日々草子 鴛鴦文様(おしどりもんよう) 5
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水玉

Author:水玉
『イタズラなkiss』のほかには『ゴルゴ13』が好きです☆
多数あるイタキスの二次小説の中で邪魔することなく、ひっそりとマイペースで我が道をゆきつつ生息しております。
そっと見守っていただけたら嬉しいです。

※当ブログに掲載されている文章及びイラストの無断転載・使用はご遠慮下さい。

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このブログについてのお願い

当ブログは、『イタズラなkiss』の二次創作をメインとしておりますが、時折管理人の趣味や日々の出来事についての記事も書いております。

原作者様や関係各位とは一切関係ありません。

二次創作については、いわゆる原作の隙間をぬった作品もありますが、主人公以外のキャラクターをメインとしたものや オリジナルキャラクターが出てくるものもございます。

そして、原作と違った時代(平安や明治やその他の時代を舞台にしております)、異なる設定(主人公を医者と看護師じゃない職業にしております)で書いてあるものが多いですが、原作を冒涜しているつもりは全くございません。

二次創作が苦手という方及び原作のイメージと合わないと思われる方はどうぞお引き取り下さいますようお願いいたします。

コメント及びメールなどでの苦情及び批判は公開、非公開を問わず、私へ告げることはご遠慮いただけますよう、お願い申し上げます。

このブログ及び掲載されている話が嫌いだと思われたら、黙ってあなた様の中から、このサイトの存在を消去していただけますよう、お願い申し上げます。

最新記事

このお話の続きを待っていて下さるという奇特な方(がいらしたら)、ありがとうございます。
それなのに、テンポが遅くて申し訳ございません。


いい天気だった。
洗濯日和だと、お琴は庭でせっせと働いていた。

「おはようございます。」
突然声をかけられ、お琴は振り返った。
「あら、今日は早いのね。」
啓太がそこに立っていた。
啓太はいつもは昼が終わった後にやってくることになっている。
「この間聞いたお話を早くまとめた方が先生のお役に立てるかと思いまして。」
先日、直樹と共に今度の作品の参考にするために、とある大店へ話を聞きに出かけていた啓太だった。
おそらく初めての弟子らしい仕事だったため、張り切っているのだろう。
しかし、弟子としてのお琴の手伝いもおろそかにする気はないらしい。啓太は先に庭の掃除をしようと箒を手にした。

「ああ、今日はいいから。」
お琴が慌てて止めた。
「でも。」
「いいの、いいの。師匠のお手伝いの方が大事なんだから。」
ずっと自分の手伝いばかりさせていたので、お琴は啓太がやる気をなくすのではないかと心配していた。だから直樹の仕事の手伝いをさせてもらえたことを、我がことのようにお琴は嬉しいのである。

「それでは。」
他に何かあったら遠慮なく申しつけてほしいと、啓太は言い残し家の中へ入ろうとした。
「あ、啓太さん。」
「はい?」
お琴は啓太を呼び止めた。
「あのね、洗い物があったら遠慮なく持っていらっしゃいね。」
「洗い物?」
首を傾げる啓太に、
「そうよ。啓太さん、一人暮らしなんでしょう?」
とお琴が笑いかける。
啓太は鴨屋の親類筋ではあるが、今は一人暮らしだと言っていた。
「ふんどしとか。」
「ふ、ふんどし!」
啓太の顔が途端に真っ赤になった。
「ええ。遠慮なく持っていらっしゃい。」
対照的にお琴の顔は平然としている。それを見てますます啓太は赤くなった。

「だ、大丈夫です!」
「でも大変じゃないの?」
「平気ですから!」
啓太はこれ以上話をしていられないといった感じで、家の中へ慌てて入ってしまった。
「…遠慮しなくていいのに。」
お琴はクスッと笑うと、いつものように直樹のふんどしを洗い始めた。



「…あいつはどこまで世話好きなんだ。」
庭での会話は、家の中で机に向かっている直樹の耳に届いていた。
「恥じらいはないのか、恥じらいは。」
自分以外の男の物を洗うお琴に腹が立つ。
「あんなことを言われたら啓太もどうしていいかわからないだろうに。」
そして啓太にもかすかな同情を寄せる。
「…面白くねえ。」
筆を放り投げると、直樹は行儀悪くその場に寝そべった。



