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2008.12.15 (Mon)

永遠に語られることのない夜

今日は学会に出席のため、とある地方へ来ている。
俺としては会場傍のシティホテルに宿を取りたかった。
だが、この人が、「せっかく温泉が近くにあるのだから、温泉に泊まりたい。」と駄々をこね、なぜか温泉地のホテルに宿泊するはめに…。


【More】

「やっぱ、温泉ホテルは、二人で一部屋かあ。」
西垣先生が窓から外を眺めながら言った。
「ま、いいか。温泉に入り放題だし。」
「プライベートで行けばいいじゃないですか…。」
俺は言った。
「だって宿泊費浮くじゃん。」
何をケチくさいことを…。俺は溜息をついた。

「早速、温泉入ろうぜ!」
すでに西垣先生は浴衣に着替え、タオル等を手にしている。
「はい、はい。」
いい年して、温泉くらい一人で入れないのか?でも一応先輩なので表立って逆らうのはやめておこう。
俺は荷物から着替えを出そうとした。が、その手を慌てて引っ込めた。

「どうした?」
「やっぱり食事の後にします。」
「何で?」
「ちょっと休みたいし。」
「あっそ。じゃ、お先に。」
西垣先生は、大して詮索もせず、大浴場へと行った。

一人になったことを確認し、俺は荷物の中をもう一度確認する。
あいつの仕業か…。
そして、着替えをそっと出した。
なぜか未来の世界の猫型ロボットのトランクスがそこには入っていた…。

あれは数日前のこと。
琴子が自分の洗濯物をせっせと引き出しに入れていた。
俺は何となしに後ろからのぞき込み、そして一言感想を率直に述べた。
「お前の引き出し、動物園みたいだな。」
そこにはクマ、ウサギ、パンダ、ペンギン、犬などの動物の柄の下着が並べられていた。
ちょっとからかいたくなっただけなのだが、これが琴子の怒りをかった。
「ひどーい!下着くらい人の好き好きじゃない!大体、女性の引き出しを覗くなんて、最低よ!」
でも、お前らしくて可愛くていいじゃんと、その後に続けるつもりだったんだけど、琴子の怒った顔が面白くて、可愛くて、言いそびれてしまった。

まさか、こんな形で仕返しをしてくるとは…。

本当は内風呂で済ませたかったが、そうすると西垣先生が絶対しつこく理由を尋ねそうなので、仕方なく俺は大浴場へと向かった。
途中、売店に寄ってみる。今は何でも売っているだろうから、下着だってあるはず…。
…売り切れていた。

しょうがない。覚悟を決めて俺は大浴場へと向かった。

…いいお湯だった。
よく見ると、ネコ型ロボットの柄が細かくプリントされているだけだ。これなら目を凝らさないと分かるまい。
それに、このホテルに今いる知り合いは西垣先生だけだ。
彼にさえ見つからなければ、大丈夫。
俺はさっさと履いた。

「あれ!入江先生!」
俺は後ろを振り返った。
いつの間にか、二度目の温泉につかりにきた西垣先生が立っていた。
「先生、結構お子様なんだね!」
ニヤニヤ笑いながら、俺の顔を見た。
「…放っておいて下さい!」
一番見られたくない人間に見られて、俺は腹が立った。
「どんな柄履こうが、俺の自由でしょう。」
これじゃ、あの時の琴子と同じだ。
俺は琴子の気分が今更理解でき、心の中で琴子に謝った。
「柄…?」
とぼけなくたって。
「いや、入江先生、どこかにトランクス忘れる癖があるから、こんなことしてるんじゃないの?」
西垣先生がトランクスを見ながら、言った。
こんなこと…?
俺は鏡に映してみた。

…!?

トランクスのバックには、白い糸で“イリエナオキ”とハッキリと縫い付けられていた…。

「琴子!」
俺は帰宅するなり、部屋へと直行した。
「お、お帰り…。」
琴子は驚いた顔で俺を見た。
「あれは何の真似だ!」
「はい?」
「しらばっくれるな!あの下着だ!」
「…何のこと?」
「柄だけじゃなく、何だよ、あの名前!」
「ごめん、本当に何のことだか分からないんだけど…。」
琴子は目をパチクリさせている。
え?本当に知らないのか?

