日々草子 鴛鴦文様(おしどりもんよう) 2
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水玉

Author:水玉
『イタズラなkiss』のほかには『ゴルゴ13』が好きです☆
多数あるイタキスの二次小説の中で邪魔することなく、ひっそりとマイペースで我が道をゆきつつ生息しております。
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当ブログは、『イタズラなkiss』の二次創作をメインとしておりますが、時折管理人の趣味や日々の出来事についての記事も書いております。

原作者様や関係各位とは一切関係ありません。

二次創作については、いわゆる原作の隙間をぬった作品もありますが、主人公以外のキャラクターをメインとしたものや オリジナルキャラクターが出てくるものもございます。

そして、原作と違った時代(平安や明治やその他の時代を舞台にしております)、異なる設定(主人公を医者と看護師じゃない職業にしております)で書いてあるものが多いですが、原作を冒涜しているつもりは全くございません。

二次創作が苦手という方及び原作のイメージと合わないと思われる方はどうぞお引き取り下さいますようお願いいたします。

コメント及びメールなどでの苦情及び批判は公開、非公開を問わず、私へ告げることはご遠慮いただけますよう、お願い申し上げます。

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久しぶりに直樹とお琴は、入江家に泊まりに来ていた。

「義父上様、後でお腰を揉みますね。」
「お琴ちゃんの揉み方はなかなかうまいからなあ。」
嫁に優しくされて、重樹の頬が緩む。
「…按摩以外にも上達すべきことがあるとは思うけど。」
相変わらず切れていないたくあんを箸でつまむのは直樹の弟、裕樹だった。
「これ、裕樹。」
そしてその裕樹をたしなめるのは姑の紀子である。
「お琴ちゃんは兄上様のお世話と作家修業の両立で忙しいんですよ。」
「その修業は全く進歩してねえけどな。」
ボソッとつぶやいたのは直樹だった。

「ところで、直樹。」
お琴が淹れた食後のお茶を味わいながら重樹が訊ねた。
「お琴ちゃんとの祝言はどうするのかい?」
「祝言ですか?」
直樹が少し困った表情を浮かべたことを、お琴は見逃さなかった。
「もしお前たちにその気があるのなら、こちらで全部支度をしてもいいと思っているが。」
紀子が重樹の隣で頷く。
「そうですよ。いくらもう夫婦として暮らしているからとはいえ、お琴ちゃんだって一生に一度の白無垢を着たいでしょうし。」
「そうですね…。」
「そんな!祝言なんていいんです。」
返事に困っている直樹を助けたのは、お琴だった。

「あれは形式だけですよね?私は身も心も師匠のお嫁さんになっていますから、祝言なんていいんです。」
重樹と紀子の気持ちだけをありがたく受け取っておくと、お琴は笑った。

「…お琴ちゃんのお父上に正式にお許しをいただいたわけじゃありませんものね。」
紀子は溜息をつく。
大名家を飛び出してきたお琴には、実家から何の連絡も来ていない。
お琴の父親からも許すも許さないも言ってきていないのが現状であり、入江家にとっての唯一の不安材料となっている。

このような状況だからこそ、いっそ祝言をあげてしまえばお琴の実家、相原家は何も手出しができなくなるのではと思って切り出してみたが、当のお琴本人がその気じゃないのだからこれ以上話を進めることは難しい。


「どうやったらお父上にお許しが頂けるかしら?」
「そうだなあ。」
重樹も腕を組んで考え込んだ。
「いいんです、義父上様、義母上様。私はもう実家を捨てた身ですから。」
悩む舅姑を安心させようと、お琴は笑ってみせる。

「そうだわ!」
紀子が手を叩いた。
「お琴ちゃんがちゃんと作家修業もしていることをお知らせしたらどうかしら?」
「おお、それはいいかもしれない。」
重樹も妻の意見に同意する。
「お琴ちゃんが書いたものを相原家にお届けしたら、お殿様も前向きに考えてくださるかもしれない。」
「そうですわ。娘がどんな暮らしをしているかがやはり一番心配ですもの。きちんとしたものを書いて落ち着いて暮らしていると知ったらきっと気も…。」
「それはやめておいた方が無難でしょう。」
乗り気の両親の口を止めたのは、直樹だった。

