日々草子 別冊ペンペン草 28
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水玉

Author:水玉
『イタズラなkiss』のほかには『ゴルゴ13』が好きです☆
多数あるイタキスの二次小説の中で邪魔することなく、ひっそりとマイペースで我が道をゆきつつ生息しております。
そっと見守っていただけたら嬉しいです。

※当ブログに掲載されている文章及びイラストの無断転載・使用はご遠慮下さい。

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当ブログは、『イタズラなkiss』の二次創作をメインとしておりますが、時折管理人の趣味や日々の出来事についての記事も書いております。

原作者様や関係各位とは一切関係ありません。

二次創作については、いわゆる原作の隙間をぬった作品もありますが、主人公以外のキャラクターをメインとしたものや オリジナルキャラクターが出てくるものもございます。

そして、原作と違った時代(平安や明治やその他の時代を舞台にしております)、異なる設定(主人公を医者と看護師じゃない職業にしております)で書いてあるものが多いですが、原作を冒涜しているつもりは全くございません。

二次創作が苦手という方及び原作のイメージと合わないと思われる方はどうぞお引き取り下さいますようお願いいたします。

コメント及びメールなどでの苦情及び批判は公開、非公開を問わず、私へ告げることはご遠慮いただけますよう、お願い申し上げます。

このブログ及び掲載されている話が嫌いだと思われたら、黙ってあなた様の中から、このサイトの存在を消去していただけますよう、お願い申し上げます。

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散米社発行の少女マンガ雑誌『別冊ペンペン草』。その増刊号として『ペンペン草MAX』という、微妙なネーミングセンスの雑誌が新刊されることになった。

そして記念すべきそのメイン作品として選ばれたのは…。

「入江くんが、船津くんの奥さんの小説をマンガ化!」

人気(官能)小説家である品川真里奈の作品を、直樹がマンガ化することに決まったのである。

「真里奈さんも喜んでいましたよ。」
真里奈の夫で、直樹のアシスタントをしている船津が嬉しそうに報告する。
「真里奈さん、別ペを読んでいるんです。」
「それって船津くんの投稿作品の結果目当てで?」
「いいえ。僕の名前なんて最後に確認すればいいって。ナオキンと西垣先生の話目当てだそうです。」
「…へえ。」
相変わらずの態度を取られている船津に、琴子は少し同情を寄せた。

「入江くんはそれで別ぺはお休みなんだよね。」
琴子は手帳でスケジュールを確認する。
これでも一応、直樹の担当なのである。
「ああ…。」
その直樹は、先程から本に夢中になっている。
「何読んでいるの?」
声をかけた琴子の額を、直樹は本をぶつけた。
「痛い!角でぶったあ!!」
額を押さえて琴子は涙目で直樹を見る。
「原作に決まっているだろうが!!」
「あ、そっか。」
原作を読まないと、絵にできない。

「とりあえずキャラだけでも早く絵にして見せないと。」
「そうですね。」
船津も頷く。
「…お前は読んだのか?」
「へ?あたし?」
琴子はキョトンとなった。それを見て直樹は「はあ」と溜息をついた。

「お前も編集ならば、読めよ。ていうか俺より先に読んでおくのが普通だろうが。」
「あ、そうだね。うん、今から読むよ。」
「どうぞ、琴子さん。」
船津が原作本を琴子に渡した。

「あ、そうだ。船津くん、入江くんのことを奥さん…品川先生には…。」
「勿論、黙っておきますよ。」
入江直樹は絶対にその正体を見せない。
「適当にごまかしておきますから、心配なく。」
「ありがとうね。」
そして船津は帰り、直樹と琴子はそれぞれ原作本を読み始めた。

