日々草子 雨の夜の小話

雨の夜の小話

今日はあの雨のプロポーズの日ではないかというお話を聞いたので、ちょっと書いてみました。
といってもこの日はもう色々なサイト様が書かれているので、私の出る幕なぞないのですが。
…というわけで、またしょうもない話に。





「何か、こういうのを怒涛の一日っていうのよね。」
風呂から上がりベッドに腰掛けて、琴子は今日を振り返る。
「夕方までは金ちゃんと結婚するつもりだったのに。」
まさかその数時間後に、ずっと好きだった相手からプロポーズをされるとは思ってもいなかった。
「しかも告白すっ飛ばして、結婚だもんなあ。」
琴子が何年もの間、頭の中で描いてきたイメージとは全く違ったものだった。

「ああやって親の前で言ったってことは、家族公認の仲って思って…いいのよね?」
これからどうやって暮らしていくべきなのだろうか。
家族に認めてもらった仲とはいえ、公然といちゃいちゃするのはやはりまずいだろう。

「普段通りでいればいいのよね、結婚までに。」
琴子は先程から「結婚」という単語を連発していることに気がついた。
「結婚させてほしい」と直樹は言っていたが、まだ学生なのでピンと来ない。

「結婚…となると…。」
まず琴子が想像したのは、結婚式。
ウェディングドレスで直樹と並ぶ自分。誓いの言葉に誓いの…。
「キス…きゃあ!!」
先程もしたばかりであるが、まだ二度目(直樹は三度目と言っていたが)なので免疫が少ない。
「で、その後…。」
想像した途端、琴子の顔はボムッという擬音を発するかのように真っ赤に染まった。

「その後…その後…。」
恥ずかしいと思いつつ、想像せずにいられない琴子。
パジャマを引っ張って、自分の体を覗きこむ。

「ああ…。」
一度パジャマを元に戻し、また引っ張って中を覗いた。
「…何度見ても、ぺっちゃんこ。」
直樹の好みはCカップだというのに、悲しいかな、Aカップである。
時折、ブラジャーなんてなくていいんじゃないかと思ってしまう、その平坦さ。

「これじゃ入江くん…幻滅しちゃう。」
琴子は「その時」を想像し始めた。

「愛してるよ、琴子。」
「入江くん…。」
愛を囁き合った後、ベッドに倒される自分。
そして直樹は琴子からすべて脱がせる。

「ああ…。」
しかし、そこに聞こえたのは直樹の落胆している声だった。
どうしたのかと、琴子は目を開ける。
「お前…全然成長してねえんだなあ。」
がっくりと肩を落とす直樹。
「悪いけどさ、俺、目隠ししてやるわ。」
直樹は手際よく目隠しをして、また琴子の体に手を伸ばした――。



「どうしよう!!」
妄想していた琴子は、頭を抱えて叫ぶ。
「そんな、そんな!!目隠しをされた状態でなんて…そんな女の子、いる!?」
絶対いないはず。
そしてその目隠しは、琴子の胸が成長しない限り永遠に続くだろう。

「結婚は卒業してからと言ってたから…あと一年とちょっとあるわよね!」
その間にバストアップのトレーニングにでも通えば、Cは無理でもBくらいにはなるかもしれない。
「どうやって探そうか。スポーツクラブってそういうのやってるのかなあ?」


「…おい。」
「駅前にあったけど…あ、でももっと都心に出た方がいいクラブがあるのかも!」
「…おい。」
「いや、DVD!そっちを探した方がいいかな?」
「おいって!!」
琴子は突然耳を引っ張られ、「痛い!」と悲鳴を上げた。
「ノックしても返事がねえから、入ったぞ。」
耳と一緒に顔をひきつらせて琴子は目だけを動かした。
そこには、自分を睨む直樹の顔があった。



「入ったって…何か御用で?」
引っ張られた耳を擦る琴子。
「夜這をかけに。」
「ああ、夜這…って!!」
もう一度、琴子の顔が真っ赤になった。
「そ、それじゃあ…目隠し。目隠しをただいま!」
直樹から言われる前に、自分から探す琴子。

その琴子の腕を直樹は掴んだ。
「ああ!!待って、今、目隠しを!!」
叫ぶ琴子の頭の後ろに手をやると、直樹は自分の額を琴子の額につけた。
「…熱はないな。」
「熱?」
「お前、さっきのぼせて倒れただろ?」
「さっき…ああ。」
直樹から突然プロポーズされ、興奮のあまりにのぼせて倒れてしまったことを琴子は思い出した。