「…こいつは全然上達していません。お殿様のお目にかけるなんて無理です。」
「師匠、ひどい…。」
冷たい直樹を、お琴はじとっと見上げている。

あんなものを娘が書いたなんて知ったら、絶対に連れ戻しにやってくるに違いない。
直樹は内心そう思っていた。



「お琴、起きてるか?」
枕を並べて二人は床についていた。
「はい。」
お琴は起きていた。
「どうかしました?枕が変わって眠れないとか?」
「違うよ。」
直樹は笑った。

「…白無垢、着たいか?」
少し間をおいた後、直樹は訊ねた。
両親の手前ではあのような会話になったものの、お琴の本心はどうなのだろうかと直樹は気になっていたのである。

「…いいえ。」
お琴の返事が返って来た。その声には屈託はなかった。
「ここには俺しかいないから、もう気を遣わずに本音を言っていいんだぞ?」
お琴があの時、気を遣っていた事は直樹も気が付いていた。

「私は、こうやって師匠のお傍にいられて、義父上様や義母上様、裕樹さんに家族として迎え入れていただけるだけで、十分幸せです。」
「本当に?」
「本当ですよ、もう師匠は疑い深いんだから。」
お琴はクスッと笑った。
それを聞いて、直樹もどこか安心する。

「悪いな。」
また少し間を空け、直樹が口を開いた。
「何がですか?」
「…俺が不甲斐ないばっかりに、気を遣わせて。」

物語のように大名家へ乗り込んでお琴を嫁にほしいと宣言できればと何度直樹は思ったか。
しかし現実はそうはいかない。
そのようなことをしたら、自分だけではなく入江家全体にも影響を及ぼしてしまう。
下手すればお家断絶だ。

「もう、師匠は!」
お琴はまた笑った。
「いいんですって。私はずっと師匠のふんどしを洗っていられれば幸せなんですから。」
「欲のない奴。」
直樹もつられて笑った。

「おいで。」
直樹が体をずらして、布団の中にお琴が入る場所を空ける。
「え?だって師匠、ご実家ですよ?」
これにはお琴が目を丸くした。
「別にどこだって夫婦なんだから構うことないさ。」
「でも…。」
「さっきお前が言ったんだろ?枕が変わったせいで眠れないのかって。」
「違うって言ったでしょう?」
「いや、やっぱりそうだった。」
直樹は空けた場所をポンポンと叩いた。
「いつも腕の中にいる奴がいないと眠れない。」
「もう…。」
困った顔をしつつ、お琴はするりと直樹の隣に潜り込んだのだった。




渡辺屋が直樹の家を訪れたのは、それから十日ほど経った頃だった。
「すみません、師匠は今出かけていて。」
まだ作品を出す日まで余裕があるので、直樹は裕樹の馬術の稽古をつけに出かけていたのだった。
「そろそろ戻ると思いますから。」
「ああ、気にしないで。」
そう言う渡辺屋はいつもの優しい笑顔である。が、どこか様子がおかしい。

「渡辺屋さん?」
「あ、そうだ。忘れてた、これ、いつものお団子。あと今日はおまけにお煎餅も。」
いつもは家に入ったらすぐに渡すいつものお団子とお煎餅を渡辺屋は、思い出したようにお琴に渡した。

「どこか具合でも?」
心配するお琴。
「いや、そうじゃなくてね…。」
渡辺屋は意を決した。

「あのさ、お琴ちゃん。」

「はい?」
「実は…入江に弟子入り希望がいてね。」
言いにくそうに渡辺屋は切り出した。
「弟子入り希望?」
途端にお琴の顔に不安がよぎった。
直樹と夫婦同然になったとはいえ、お琴自身は今でも直樹の一番弟子のつもりでいる。

「その方は女の方でしょうか…?」
お琴は不安の色を浮かべて尋ねる。
「あ、いや。違うよ。男だ。」
「男の方ですか。」
渡辺屋の答えに、お琴は胸を撫で下ろした。

何といっても直樹は男前である。
今でも外を歩いたら、隣にお琴がいるにもかかわらず若い女たちが歓声を上げる。
そんな直樹の元に女の弟子がやってきたら、何一つ満足にこなせない自分は途端にお払い箱になってしまうのではないかと、お琴は心配したのだった。

