラーを身に付けて俺の目の前に現れた。会社にとって起爆剤となる商品、そしてマフラー、この2つを持ってきた青木の姿があの時の俺には“ネギを背負ったカモ”に見えた。これを利用するに超したことはない。そうして、俺は必要なもの全てを手に入れることを思いついたというわけだ。

「やっぱり渡さなきゃダメ…?」
今更、青木はマフラーを手にごね始めた。イライラした俺は、
「いいですよ、だったら販売するにあたって、ソフトの製作者からあなたの名前を削除しますが。」
と冷たく言い放った。我ながら大人げない、汚いやり方だと思ったが、手段を選んでいる暇はない。
「前にも話しましたが、このソフトにあなたの名前が連なることで、恐らくあちこちのゲーム製作会社からあなたのもとへスカウトが来るでしょう。そのチャンスを棒に振ってもいいのなら、マフラーはお好きにして結構です。」
「分かりました!!分かりました!!」
青木は慌てて、ようやく首からマフラーを外して俺に寄こした。

1か月後、『ラケット戦士コトリン』は大ヒットを記録、パンダイをようやく社員の生活を保障できるまでに盛り返すことができた。親父も泣いて喜んでくれたし、これで俺も親父への親孝行ができたと思う。何だかんだ言っても、一代でパンダイを大企業へと作り上げた親父を俺は心から尊敬していたし、やはり長男としては親父のためにできることをしたかったから。
琴子とも無事入籍を果たし、俺たちは正式に夫婦となった。入籍を済ませた直後の琴子が嬉し涙と共に言った言葉、
「これで入江くんの奥さんになれたんだ。」
俺はこの言葉を一生忘れないだろう。

そして今、琴子のマフラーは俺の手により丁寧に洗濯され、クローゼットにこっそりとしまわれている。時々、俺の好きな色で編まれた下手くそなマフラーを、俺はコートの内側にこっそりと身につける。
「あれ?入江くんそんな色のマフラー持ってた?」
どうやら俺の手に渡らず、嫌いな青木の元へ渡ったショックで、琴子はマフラーを編んだ記憶を自分の中から消してしまったらしい。いつ、琴子がこのマフラーに気づくのか、気づいたとき、琴子はどんな顔をするのだろうか、俺はその日が来るのがちょっと待ち遠しい。

そして、もう一つ俺が琴子や周囲に隠していることがある。それは『ラケット戦士コトリン』のクリア後のストーリー、クリアした後にある操作をすることによって出てくるキャラクター、コトリンの真のハッピーエンドの相手を俺をモデルにしたキャラクターにしたこと。  
このこととマフラー、この2つくらいをこの今回の成功の報酬にもらったって、悪いことではないだろう。

あとがき
投稿サイト様へ投稿させて頂いたものです。
一話完結も初めて、一人称で書くのも初めてというものでした。
ちょっと続きが書いてみたくなったので、載せてみます。
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