2011'11.14 (Mon)

オタクたちの祭典 上

最初に言っておきます。
最後、かなりオーバーにあおってしまいましたが、後編はそんな大した内容になりませんので!

あまりのくだらなさに、最初は拍手ネタにしようかと思ったのですが…イタキス月間、こんな話も一つくらいあってもいいかなと。



【More】



学園祭のシーズンである。


「今回は、“コトリンの逆襲”というタイトルにしようかと思うんです。」
オタク部…もとい、斗南大学アニメ部の青木が描きあげた絵コンテを見せているのは、OBの矢野だった。

「今年はコトリンのゲーム効果もあって、他大のアニメ部も沢山来るみたいですし。」
「それにゲームファンの間でもかなり話題になっていることで。」
他のメンバーの白山、黄原も力が入っている。

昨年末、クリスマス商戦狙いで発売されたゲームソフト「ラケット戦士コトリン」は爆発的人気を呼んでいる。
「呼んでいる」というのは、未だその人気は衰えることを知らないのである。

「まあ…悪くない出来だな。」
矢野は絵コンテに一通り目を通した。
しかし、その感想にしては表情が今一つであることに、後輩たちは不安を覚えた。

「何か足りませんか、矢野さん?」
「…足りねえな。」
矢野は差し入れに買って来た、ファミリー●―トのフライドチキンを平らげたその指を、トレードマークの唐草模様のセーターで拭いた(この部室にはウェットティッシュなる、しゃれたものは置いていない。そして矢野もティッシュやハンカチといったエチケット用品を持っている訳がない)。

「露出が少ない。」
矢野は太い腕を組み、ギシギシとパイプ椅子を揺らす。一度壊れて青木がガムテープで修繕したその足がまた変な音を立てた。

「露出?」
「コトリンの衣装だよ。」
青木はキャラ設定表をトントンと、ささくれだっている指で叩いた。
フライドチキンの油がまだ残っていたのか、絵コンテのコトリンの顔に油じみがつく。

「何だよ、これ?第一作よりかなり保守的になってるじゃねえかよ。」
確かに矢野の言うとおりだった。
第一作のコトリンに比べ、その衣装はかなり保守的なものである。

「お前ら、こんなのをコトリンに着せて宣伝させる気か?え?」
まだコトリンのモデル本人に許可も得ていないというのに、矢野はすっかりその気である。
「で、でも…。」
青木はチラリと白山、黄原を見た。二人も青木を見る。

「でも、なんだよ?」
「…あんまり際どい衣装にすると、ドンが。」
「ドンが何かしてきそうで。」
「ていうか、もうドンのやることが想像つかない。」

「ドン…だあ?」
矢野の手入れをしていない、ボウボウに生やしっぱなしの極太眉毛がグイッと寄せられた。

「お前ら、ドンが怖くてアニメ部のメンバーのつもりか!」
矢野は不甲斐ない後輩たちに雷を落とす。

「ですが、矢野さん!」
青木は矢野に言い返す。
「ドンですよ?矢野さん、ドンに何をされてきたか覚えているでしょう?」
矢野は思い出そうとする。しかし、思い出すことを彼の小さな脳が生意気にも拒否したため、思い出さなかった。

「まあ…そんなことだろうと思ったけどな。」
矢野はコホンと咳払いをした。
「お前らが怖がることも分かる。だから俺はこんな物を用意してきた。」
矢野は電車内に忘れても、そのあまりの汚さに置き引きすら遭わないであろう、クタクタになったバッグから一枚の紙を取り出した。