「入江が弟子を取らないのはよく分かっているんだ。でも、その弟子入りしたいって人間はちょっと俺も無下にできない間柄で。」
「お知り合いなんですか?」
「うん、商売上大事な付き合いの家の親類筋なんだ。」
「まあ。」
それは渡辺屋も簡単に断ることはできないだろう。
お琴は渡辺屋の心情を思いやった。

「入江が嫌がることは目に見えているしなあ。」
渡辺屋は本当に困った様子で頭を抱えている。
お琴はそんな渡辺屋を気の毒に思った。

渡辺屋は直樹の親友でもあり、大事な商売相手でもある。
自分も本当に世話になった。
渡辺屋の祖母も、今でもお琴を家に招いて孫のように可愛がってくれている。

「分かりました、渡辺屋さん。」
お琴が胸を叩いた。
「私から師匠にお願いしてみます。」
「お琴ちゃんが?」
渡辺屋が顔を上げた。
「ええ。」
お琴は頷く。
「だって渡辺屋さんがこんなに困っているんだもの。私も何か力になりたいです。」
「お琴ちゃん…。」
渡辺屋にはお琴が眩しく見えた。

「ありがとう、お琴ちゃん。」
思わずお琴の手を取る渡辺屋。
「安心して下さい、渡辺屋さん。」
にっこりと笑うお琴。

その二人の手の上に、

スパッ!!!

という衝撃が走った。

「痛い!!」
「何、かまいたち!?」
お琴と渡辺屋は辺りを見回す。

「何が安心して、だ?」
その声は二人の頭上から降ってきた。

「い、入江!」
「何、俺のいない間に二人で話を勝手に進めてやがる。」
直樹は右手をひらひらさせて、二人を見下ろしていた。

衝撃の正体は、直樹の手刀だったのである。


「わ、悪い、入江。」
渡辺屋は自分の失敗に気がついた。
直樹が嫉妬深いことは知っていたつもりなのに、ついお琴の手を握ってしまっていたのである。

「もう、師匠!乱暴なことはしないでください。ちゃんと私の手は洗ってありますから、きれいですよ。」
お琴は頬を膨らませた。
どうやら、汚い手で親友の手を触ったのではということを直樹が心配していると勘違いしているようである。

「渡辺屋。」
直樹は座った。
「俺は弟子を取らないって前から言っておいたよな?」
「ああ、聞いている。」
「それでこんな話を持ちかけて、どういうつもりだ?」
お琴はお茶を淹れに台所に立っていた。
「俺はこの間、言ったはずだ。これ以上忙しくなってお琴を構ってやれなくなるのが困るって。」
「確かに。本当に悪い!!」
渡辺屋は手を合わせた。
「それに、男の弟子は断るとも言っておいたはずだ。」
お琴がこの家に来てから、直樹は渡辺屋以外の男は家に入れるつもりはなかった。
万が一、何かお琴の身に起きたら困るからである。

「そこは大丈夫。ちゃんとした男だから。学問もそれなりに身につけているし、礼儀作法も。何といっても、あの鴨屋の親類筋なんだ。」
「鴨屋さんって、あの大店の!?」
お茶を運んできたお琴が叫んだ。
「紙問屋の鴨屋さんですよね。日本橋に大店を構えている鴨屋さん。」
「そう、そこだよ、お琴ちゃん。」
直樹はなるほどと思った。
紙問屋と地本問屋は付き合いが深い。
渡辺屋もかなりの大店であるから、同じ大店の紙問屋の鴨屋と取引があることは容易に想像がついた。
そこからぜひにと頼まれたら、渡辺屋も断りきれないだろう。

「…しょうがねえな、まったく。」
直樹は渋々ながら、取りあえず一度その弟子入り希望者に会うことだけは受け入れた。

「よかった!恩に着るよ、入江!!」
渡辺屋は涙を流さんばかりに喜んだ。
「よかったですね、渡辺屋さん。」
お琴も喜んでいる。
そして渡辺屋の手土産のお団子とお煎餅を出した。
「おいしいお団子と、今日はお煎餅も持ってきて下さって。」
「お前…こんなもんで釣られたのか?」
「何のことです?」
お煎餅をいい音を立てて食べるお琴を、直樹は呆れた眼差しで見ていたのだった。
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コメント

