日々草子 鴛鴦文様(おしどりもんよう) 9
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鴛鴦文様(おしどりもんよう) 9

相変わらず不安だらけで書いているこの話への励ましのコメント、ありがとうございます!!
他サイト様、このシーズンは本当に皆様心をこめられていて…。
いや、私も心はこめております!ただマイナーなだけ、変わっているだけなんです!!(涙)







「予定より遅くなってしまったな。」
辺りはもう真っ暗である。夕方に到着するつもりだったが、遅くなってしまった。
本当はお琴を実家へ迎えに行きそこで夕食を食べてくるつもりだったが、こんな夜更けになってしまったら実家とはいえ申し訳ない。
明日になったら迎えに行けばいいと思い、直樹は実家に寄らずに自分の家へ向かった。

「え?」
戸を開けた直樹の足が止まった。
暗いはずの家が明るい。

「お帰りなさい、師匠!」
明るい声で出迎えたのは、いないはずのお琴だった。
「お前、何でここにいるんだ!」
こんな夜遅くに一人でいたら、何かあったらどうするつもりなのか。その思いから直樹は声を荒げてしまった。
「だって、師匠がお戻りになるのは今日ですもん。」
怒鳴られてもお琴はニコニコと笑って、直樹の足を洗うために汲んでおいた水を運んで来た。

「俺が迎えに行くまで実家にいろって言っただろ。」
「師匠のお戻りが遅いので、気になってこちらに戻っていたんです。」
お琴は丁寧に直樹の足を洗う。水の冷たさが歩き疲れた足に気持ちいい。
「きっと遅くなったからこっちに真っ直ぐ戻るだろうなって。」
確かにお琴の言っている通りである。
「一人で暗いお家に帰るのって、寂しいでしょう?」
洗い終わった後、お琴は直樹の足をきれいに拭く。
「だから先に戻っていたってわけか。」
「はい。」

それからお琴はお腹が空いていないかと、直樹に確認した。
夕方に簡単な食事を済ませたため、それは大丈夫だと答えると、
「それなら明日、食べましょうね。」
と、お琴は重箱を見せた。
「師匠の好きなもの、義母上様に習っていたんです。」
「…どうせまともに食えるもんはねえだろ。」
「そんな!大分上手になったと褒めていただいてます。」
ぷうっと頬を膨らませるお琴に、直樹はクスッと笑った。

「土産、あるぞ。」
「ええ!?」
予想外だったのか、お琴は目を大きく見開いた。
そして何を思ったのか、玄関から外に出て空を見上げる。
「…雨は降ってない。」
綺麗な星空がそこにはあった。
「珍しいことだから、大雨でも降るのじゃないかと。」
きちんと戸締りをし直し、呟くお琴。
「やらねえぞ。」
確かに滅多にお琴に買ってやることはないが、そこまで驚かれるとは。
「そんなあ!」
お琴が直樹の袖を掴んだ。
「ごめんなさい。お土産、ほしいです。」
懸命になるお琴を直樹はからかいたくなった。

「お前、俺が留守の間寂しかった?」
少し考えた後、お琴は答えた。
「いいえ。義父上様たちがよくして下さいましたから。」
その答えに直樹はムッとなった。
お琴はお琴で、直樹が安心できる返事をしたつもりだった。
「あ、そ。なら、あげるのやめた。」
「そんな!」
「だって寂しくなかったんだろ。お前は俺より父上の腰揉みの方が好きなんだ。」
「いや、それも嫌いじゃありませんけれど。」
「そこは否定するところだろうが」と直樹は思う。
「でも、師匠の元気なお顔が見られてすごく嬉しいです。」
「嘘だ。父上の腰の方が好きなくせに。」
「そんなことありません。ちゃんと師匠のことを毎日考えてました。」
「へえ、どんな風に?」
「…ふんどし、沢山溜めているだろうなって。」
「お前はどれだけふんどしが気になるんだ?」
なかなか望んでいる返事が出て来ないこともあるし、これ以上拗ねているのも大人げないと思った直樹は、懐から土産を出した。

「言っておくが、食い物じゃねえからな。」
お琴は包みをゆっくりと解いた。

「可愛い…。」
中から現れたひよこの置物に、お琴が笑顔を見せる。
「これ、師匠が?」
「その間の抜けた面がお前そっくりだったから。」
「愛らしい所が似てますよね。」
「都合よく聞こえるお前の耳がすごいな。」
直樹のからかいなど気にもせず、お琴はひよこを突いたり撫でたりしている。
どうやらかなり気に入ってくれたらしく、直樹はホッとした。

「…本当はさびしくてたまらなかったんです。」
ひよこを手に、お琴が本心を打ち明けた。
「なら、最初からそう言えよ。」
呆れる直樹。
「だって、そう言うと師匠はもう私に家を任せられないとか言いそうで。」
お琴は目にうっすらと涙を浮かべていた。