「雨にもかなり濡れたしな。昼が暖かっただけに薄着だったし。」
「それで…心配してくれて?」
「一応、医者の卵だったからな。」
重樹が倒れるまでは、直樹は医者をめざしていた。
その夢は今後どうなるのだろうか。
卒業後に結婚、パンダイを再建するとは言っていたが、医者になることに関しては誰も話題にしなかった。
元々重樹は医者になることを反対していたから、そちらは難しいのかもしれない。

「何だ、やっぱり具合が悪いのか?」
黙り込んだ琴子の顔を直樹は覗きこんだ。
「あ、ううん。大丈夫。ただ、色々あって混乱しちゃって。」
琴子は笑って誤魔化した。
これからのことはどうなるか分からない。
でもいつか、機会を見つけて重樹にお願いしてみようと思った。

「まあ、お前のツルツルの脳みそじゃ理解できずにパンクするのも無理はないな。」
「ツルツル…。」
「少しは皺を増やしてくれよ。」
「…はい。」
素直に頷く琴子に、直樹はクスッと笑った。

「まあ、安心しろ。」
直樹は琴子の頭を撫でる。
「夜這いなんて、当分はかけないから。」
「え?な、何で?」
「何でって…かけられたいのか、お前は。」
「いや、そういう意味では!」
ブンブンと琴子は頭を振った。

「今日、いきなりそういう関係になってみろよ。」
「きょ、今日!?」
「さすがに家族の手前、まずいだろうが。」
「だって、家族公認の仲に…。」
「確かに認めてもらったけど、それでもお前の親父さんはいい気分しないと思うぜ?」
「お父さん…。」
しばらくキョトンとしていた琴子だったが、手を叩いた。
「そしたら、お父さんに許可をもらえれば大丈夫ってこと?」
「はあ?」
直樹は何を考えているのかと、琴子を見る。
「だったら、今行ってこようか?お父さんの所に?」
ベッドから飛び降り、ドアへ向かう琴子。
「ちょっと待て。違う、そういう意味じゃないって!」
腕を引っ張り、琴子を直樹はベッドへ連れ戻した。

「大体、何ていってお伺いを立ててくるんだ?」
「え、それは…。」
「“俺といたしたいんで、いいでしょうか”ってか?」
「いたしたい…。」
際どい台詞に、琴子の顔がまた沸騰状態になる。

「そんなこと言われて親父さんだって困るだろ。“ああ、そうですか。どうぞご自由に”なんて言う親、いねえぞ。」
「…うん、そうかも。」
少し気分が落ち着いてきた琴子は、直樹の言うとおりだと思った。
いくら許しを得たからといって、やはり重雄はいい気分にならないだろう。

「それじゃあ…トレーニングする時間はあるんだね。」
ポツリと琴子は呟いた。
「トレーニング?何だ、それ?」
「あ、何でもない。こっちの話。」
アハハと琴子は笑って誤魔化した。



「それじゃあ、入江くんは本当にあたしの体調を心配して来てくれただけ?」
「それが何か問題かよ?」
憮然と答える直樹。
「いや…そんなことはないけれど。」
先程まで自分の胸を見て絶望されたらどうしようと悩んでいたくせに、本人がやって来た途端に突っ走ってしまった自分が琴子は恥ずかしくなった。

しゅんとなってしまった琴子を直樹は眺めていたが、その華奢な体に手を伸ばした。
そしてすっぽりとその体を包み込む。

「ええと…?」
今日何回抱きしめられただろうと、指を折ろうとする琴子。その手を直樹が止める。
「もう数えなくていいって言ったじゃん。」
「あれはキスで…。」
「こっちも。そのうち何回だか分からなくなるから無駄。」
ということは、これから先、何回もこうやってもらえるということである。
「夢じゃないんだ…。」
何回振り返っても、今日一日の出来事が夢のように思えたが、やっと現実だと実感が湧いてきた。

「いいなあ、これ。」
琴子を抱きしめたまま、直樹は笑う。
「結婚するまで、毎晩こうしようかな?」
「ま、毎晩?」
「そうでもないと、辛抱できそうにないしさ。」
「辛抱…。」
それはしなくていいのよと言うべきなのか。それとも、そこが我慢のしどころよと言うべきなのか。

「まあ、お楽しみは最後まで取っておいた方がいいし。何とかこれで我慢するか。」
「はあ…。」
何とも間の抜けた返事しかできない自分が恥ずかしい。

「えっと…。」
琴子は直樹の心臓の音を聞きながら、何か言おうとする。
「何?」
「えっと…いつでもこうやってくれていいから…ね?」
この先は直樹の言うとおり、お楽しみにしておいた方がいいと琴子も思う。
でもこうやって抱きしめられることは気持ちいいし、幸せを感じられる。