鴨か・・・

今日も、お琴ちゃん、カワイイっ!
直樹のヤキモチもお馴染みだし?笑
弟子に鴨・・・う~む、心配!!
たまには、直樹にも、最初から嫉妬心剥き出しで、お琴ちゃんにアマアマになって欲しいものです。ははは・・・無理か・・・直樹じゃなくなっちゃいますよね、やっぱり・・・笑
あちらもこちらも、何かとお忙しいと思いますが、続きを楽しみに、のんびり待ってま~す。

鴨屋ですかぁ。これは何か起こること間違いなしですね。

続きを楽しみににしています。

REEさん、ありがとうございます。

最初から嫉妬心むき出し…それは私も見てみたい!!
いえいえ、そういう読んでみたい話を書くのが二次の醍醐味じゃないかと、私は思っております。
いつか書けたらいいのですが。
ゴルゴ入江にもコメントありがとうございました!!
何か一人突っ走っているのでちょっと不安だったのですが…嬉しかったです!!
軽いタッチなので簡単に書けちゃうので、まだ続ける予定です。

みほさん、ありがとうございます。

他に名前考えたんですけどねえ(笑)
でもイリコトを揺るがす人間としては、沙穂子さんと啓太くんのツートップは永遠に変わらないと思うのは私だけでしょうか?
やはりこの二人を出すと自分のテンションもだいぶ変わります。

拍手コメントありがとうございます。

拍手コメントありがとうございます。

Foxさん
私も大蛇森先生を出したいところなんですが(笑)
でも彼はどんなに好き勝手に想像しても、絶対入江くんをねらいそうなんですよ。
それに大蛇森先生も好きだから(笑)、琴子ちゃんに振られるのはちょっと可哀想な気も…(笑)
祝言をあげずとも、二人は夫婦として暮らしているんだからそれでいいような気もしますが、入江家(含む入江くん)はお琴ちゃんの白無垢姿を純粋に見たいんでしょうね~。

あけみさん
鴨という文字を見ただけで、そこまで考えて下さるとは(笑)
確かに私もそれを狙って書きました(笑)
今回はそんなに嵐が吹き荒れる予定はない(と思います)。
入江くんが簡単に断れない設定にしましたよ~。
だって入江くん、頭いいからあの手この手で断りそうですもん。

るんるんさん
「新弟子希望者」っていう文字を見たら、相撲の新弟子希望者を想像してしまいました(笑)
何だか啓太くんもそれでちょっとぷっくりなイメージが(笑)
新弟子、これから何をしでかすのか、その辺も楽しんで頂けたらいいなと思っております。

まあちさん
入江くんは場所にこだわらないんですよ(笑)
もうお琴ちゃんが可愛いと思ったら、すぐに…と、まるで発情期の動物のようですが(笑)
鴨屋の出現で、甘甘な入江くんがどう変化するか。でもそんなに変化しないとは思いますけれど(笑)
琴子ちゃんの天然っぷりが一番の爆弾であることは間違いないですよね。

佑さん
ペンペン読み返してくれたんですね。ありがとうございます。
ペンペンととんぶりとの寄せ集めみたいな話になりつつありますが…そこは書いている人間が私なのでしょうがないなということで(笑)
そういやペンペン&直琴軒もしばらく書いていないなあ…。

ぴくもんさん
よく、おとぎ話の続きってどうなったのかって思うじゃないですか?
シンデレラは突然違う環境で戸惑わなかったのかとか、姑とうまくいったのかとか(笑)
「めでたし~」の続きも、ちょっと書いてみたかったんです。
お琴ちゃんは家を飛び出したままですしね。
結婚を許可する、しないも言われてませんし。
憶測だけで前回は終わってしまったので。
その辺も書けたらいいなあと思っています。
そして拍手!!ぴくもんさんのところも楽しいです!さっきのぞいたら③が更新されていたので、ゆっくりと読みに行こうと思ってます♪
うちの拍手に気づいて下さってありがとうございます。
なんか趣味全開なので、気づかれているのか、気づかれていても気づかないふりをされているのか…(笑)


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