「向こうで綺麗な娘さんたちに言い寄られて、“どんどんおいで”とか手招きして、毎晩いちゃいちゃして…“奥様がいるんでしょ?” “いいんだ、いいんだ。あんな鈍くさい女は家で苔でも生やしているだけだから” とか笑っているんじゃないかって。」
「俺が考えていた以上に、壮大な妄想を繰り広げていたようで。」
「で、こっちに戻ってきた後、数人の娘さんが “あなたの赤ちゃんができました”ってやってきて。
それでこの家で暮らし始めて。やがて赤ちゃんがみんな生まれて、師匠は“もっと作ろう”と頑張って。私は赤ちゃんたちのおむつ洗いばかりして…うう。」
「何でお前は俺をそこまで女たらしに仕立てたいんだ?」
妄想とはいえ、そこまでお琴に自分は信用されていないのだろうか。

「だって…。」
お琴は妄想だというのに現実のように感じてしまっているらしく、泣き始めている。
「師匠、そんなに素敵なんですもん。何か私と一緒に暮らしていることが信じられなくて…。こんなに離れているのもお嫁さんにしてもらってからは初めてだし…。」
ぐすっ、ぐすっとお琴は泣いてしまった。

「バカだな、お前は。」
直樹はとうとう笑い出した。
「自分のことは都合よく考えるくせに、何で俺のことは悪い方へと考えるんだか。」
「だって…。」
まだ泣いているお琴を、直樹は抱き寄せた。
離れていたこの数日は、どうやらかなりお琴にとって不安な日々だったらしい。
それだけ自分を恋しいと思ってくれたことが分かり、直樹は満足していた。

「…髪、結ったばかりだろ?」
お琴の髪は結って間もない様子だった。そこには、以前直樹が買ってやった櫛がさしてあった。
「だって、師匠に綺麗な所を見てほしかったんですもん…。」
恥ずかしそうに答えるお琴が愛らしくて、直樹はもっと力を込めて抱いた。
「でも残念だな。」
直樹の言葉に、お琴が顔を上げた。
「…すぐ崩しちゃうから。」
何かを企んでいるかのような夫の笑みに、お琴の顔がみるみるうちに赤くなっていった。



数日離れていただけで、直樹はもう限界だった。
いつ脱がせたか分からない着物が散らかる中、直樹は激しく妻を求める。
「…もう無理。」
息も絶え絶えに繰り返すお琴に、直樹はそれでも手を緩めようとしない。
「…俺がよその女に興味なんて示さないって、分かっただろ?」
息がすっかり上がってしまった妻の耳に、直樹は囁いた。
お琴は頷きたくとも、それすらできずにいる。
「…まだ分からないんだ?信じてくれないんだ?」
そして直樹はまたお琴の上に覆いかぶさる。
きっとお琴は、今自分がどんなことをされているのか、それすら理解できていないに違いない。

「お前の肌が…さ。」
さすがに体も汗ばみ、息も荒くなってきた直樹は、再びお琴の耳に口を寄せた。
手はお琴のきめ細やかな白い肌に置いたままだ。
「…俺を呼ぶんだよ。どこへいたって。」
「…そんなこと、ないもの。」
そんな恥ずかしいことをどうして言うのかと、お琴は直樹を見る。
その目がまた艶めかしいものだから、直樹の体が目覚めてしまう。

「最近…髪結いさんがからかう…。」
まったく手を緩めようとしない夫に、お琴が呟いた。
「何て?」
「あんまり…頻繁にお願いするから…新婚さんは大変ですねって…。」
「ふうん。間違ってはいないけどな。」
これで直樹が少し休んでくれるかと思ったお琴だったが、逆に燃え上がらせることになってしまったことに気がついた。

「ああ、すごいぐちゃぐちゃになったな。」
もう形も分からないくらいに乱れたお琴の黒髪は、布団の上に広がっていた。
「…いい眺め。」
「少し…休みましょうよ。」
何とか手を休めてほしいと思い、お琴は懇願した。
「だ・め。」
直樹はお琴の口を口で塞いだ。
「正直に寂しいって言わなかった罰だから。」
力がほとんど入らないお琴の腕を自分の首に回す直樹。