きれいにまとめたものを直樹に渡した後、啓太は渡辺屋に使いに出かけた。
それと入れ違いに、買い物に出ていたお琴が戻って来た。

「…何だ、大量に買い込んで来て。」
両手いっぱいに野菜やら何やらを買い込んで来たお琴に、直樹は呆れる。
「お昼ご飯ですよ。」
「よっこいしょ」とお琴は台所にそれを置いた。
「昼飯?」
いつもは朝の残りを適当に二人で食べているというのに、この量は一体何だろうかと直樹は首を傾げた。
「今日は啓太さんがいるでしょう?おいしいものを作ってあげようと思って。」
そう言ってたすき掛けをするお琴を、直樹は複雑な気持ちで見ていた。



「これは…。」
お膳を見た啓太は息をのんだ。
「遠慮しないでたくさん食べてね。」
お琴は茶碗にたっぷりと盛りつけたご飯を、啓太の前に置く。
「俺、いただいていいんでしょうか。」
「勿論よ。」
「ですが、こんなに豪華なものを…。」
啓太のお膳は、どこの料亭から仕出しを頼んだのだろうかと思うくらい見事な出来栄えであった。
それに比べて目の前の師匠夫婦のお膳は、これは食べられるのだろうかと思ってしまうようなものであった。啓太が躊躇するのは無理もなかった。

「本当にこれを食べていいんですか?」
「ええ、どうぞ。」
お琴は笑顔で啓太に勧める。
「それではいただきます。」
啓太は礼儀正しく手を合わせ、箸を取った。
まず煮物を口にする。
「うまい!」
思わずそんな感想が啓太の口から飛び出した。
魚の煮つけも汁も、上品な味わいである。
「おかみさん、料理がお上手なんですね。」
啓太はお琴を褒めた。
ぼろぼろに崩れた魚を、「おっとっと」と言いながら箸でつまんでいたお琴は、
「ううん。それは師匠が作ったのよ。」
と、とんでもないことを口にした。

「ええっ!!」
これには啓太も目を丸くする。
「せ、先生が…?」
「…実家の母親の料理を見よう見まねで作ってみただけだ。」
ガリガリと、まるで石を頬張っているような音を立てながら直樹が答える。
それを聞きながら、男の作った料理をなぜ食べているのか啓太は複雑な心境である。

「と、いうことは…。」
啓太は真っ黒な卵焼き(かろうじて黄色い部分が見えた)を口に運んでいるお琴を見た。
「あ、そう。これが私の作ったもの。」
恥ずかしさのあまり、笑うしかないお琴。

「これで師匠、お料理は初めてだなんて信じられません。」
おいしそうに食べている啓太を見て、お琴はしきりに感心する。
「私の立場って一体…。」
直樹同様、石を口に含んでいるかのような音でお琴は里芋を食べる。
「それがお前の現状だ。」
落ち込むお琴に、直樹は容赦ない。
それを見て啓太はもっと優しくしてあげればいいのにと思った。

「まあ、お前の口に合うかどうか心配だったが、どうやら大丈夫そうだな。」
「ありがとうございます。」
突然自分に話が向けられ、啓太は戸惑いつつも礼を述べる。
「啓太さん、おかわりは?」
「いただきます。」
お琴は茶碗を受け取った。

「はい、どうぞ。」
お琴に渡された茶碗をじっと啓太は見つめていた。
「どうかした?」
今日のご飯はそんなに焦がしていないはずである。
「いえ…温かいご飯なんて初めてなんで。」
啓太は茶碗から伝わる温もりをしみじみと感じていた。
「初めて?」
「はい。温かいご飯もおかずも、本当に初めてなんです。」
そう言うと啓太は「すみません」とそこで話を止めて、おいしそうにご飯を食べ始めたのだった。