「これは…!」
紙を見たオタクたちの目がキラキラと輝き始めた。

「コトリンのフィギュアじゃないですか!!!」

そこに描かれていたのは、コトリンのフィギュアのデザイン画だったのである。

「これを作って、密かに目玉とするつもりだ。どうだ?」
胸を張る矢野。
「でも…ドンがまた見つけたら…。」
「だーかーら!」
矢野が「チッチッチッ」と太い指を揺らした。
「“密かな”って言っただろ?」
「ということは?」
「いいか?この“コトリンの逆襲”のチケットは普通に販売する。まあ、これくらいだったらあのドンも気にしないだろ。でだ、価格を上げた“ゴールドチケット”を密かに販売するんだ。」
「ゴールドチケット?」
「そう。そこに小さくお楽しみ券をつける。これを買った人間は、このリアルコトリンフィギュアを手に入れられるってことだ。勿論、ドンにばれないよう陰で売るから最終日限定だけどな。」
「フィギュア付きチケットってことですね?」
オタクたちの目がまた輝き始めた。
「こっちの懐も十分潤うだろ?」
誰も見たくないであろうウィンクを、矢野はして見せる。

「いい考えです!!」
後輩たちは盛大な拍手を先輩に送った。
「さすが、矢野さん!」
「フフフ…。」
かさついた唇を動かし、矢野が笑った。

「それだけじゃないぞ?」
矢野は更にもう一枚の紙を、散らかっているテーブルの上に音を立てて置いた。

「こ、これは…。」
一旦静まりかえる部室。
ゴクリという、生唾を飲み込む音だけが響いた。

「コトリンフィギュアって…着せ替えなんですか!!」

そこに描かれていたのは、フルヌードのコトリンのデザイン画だったのである。


「す、すごい…まるで本物のコトリンのヌードを見たかのような。」
「もしかして、コトリンとそういう関係とか!」
「矢野さんならコトリンとそういう関係になっても、OKです!」

勝手なことを抜かし始めるオタクたち。
もし「ドン」がこれを耳にしたらどうするつもりなのか。
結局彼らはドンを恐れつつも、自分たちから殺されに行っているようなものであることに気が付いていないのである。



「ところで、この“A●B48”って何ですか?」
青木がデザイン画の片隅に、乱暴に書き殴られている文字に目を止めた。
「コトリン、メンバーに入りたいとか?」
「いや、年齢的にアウトだろ。」
「既婚者だしな。」

「チッチッチッ。そんな単純なものじゃないんだよ。」
またもや太くささくれだった指を振る矢野。

「これはだな、“(A)カップ (K)コトリン (B)バスト 48センチ”の略だ!」

途端に部室は大爆笑の渦に包まれた。

「ちょっと矢野さん、それはないでしょう!!」
「確かにコトリンはツルツルペッタンな胸ですけど!!」
「48センチって、ウェストより小さいことになりますよっ!!」
「まあ、確かにオーバーだったかもしれないな。」
矢野本人も笑い転げている。

「とにかく、この着せ替えフィギュアならば売れること、間違いなしだ!」
「ウーッス!!」
野太い声が部室に響く。

「更に、これを見ろ!」
矢野はカバンからまた、何かを取り出した。

「これがフィギュアの肌に使われる部分だ。」
それは肌色の、弾力のある素材だった。
「触ってみろ。」
矢野に言われるがまま、触る青木たち。

「うわ~すげえ気持ちいい!」
あまりの感触の良さに、彼らは何度も何度もその素材を押す。

「これ、コトリンの肌ですか!」
「おう!とことんリアルに作るぞ!」
「とことんって…あそこも?」
「あそこも?」
さすがに直接的な表現を避けるオタクたちに、矢野は「勿論」と大きく頷いた。