「…ひゃあっ!!」
「う、うそぉ!!」
「あ、そんな…ちょっと!!」

数分も経たないうちに、琴子がソファの上で悲鳴を上げ始める。
直樹が見ると、琴子の顔は真っ赤になっている。

「こ、こんなお話を入江くんがマンガにするの…。」
「するんだよ。」
今度は本の背表紙を琴子のつむじにぶつける。
そして直樹は本を手に立ち上がった。

「どこへ行くの?」
「お前がうるさいから向こうで読む。集中できねえ。」
「あ、ごめん…。」
直樹は仕事場兼寝室へと入ってしまった。



「本当にあなたって編集失格ね。」
話を一通り聞いた同僚の松本裕子が、呆れ果てた。
「それで?原作本は読んだの?」
「うん…でも…あんなすごい話を入江先生が描くなんて…。」
話の内容を思い出して、琴子はまた顔を真っ赤にした。

「まったく。あの小説は品川真里奈の作品の中でも、かなりあっさりとしている方なのよ?」
「え?そうなの!」
「ええ。他の話なんてすごいわよ。とても別ぺ系列の雑誌では掲載できないわ。」
「あれよりすごいんだ…。」
琴子は頬杖をついて考え込んでしまった。

「でももうちょっと優しくしてくれてもいいのに。」
「入江先生?」
琴子は頷いた。
「お前がうるさいとか、最近ちょっと神経質なんだよね。」
「メタボ親父が?」
松本は直樹のことを「メタボで腹が出ている高齢者」と思い込んでいる。

「話を聞く限り、メタボ親父はあなたにゾッコンだったのにねえ。」
「ゾッコンかどうかは分からないけど。」
「若い女の肢体にのめりこんでいたくせに。」
「し、死体?」
「肢体。」
松本は指でその字を綴った。
何だかいやらしい響きだと琴子は思う。

「まあ、それだけ気が張っているんでしょうねえ。」
「入江先生が?」
「そりゃそうよ。創刊号のメインですもの。MAXがこけたら入江先生の責任になっちゃうわ。」
「そんな!」
「私たちだって先生に責任を押し付けるつもりはないわよ。だからこそ、真剣に向かわないと。」
「あたしって編集として失格?」
「…いつ地コレに飛ばされてもおかしくないとは思うけれど?」
地コレとは『季刊・地蔵コレクション』という、散米社の社員も知らないような地味な雑誌である。



「…というわけで、しばらく別居しましょう。」
その日、家に帰るなり琴子は荷造りを始めた。
突然の琴子の宣言に、直樹は戸惑う。

「何で?」
「MAXに向けて、あたしも編集として真剣に仕事に向き合いたいの。」
「で?」
「入江くんだってメインとして気合を入れたいでしょう?一緒に暮らしていると、なあなあになっちゃう。」
「今更。」
「MAXの仕事が終わるまで、あたしは一編集。入江くん…入江先生は作家さん。それ以外の関係は忘れましょう。その方がお互い仕事に集中できていいものを作り上げることができるはず!」
琴子はぎゅうぎゅうに着替えを詰め込んだキャリーケースを引きずって、「じゃあね」と玄関に向かう。

「琴子。」
出て行こうとした琴子を直樹が呼び止める。
「なあに?」
「…やっぱりお前、編集失格。」
「なっ!!」
「それじゃあ、お元気で。編集の“相原さん”。」
直樹は手を振る。
「せ、先生もちゃんと仕事して下さいね!!」
直樹の態度の変貌ぶりに怒りを露わして、琴子は玄関のドアを音を立てて閉めた。



「…ですから西垣先生。別ぺは女性の胸の先を描くのは厳禁なんです。対象年齢を考えて下さい。」
隣で眉をしかめて電話をかけている松本の様子を、琴子はじっと観察していた。
「ああ、もう!どうして分からないのかしら!」
電話を終えた後、ぐったりと机に伏せる松本。

「さっきの話、どういう意味?」
「はあ?」
松本は琴子をうんざりとした表情で見る。
「…ああ、そうだったわね。ナオキンはそんな心配の要らない作品だったものね。」
松本は琴子の担当作品を思い出す。
「まあ、今度の品川作品には必要な事項だから教えておくわ。」
「お願い。」
琴子は手帳にメモの準備をした。