「…もしかして、すごく大変な暮らしをしていたのかもしれませんね。」
その晩、お琴は書物を読んでいる直樹に話しかけた。
「誰が?」
「啓太さんですよ。」
他に一体誰がいるのだと、お琴は直樹を見る。
「だって温かいご飯が初めてだなんて。もしかしたら、お家でいじめられたりしていたのかも。」
「…妄想はほどほどにな。」
「きっとそうだわ。家族の愛情に飢えて暮らしていて。」
「…鴨屋の紹介状を持って来ていただろうが。」
「支えにしていたのは、師匠の本だけ。それで弟子入りしたのね。」
「…俺の話を聞けよ。」
「これはいい厄介払いだと、鴨屋の方が追い出して。だから一人暮らししているのね。」
「…鴨屋の人間がいい人揃いだったら、すげえ失礼なことを言ってるんだぞ、お前は。」
「可哀想な啓太さん…。」
直樹の言葉など完全に無視し、「ぐすん」と、お琴は鼻を鳴らした。

「だから師匠、私たちがたっぷりと啓太さんに愛情を注いであげましょうね。」
「愛情だあ?」
思わず直樹が振り返った。
「そうですよ。師匠と私で、啓太さんのお父様とお母様の役割をするんです。」
「俺はあんなでかい息子はいらねえ!」
「息子のように接しましょうって意味ですよ。もう、頭がいいのにそれくらい察して下さい!」
ぷんぷんとお琴は怒っている。

―― すっかりあいつに同情しやがって。

昼間、お琴が張り切って食事の支度をしようとした時にお琴の料理で啓太が腹を壊しては困ると、半ば強引な理由をつけて包丁を取り上げたのは直樹自身だった。
本音は、自分以外の男にお琴の手料理を食べさせるのが我慢できなかったのである。

「俺って独占欲が強いんだろうか…?」
「え?何か言いました?」
聞き返すお琴に直樹は、
「いや、独り言。」
と素っ気なく返すと、また書物に目をやった。

「うーん、ここが難しいなあ。」
お琴は懸命に針を動かしていた。縫っているのは直樹の着物だった。

「痛いっ!」
お琴の声に、直樹がまた振り返った。
どうやら針を指に刺したらしい。お琴の人差し指から血が滲んでいた。

「ったく、お前は。」
そう言いながら直樹はお琴の手を取ると、人差し指を自分の口に含ませた。
お琴の顔が赤く染まる。

「師匠…。」
直樹の口が指から離れた後、お琴が口を開いた。
「何だ、痛むのか?」
「…ずっと不器用だと、捨てちゃいます?」
「何をだ?」
「…私を。」
お琴は直樹を見上げる。
「あんまり何もできないお嫁さんだと、嫌になりますよね?」
心配しているお琴に、直樹の表情が和らいだ。
そのお琴を直樹は膝の上に抱き上げる。

「…弟子に夢中で俺のことなんて忘れているかと思ってたよ。」
「そんなことありませんよ!」
直樹の膝の上でお琴がむきになって叫んだ。
「私の頭の中はいつも師匠でいっぱいです。だから…。」
「だから?」
直樹はお琴の手に目をやった。お姫様育ちのその手はすっかり荒れてしまっていた。
だがお琴は「これは師匠のお世話をしている大事な証拠だから、嬉しいんです」といつも笑っている。

「…捨てないで下さいね?」
不安に溢れている目でお琴は言った。
直樹は言葉ではなく、口づけで答えたのだった。


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コメント

はい!奇特な者まず一名

水玉さん、おはようございます♪

お琴ちゃん、お弟子さんの啓太に張り切って、おかみさんの出来る事をしてあげたいのね!~ふんどしを洗うとか。。。(笑)
お琴ちゃんの無邪気さが時には怖いってことがよ~く分かりました!(爆)
そんなお琴ちゃんの気持ちが温かいものとなって、啓太にも伝わってきているようですね。

「…捨てないで下さいね?」
まあ!まあ!お琴ちゃんの可愛らしい事!いじらしい事!
そりゃ~あ直樹さん!言葉なんて要らない~~!!