その時だった。
直樹の脳裏に、親友の言葉が蘇った。

――愛しすぎて、傷つけないように。

そんなこと、絶対にない。
直樹は自分に言い聞かせると、またお琴を強く抱きしめたのだった。


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是非、専属髪結いさんを!笑

お久しぶりです。イタキス中毒、いや、二次中毒の私、もう禁断症状が出るんじゃなかろうか??と思う程、ご無沙汰してしまいました。なんとかぎりぎりセーフで帰還しました笑。
そんな中、アマアマ2連投で蜜月旅行が更新され、カワイイお琴ちゃんまで更新されてるではあ~りませんか!もう、大興奮で一気読みでした笑。
お琴ちゃんの師匠のカラカイへの聞こえないふり?さすが、小説家の卵(になれてる?)お琴ちゃん、ハーレム師匠の妄想はご立派!愛人達が押し寄せて、次々と出産?そして、本妻は、「ふんどし洗い」改め「オムツ洗い」・・・そんな気の毒な本妻って・・・笑 いっそのこと文字にしてみたら、案外ベストセラーだったり!?もう、カワイ過ぎ!!そりゃ師匠、髪結いさんのお世話になりますよ!てか、住み込みで雇っては?爆笑・・・てな感じですよね???渡辺屋さんの「好きすぎてキズつけない様に」は強ち間違っちゃないですよね・・・尤も、精神面より身体の心配ですが笑。続きも楽しみにしています。
いつも大したコメ出来ませんのに、私の名前がないのが寂しいとまで言って頂きありがとうございます。
ほんとにいつも楽しませて頂いてます。これからも宜しくお願いします!

コメントありがとうございます。

REEさん
おかえりなさ~い!!お待ちしておりました!!
REEさんのコメント、早速爆笑ものでした!!
なんかもう、悲劇の妻じゃないですか!!
愛人の世話と子供のおむつ洗いをする本妻…そんな状態だったら、きっと誰もが啓太くんと逃げろって応援したくなるでしょうね!
書いてみたら、かなり人気を集めそうな気がします。
髪結いさんを住み込みで雇ったら…便利ではありますが、夜の生活がダダ漏れですよね!
でもそこを恥ずかしがる妻を入江くんはニタ~ッと笑っているんだろうな!

拍手コメントありがとうございます。

ゆっぴさん
ありがとうございます♪
もう人気がいま一つなので…嬉しい!!
愛しすぎて傷つけないように…そのアドバイスをこの後入江くんは身を持って知ることになるんですよ~。

ぴろりおさん
とんでもないです!
私の方こそ、いつも読み逃げで申し訳ありません!
いつもぴろりおさんのお話で、すっかり忘れかけた恋心を思い出させてもらっております。
そうなんです、嵐の前の静けさなんですよ。
しかもあそこまで書く予定は(笑)
何だか自分の中で裸祭り(どんな祭りだ(笑))になっていて、ちょっと書いてみたくなってしまったんです~!!お恥ずかしい!

紀子ママさん
一番激しいですか?
や~ん、どうしましょう!
一歩間違えると、すごい粘着質な愛情になりそうで(は!すでにそうなってる?)、ちょっと危ない直樹さんになりつつあります。
お琴ちゃんは確かに、私の書いた中でも一、二を争う可愛らしさかもしれません。
だから入江くんの暴走も一、二を争うことになるかも…。

佑さん
どうしようか迷ったのですが、無事に渡されました。
お琴ちゃんは本当に、些細なプレゼントで大喜びするんですよね♪

ちぇるしいさん
ありがとうございます!
いやいや、「彼」には敵いませんとも!!というか、ちぇるしいさん、御存知なんですね♪
もう、すっかりメロメロですよ~。入江くん以来ですよ、ここまで男性キャラにまいったのは!
だからうちの入江くんもかなりエロくなってしまうんです~。
あ~でもあれくらいドSな入江くんを書いてみたい!!

メポランさん
そんな妄想をしてしまうくらい、入江くんが素敵なことが琴子ちゃんには不安なんですよ♪
でも女房が思うほど、亭主はもてずっていうくらいだから心配しなくていいのに。入江くんはいつだって琴子ちゃん一筋なんですから。
プロフィール

水玉

Author:水玉
『イタズラなkiss』のほかには『ゴルゴ13』が好きです☆
多数あるイタキスの二次小説の中で邪魔することなく、ひっそりとマイペースで我が道をゆきつつ生息しております。
そっと見守っていただけたら嬉しいです。

※当ブログに掲載されている文章及びイラストの無断転載・使用はご遠慮下さい。

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このブログについてのお願い
当ブログは、『イタズラなkiss』の二次創作をメインとしておりますが、時折管理人の趣味や日々の出来事についての記事も書いております。

原作者様や関係各位とは一切関係ありません。

二次創作については、いわゆる原作の隙間をぬった作品もありますが、主人公以外のキャラクターをメインとしたものや オリジナルキャラクターが出てくるものもございます。

そして、原作と違った時代(平安や明治やその他の時代を舞台にしております)、異なる設定(主人公を医者と看護師じゃない職業にしております)で書いてあるものが多いですが、原作を冒涜しているつもりは全くございません。

二次創作が苦手という方及び原作のイメージと合わないと思われる方はどうぞお引き取り下さいますようお願いいたします。

コメント及びメールなどでの苦情及び批判は公開、非公開を問わず、私へ告げることはご遠慮いただけますよう、お願い申し上げます。

このブログ及び掲載されている話が嫌いだと思われたら、黙ってあなた様の中から、このサイトの存在を消去していただけますよう、お願い申し上げます。

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