「…結構、拷問だけど。」
「拷問!?何で!?」
先程「いいなあ」と言っていたのに、なぜゆえ「拷問」に変わってしまったのだろうか。

「そんな、あたしの体はトゲも刀もついてないよ!!」
「いや、そういう拷問じゃなくてさ。」
直樹は「ふう」と溜息をつくと、琴子の体を離した。
「ま、いいや。お前はしばらくそのままでいてくれ。」
「…うん?」
何だろうか、どうも直樹が言いたいことは理解できない。
元々頭の出来が違い過ぎるのだから仕方ないことなのだろうと、琴子は割り切ることにした。

「それじゃ、俺部屋に戻るわ。」
「うん、心配してくれてありがとうね。」
琴子は手を振って直樹を見送る。
こういうことができること自体、やはり今までと明らかに違うのだと思う。

「あ、そうだ。」
直樹は琴子の耳を引っ張った。
「痛い!」
琴子が抗議しても、直樹は手を離さない。そのまま口を近づける。

「無駄な努力は止めておいた方がいいぞ?」
「は?」
「ボリュームのある胸のお前なんて、お前じゃないから。」
直樹が何について話しているのか分かった琴子は、顔を赤くした。

「それに。」
直樹は続ける。

「俺、その時は目隠しなんてする気ないから。」

「え…?」
琴子の目が大きく見開かれる。

「…お前のペッタンコの胸を隅々までガン見するつもりだから、覚悟しておくように。」
胸を隠すように手を交差させる琴子を、直樹は面白そうに見る。

「目隠ししてしろって、お前はどんなプレイを俺に要求するつもりなんだか。」
呟きながら直樹はクスクスと笑いながら、部屋を出て行ったのだった。

残念なことに琴子がサイズを上げる暇はないまま、二人は結ばれることになる――。

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あっぱれ、天然小悪魔!

あの夜か・・・う~ん、ちょっと切ないけど、幸せの道よね~・・・なんて思っていたら、面白過ぎです、水玉様~ぁ。終始爆笑で、お腹よじれましたよ~。爆笑
天然小悪魔琴子ちゃん、早々と胸の心配って・・・お伺いって・・・爆笑ポイント多すぎでしょ!入江くんも、ガン見するから覚悟しろ・・・ってあーた、そんな、しれっと・・・そりゃ、私もどんなプレイだか知りたいけど。いやいや、知ってどうする私・・・爆笑。
面白いお話の中に、長年同居しているとは思えないほどの初々しい2人が、確実に幸せに向かって歩き出した姿が描かれている面白素敵なお話で、たっぷり楽しませて頂きました。ありがとうございました。11月はイタキスファンには大切な1カ月ですね。水玉様の頭の中も、書きたい作品が沢山あるのではないでしょうか?でも、どうぞ、ご無理なさらず、創作活動をして下さいね。でも、次作も楽しみにしています。
余談ですが、私の住んでいる北関東は、今日夕方から雨が降り出しました。思わず、しみじみ・・・です微笑。

水玉さ~~ん♪

まさか、まさかのすっ飛ばし展開に、まだボーッとしている琴子ちゃん。結婚=想像も、どこか見当違いなうぶな妄想=目隠し!(笑)
入江くん、そんな可愛いらしい思考回路の琴子ちゃんのからの拷問に耐える日々を送る予定だったのね!(笑)
すっ飛び結婚を一番歓迎したのはやっぱり入江くんだったのでしょうね!!

あの日の夜の、どこかこそばゆいような二人の雰囲気が、ほんわかと伝わってくるようでした♪♪♪

記念日目白押しの今月!第一弾!にパチパチーーーー~~~!!!

コメント&拍手コメントありがとうございます。

REEさん
書いていくうちに「ガン見するから…」というセリフを入江くんに言わせてみたくなったんです!
だって入江くん、絶対そう思っているだろうなって。
琴子ちゃんは琴子ちゃんで、昔「Cカップになったら」って言われたから気にしているでしょうし。
目隠しプレイ、それをしている入江くんを想像しちゃいましたよ。
いや、入江くんだったら目隠ししていても見えているでしょうね~。
「何でそんなにわかるの?」と逆に琴子ちゃんが驚くくらい。
11月…といいつつ、もうこの辺のエピソードは他のサイト様が沢山書かれていて、私の出る幕はないんですよ。
でも時折「ふら~っ」と舞い降りてくるので、それで頑張ってみようかなと思っております。

あおさん
入江くん、もし結婚が早まらなかったらどうしていたんでしょうか?
我慢、我慢としていたのか。
確かに両親公認とはいえ、家でいたすのはちょっと…という雰囲気ですものね。
結婚早まって一番喜んでいるのは入江くんだったでしょう!!
よかったね、入江くん。早々に拷問の日々から解放されて!