「ホホホ…。」
不気味な笑い声に俺は入口を振り返った。
「それ、全部私のやったことよ。」
お袋が立っていた。
「お義母さん!?何をしたんですか?」
琴子が叫んだ。
「お兄ちゃん、琴子ちゃんのこと、からかったでしょう?可哀想に。少しは気持ちを味わえばいいと思ってね。」
「オフクロ…。」
「今回の会場は温泉の近くでしょう?よからぬ女たちがお兄ちゃんに近づいた時のために、ちょっとばかし細工を施しておいたのよ。」
…オフクロの仕業だったのか。
「で、何がどうなってるの?教えてよ、入江くん。」
琴子が俺の袖を引っ張りながらせがむ。絶対教えるか!

「やあやあ、入江先生。今日もお名前が入っているのかな?」
病院で西垣先生が面白そうに俺に話しかけてきた。俺は睨み返す。
「いやあ、この話をしたら、みんな入江先生に対するイメージが変わるだろうねえ。」
俺は、携帯電話を取り出し、西垣先生の前に画面を出した。

『えー、キョウコちゃん…。うそうそ、ミホちゃんが一番だって。あ、レナちゃん待って…。サオリちゃん…。』
画面には、西垣先生が、しまりのない表情で次々と女性の名前を寝言で呟く様子がムービー再生されていく。しかも到底口にはできないことまで寝言に出し始めた。
「い、いつの間に…。」
これを目にした西垣先生の顔が青ざめていく。
「こんなことになるだろうと、あの夜。俺は一晩中起きてたんですよ。よくもまあ次々と違う女性と…。しかも全部うちのナースですよね?この動画、桔梗あたりに送ったら、1時間以内には病院中に広まりますよね?」

そう、あのトランクスの件で脅されてはたまらない。
俺は西垣先生の弱みを握ろうと、チャンスを一晩中狙っていた。どうせ眠れなかったしな。
「お互い、あの夜のことは秘密ってことでいいですね?」
「仕方ない…。」
こうして、あの温泉地の出来事は、俺と西垣先生の間で永遠に語られることのないこととなった。


☆あとがき
えへ!(^^)!今日はいい気持ちなので、もう一本UPします!
こちらが、本当の直樹vs西垣です。
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22:37  |  入江先生vs西垣先生  |  TB(0)  |  CM(5)  |  EDIT  |  Top↑

*Comment

('゜ω゜):;*.':;ブッ
なんだかんだで、直樹と西垣先生っていいコンビなんだよねぇ。ある意味、頭脳戦??
いや、なんだろう。か。

あ、水玉さん。これはさすがに家で読んでますよ。
だって、水玉さん更新早いから、(すごい楽しみなの♪)通勤電車で思わずチェック入れてます♪
便利な世の中でよかった♪
ヒロイブ |  2008.12.16(Tue) 00:06 |  URL |  【コメント編集】

こんばんは、水玉さん。
紀子ママ、さすがですね。
まさか名前を縫い付けるとは^^
西垣先生はいったい何人のナースに手を付けてるんでしょうね^m^
笑いどころ満載でこの二人のコンビ最高です。
kani |  2008.12.16(Tue) 01:29 |  URL |  【コメント編集】

入江くんママさすがですね!
西垣先生の女好きもすごい!
でも西垣先生の弱みを握ろうと一晩中狙っている
入江くんの方がもっとすごいでかも!?
chie |  2008.12.16(Tue) 13:44 |  URL |  【コメント編集】

みずちゃーん。あなた本当に最高ね(*^_^*)動物園パンの引き出しに直樹のおパン!紀子の仕業は流石と思いつつも、やっぱり琴子が直樹のお支度をする妻なのよね~(*^_^*)これも琴子の特権だね♪
に、しても直樹対西垣頭脳戦バトル!!
いいコンビ♪
クククッ
さあや |  2008.12.17(Wed) 12:52 |  URL |  【コメント編集】

さあや、コメありがとう!
本当はね、琴子の仕業にしようかと思ったんだけど、ブラックすぎるかなと、ママにしたわ。
何気に、琴子のおパンが好きな私(笑)
ずっと動物園でいてほしい♪
水玉 |  2008.12.17(Wed) 18:48 |  URL |  【コメント編集】

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