☆『江戸シリーズ』の醍醐味の一つは、どんな展開で、タイトル『鴛鴦文様』に繋がって行くのか~です!
わくわく度は『江戸シリーズ』が私の中では№1です!~*^^*♪
続き!よろしくお願い致します!!~♪

はい!2人目です♪

水玉様
こちらの更新を首をなが~くしてお待ちしておりました。はい、2人目でございます~♪いえ、きっとホントは100人目くらいなんだと思いますよ、皆さんシャイだから手を挙げてないだけで(笑)
イリコトのお話しにこういう形で啓太が出てくると、普通だとちょっと構えちゃうのですけど、水玉さまの設定工夫のお蔭で、とても心穏やかに江戸の風景の中でほんわかしたイリコトを堪能出来ます。それがとても嬉しいです。
誰にでもたっぷり愛情を振りまいてしまう天性の母である琴子ちゃんに直樹がヤキモキする様子がおかしいです。また楽しみに続きお待ちしております。有難うございました。

はい!100人目です♡

私も、無い首を長~くして、お待ちしておりました。
ヤキモチ師匠の呟き、笑わずに居れません笑。
「…捨てないで下さいね?」なんて、捨てるどころか、猛獣化しそうなほど、愛おしいに決まってますもの~。うふふ。二番弟子の一人立ちが先か、「紀子さんの望み」が先に叶うか・・・って感じでしょうか笑 お琴ちゃんの本は出来そうにありませんしね笑。 今回の啓太の働きは、二人にどんなあいをもたらすのか、更新を楽しみに待っています。

はい!200人目です!

いつまでも待っております鴛鴦文様♡

おぉ…○ルゴ描いている場合じゃなかった!
最後のシーンにまたノックアウトです。

言葉はいらない…ですね!

またの更新を楽しみにしています!!!

あ~ん・・何人目だろ~

私もお待ちしておりました。

とは言うものの、急かせるつもりはないので、水玉さんのペースで更新をしてくださいね。

琴子ちゃん可愛い♪
続きが楽しみです。

あおさん、ありがとうございます!

ありがとうございます、一名様つかまえたあ!!
というわけで、一度捕獲したものは二度と離さないということで!

お琴ちゃんの無邪気さは天下一品ですから!
それが時に直樹さんを傷つけることになったりもするんですけれどね。
こんな天真爛漫なお嫁さん、そりゃあ啓太くんだって気にならないわけがない!

ベースはいつもと同じワンパターンなんですが、そこに色をつけて他の話と区別化できるように頑張ります!!

ひろりんさん、ありがとうございます!!

ありがとうございます!!
嬉しいです!!
100人…それくらいいたら、もう飛びあがっちゃうくらい嬉しいです!

今回はホンワカとしてますよね、まだ(笑)
最初穏やか、途中荒波に放り込むのが私のやり方なんですが、今回はどうなるでしょう?
でもなんだか皆さんのコメントを拝見していると、入江くんがヤキモチを妬いて爆発することを楽しみにしているような感じなので、安心できます(笑)

REEさん、ありがとうございます!!

ありがとうございます!!
もうこんなに多くて嬉しいわ♪

師匠のつぶやき、なかなか素直だったでしょう?
自覚はあるみたいなんですよね。あとはこれを抑えることができるかどうか!

捨てないでなんて言われたら、確かに野獣化しますよ!こんな可愛い奥さんだもの!

そしてお琴ちゃんの本は出そうにもない(笑)
確かにそうですね。
アイディア自体は悪くないと思うんですよね、ちょっと突飛なだけで。

emaさん、ありがとうございます。

ありがとうございます!!
なんか皆さんがコメントのタイトルを合わせて下さっていることがとても嬉しくて!

私もついつい、ゴルゴ入江に夢中になってしまって!
すっかりギャグの世界に入り浸ってしまっております。

まいすけさん、ありがとうございます!!

タイトルが可愛いですよ、まいすけさん!!
ありがとうございます!

私のペースでというありがたいお言葉、とても嬉しいです♪
このお話の琴子ちゃんはかなり可愛い部類に入ると、自分でも思っております♪

拍手コメント、ありがとうございます!

名無しさん
待っていて下さって、ありがとうございます♪

佑さん
この頃はまだ、可愛い二人だったんです!
啓太くんにイライラさせられても、まだ入江くんは余裕があった…(笑)

まあちさん
そりゃあ色々想像もしちゃいますよ!
温かい料理が初めてなんて言われたら、どんな生活を送ってきたのか、琴子ちゃんじゃなくとも心配になりますもん。
プロ級の入江くんの手料理を食べられて、啓太くんは幸せですよね。
でも彼にとっては琴子ちゃんの手料理の方が食べたかったんだろうな。

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