佑さん
どうしても、ギャグを入れちゃうんです。
それが琴子ちゃんの妄想に(笑)
もうボケと突っ込みのようになってますもんね。
でもこの日は本当に琴子ちゃんにとって人生で一番「???」な日となったのではないでしょうか?

ルルさん
あ~分かります!
私も原作のスキマを読みたくて、二次にどっぷりとつかったんで!
本当に入江くん、言葉足らずですもんね。もっと優しい入江くんが見たかったり、ラブラブな二人が見てみたいと思いますもん♪

まあちさん
琴子ちゃんは、入江くんに抱きしめてもらえることは夢だったので、してほしいと思いますよ。
その先はちょっと怖いから想像したくなかったんでしょうけれど、触れてもらいたいという思いはあったんじゃないかなあと。それが逆に入江くんに忍耐を与えることになるとは知らず(笑)

ゆっぴさん
結婚まで約二週間ですもんね!
それはどんな日々だったのかと、確かに想像してみたくなります♪
何か浮かんだら書いてみたいです。その時はお付き合い下さいね♪

ちぇるしいさん
本当になんでこうギャグになってしまうんだろうかと、自分で思うのですが…きっとうまく書けないから笑いに逃げているに違いない。
とりあえず、吉本レベルまで笑っていただけたのでしたら、嬉しいです!

青空さん
そうそう!あのアニメ、私最終回の前の数回だけ滑り込みで見られたんです~!!
見ましたとも、胸を押す琴子ちゃん笑
結婚して、妊娠してもそこはずっと気にしていたんだなあと。
そりゃあ気にしますよね。これでがっかりされたら、琴子ちゃん、どうしようもないし。何もできないし!
でも取り越し苦労なんですけどね~。

りーさん
足をバタバタ!!それ、それを待っていたんです!!
人にそんな風に思ってもらえるくらいの甘い話を書いてみたいと!でも読むほうが向いていると自覚を始めた今日この頃…笑
ありがとうございます!!
隅々見たんでしょうね、入江くんは!

紀子ママさん
自分だけ幸せになるのは嫌だっただろうから、入江くんの一番やりたいことをやらせてあげたいと願っていたと思います。
でも琴子ちゃんがお願いしなくとも、入江パパは認めてくれたのでよかったなあと。
琴子ちゃんは自分が入江くんの原動力になっていることを気が付いていないんでしょうね…と書きながら、何かネタが降臨してきた気がする~!!ありがとうございます!!

ぴくもんさん
ママさん業、おつかれさまです!そんな中来て下さりありがとうございます!
それにしても、大変だわ!ぴくもんさんの血が、血が~笑
夜這いをかけにきたというのは半分冗談、半分本気だったのでは?
入江くん、もうこれで誰に気兼ねすることなく(いや、勝手に意地張っていただけなんでしょうけれど)琴子ちゃんとイチャイチャできますし!
そして額ごっちんこ、これは王道でしょう!!
入江くんからすれば頭突きされる心配もないですし(笑)
入江くんも少し冷静になって琴子ちゃんの体調を心配する余裕ができたのではないでしょうか。
以前書いた『バスローブ』とこれとうまいことリンクさせて見ようかなと思っております!!
こちらこそ、いつもありがとうございます!またよろしくです~。
プロフィール

水玉

Author:水玉
『イタズラなkiss』のほかには『ゴルゴ13』が好きです☆
多数あるイタキスの二次小説の中で邪魔することなく、ひっそりとマイペースで我が道をゆきつつ生息しております。
そっと見守っていただけたら嬉しいです。

※当ブログに掲載されている文章及びイラストの無断転載・使用はご遠慮下さい。

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このブログについてのお願い
当ブログは、『イタズラなkiss』の二次創作をメインとしておりますが、時折管理人の趣味や日々の出来事についての記事も書いております。

原作者様や関係各位とは一切関係ありません。

二次創作については、いわゆる原作の隙間をぬった作品もありますが、主人公以外のキャラクターをメインとしたものや オリジナルキャラクターが出てくるものもございます。

そして、原作と違った時代(平安や明治やその他の時代を舞台にしております)、異なる設定(主人公を医者と看護師じゃない職業にしております)で書いてあるものが多いですが、原作を冒涜しているつもりは全くございません。

二次創作が苦手という方及び原作のイメージと合わないと思われる方はどうぞお引き取り下さいますようお願いいたします。

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