「コトリンリアル着せ替えフィギュア」付『コトリンの逆襲』鑑賞チケットは、ドンことコトリンの夫である入江直樹に見つからないため、こっそりと販売されることも決めた。



こうして、学園祭に向けてのアニメ部のプロジェクトは開始されたのだったーー。



こっそりとオタクたちが集う場所やサイトを通じて販売すれば、入江直樹にはばれない。
そう信じているアニメ部の連中であった。

しかし。

彼らは知らなかった。

一番オタクがいそうにもない、いや、そんなものに目をくれる暇などないと誰もが思って当然の…斗南大学医学部にもオタクたちがいることを。

そして…この後に起きる惨劇など想像することもなく、オタクたちは着せ替えフィギュア製作に没頭していたのだった――。



関連記事
23:38  |  オタク部  |  CM(5)  |  EDIT  |  Top↑

Comment

太く短い指で一生懸命フィギュアを製作しているんでしょうね・・・あ~~オタちゃんたちの部室からもの凄い何とも言えない熱気が・・・・・

AKB48の琴子ちゃん、ドン入江が知ることになったら大変だよ~~
まっその時は出来もしないウィンクでごまかそう!!やのっち♪
ゆみのすけ | 2011年11月15日(火) 13:26 | URL | コメント編集

今度の制裁はなんだろう??笑

満を持しての「オタク部」登場(どんな「満」かは、謎ですが笑)、ありがとうございます。
もう、この人、「ドン入江」の怖さを忘れてしまったのですね・・・さすが、「小さい脳みそ」!って・・・爆笑。
「フィギュアにリアル性を求める」ってあんたら・・・琴子のフルヌード見た事ないじゃん!笑。「ドン」に見つかった日にゃあ、当然無事に帰宅は出来ませぬ・・・
「琴子の胸は、こんなに形悪くない!」それと、「琴子のここ(自重自重笑)、こんなに、お前の眉毛じゃあるまいし!」とか、しれっと言ってのけそうな・・・爆笑。
きっと、「妄想」のみで悩殺死するに違いない!!笑。
お~、久々に「もっさい男達」を見て、「今夜は冷えるわ~・・・ブルっ。」てへっ!
またの登場、心して待っております!笑
REE | 2011年11月15日(火) 17:45 | URL | コメント編集

ドンの報復がどこまで行くのか楽しみです!

拘って作ったフィギュア、残るのはドンの手元のみだったりしてー(≧∇≦)
いい加減にしないとシベリア最北端あたりに送られちゃいそうなオタク部の皆様ですね!
ちぇるしい | 2011年11月15日(火) 19:29 | URL | コメント編集

コメントありがとうございます。

ゆみのすけさん
熱い、熱い部室ですよ~!!
オタクたちの熱気がムンムンで!!
コトリンの企画を練っているオタクたちに近づいたらダメ(笑)
ウィンクでごまかすことなんて無理な状態を下に書いたので、お楽しみ下さいね♪

REEさん
満を持して…のはずなんですが、そう思っているのは私だけかと思いましたよ!
そうそう、こいつらは琴子ちゃんのヌードなんて見たことないくせに、無謀なことを企んでいるんです!
もう本当に懲りない奴ら…涙
REEさんの想像、すごい笑えましたよ!
確かに矢野のフィギュアを前にしたら入江くん、そんな感想をしれっと言ってのけそうですよね!
ぜひ下もよろしくお願いします。

ちぇるしいさん
ドンの報復、かなりブラックな仕上がりとなりました!
矢野のフィギュアの行き着く先がどこなのか…。
本当にいつシベリア最北端に強制送還されても、文句はないですよね!
水玉 | 2011年11月16日(水) 22:31 | URL | コメント編集

拍手コメントありがとうございます。

まあちさん
本当に懲りないんですよ、オタクたちは!
矢野っちの無謀さに、どんな報復がされるのか。
そして、こんなオタクたちをつい応援しているまあちさんが楽しいです。

紀子ママさん
鳥よりもひどい出来…(笑)
確かに青木達のほうがドンの怖さを知っているんですよね。
でも毎回毎回、矢野っちにのせられる青木たちもやはり単細胞というかなんというか…。
ええ!!矢野のお墓を私がですか(笑)
そんなあ、体力使うのや~ん(笑)

水玉 | 2011年11月16日(水) 22:35 | URL | コメント編集

コメントを投稿する


 管理者だけに表示  (非公開コメント投稿可能)

▲PageTop

 | HOME |