「いい?別ぺは女子中高生対象でしょう?」
「うん、それは知ってる。」
「当然、増刊号とかも対象年齢は同じ。つまり女子中高生が見てもOKな表現方法を守らないとだめ。」
「うん。」
「まあベッドシーンくらいは許容範囲ね。最近の女子中高生は進んでいるから。」
「べ、ベッドシーン…。」
琴子の顔が赤くなった。
「ちょっと、これくらいで照れないでちょうだい!私まで恥ずかしいじゃないの!」
「あ、ごめん…。」
まったく、これが本当に結婚している人間の態度かと松本は呆れる。

「でもその表現方法は曖昧にしないとだめ。だからすごく詳しい描写はNG。よって胸の先を描くのもNG。」
「胸の先…って。」
「…そこまで言わないとだめ?」
「あ、大丈夫。大丈夫です。」
メモをする準備を整えているものの、琴子の手は止まったままだった。

「でも西垣先生はあんな人でしょう?すぐに露骨な表現を描こうとするの。もう手がかかって困っちゃうわ。」
はあと松本は溜息をまたついた。



松本は西垣の元に向かった。
一人残された琴子は考える。
「入江くん、そのルール知ってるのかなあ?」
もしかしたら知らないままかもしれない。
これを伝えることは、編集として大切な役目だろう。
琴子は受話器を取った。



「…はい。」
直樹の不機嫌な声が聞こえると、琴子は緊張する。
「あ、ええと…入江…です。」
「何でしょうか。」
直樹は敬語を使った。
「あの…入江先生にお伝えしたいことが。」
「何でしょうか?忙しいのでさっさとお願いします。」
とことん不機嫌な直樹。

「あの…うちの…別ぺのルールなんですが。」
「ルール?」
「ええと…その…。」
直樹の迫力に、琴子は何を言うか忘れてしまった。頭の中が真っ白になる。
確か…確か…胸関係だったような。
ああ、そうだ。あそこの話だった。
だが、どう言えばよかったか。松本はいい具合にぼかしていた記憶がある。
しかし今の琴子の頭にはその言葉が蘇らない。

「何ですか。早くお願いします。」
直樹の不機嫌さが増していく。
これ以上は引き延ばせない。

「乳首は厳禁です、入江先生!!」

琴子はそう叫ぶと、受話器をガチャリと置いた。



「先生、琴子さんは一体…。」
あまりの大声で、船津の耳にまで届いていた。
船津は顔が真っ赤である。
「…知らねえよ。」
ツーツーとしか聞こえなくなった受話器をしばらく見つめた後、直樹はガチャリと置いた。



間もなく、キャラクターの絵が直樹から送られて来た。
「…すごい。イメージ通りだ。」
ナオキンとは違うキャラがそこには描かれていた。
可愛いヒロイン。
何よりも琴子の目を引いたのは、ヒロインの相手役だった。
「かっこいい…!すごい、読者が夢中になるよ!」
目を通した琴子は感動して、受話器を取り上げた。

「…はい。」
「あ、入江です。」
「…何か?」
相変わらず直樹は冷たかった。
「あのキャラの画、ありがとうございました。」
「…仕事ですから。」
「ええと…特に直す所は…ないと思います。」
「俺が描いたんだから当然でしょう。」
「そうです…ね。」
本当はあのキャラクターたちを手離しでほめたいのだが、直樹の雰囲気に圧倒されて琴子は、それを忘れてしまった。

「ええと、これを品川先生に見せて、OKが出たら進めるということで。」
「どうぞ。」
「それじゃあ、またご連絡します。」
直樹は返事をせずに電話を切ってしまった。

「…ちゃんと仕事しているのに、何で入江くんは怒っているんだろ?」

自分がいい編集になることを、直樹も喜んでくれているはずでは。
編集らしいことをしているのに、どうしてここまで機嫌が悪いのだろうか。
琴子は不思議に思いながら、品川真里奈と打ち合わせをするための準備に取り掛かったのだった。




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