日々草子 楽器の名は、琴子

楽器の名は、琴子

「外科医は指が命だ。」
珍しく、普通のことを話している。
「そして、男も指が命だ。」
結局そこか。このパターンにもいい加減慣れてきた。
「指先で女性を奏でる。どれだけ素晴らしい音色を出せるか。そこが男の腕の見せ所だ。」

実は俺は最近、新聞で“医師、逮捕”という見出しを見る度に、容疑者の名前が“西垣”になっていないかを確認する癖がついた。
もちろん、テレビのニュースでも同様だ。アナウンサーが“医師が逮捕され…”と原稿を読み上げると、西垣先生の写真が映し出されるのではないかと確認してしまう。
なぜなら、この人ならあり得ない話ではないからだ。

「自慢じゃないけれど、僕の指では何人もの女から、素晴らしい音色を引き出した。」
そう言って、西垣先生は俺の目の高さに両手を掲げ、10本の指を動かし、ピアノだか何かを弾く真似をした。…もはやその手つきが終わっている。
「良かったら、琴子ちゃんも奏でてあげようか?」
その瞬間、俺は西垣先生の眼鏡をサッと外し、遠く離れた机の上に放り投げた。
「あれ?急にぼやけたな。眼鏡は…?」
…眼鏡かけている人から、眼鏡を取ると、本当に漫画みたいな動きをするんだな。
俺はそんなことを思いながら西垣先生を見ていた。
西垣先生は、コントみたいに両手を動かしながら、眼鏡を探している。
そのうち、誰かが入ってきて、眼鏡を渡してくれるだろう。

「入江くんの指ってきれいね。」
その夜、ベッドに入り、何となしに俺が自分の指を見ていると、隣に潜り込んできた琴子が話しかけてきた。
「手術の度に、洗うからな。」
「そっか。」

“指先で女性を奏でる”。あの言葉が俺の中に蘇った…。
「…なあ?」
「何?」
「…いい音色を聴いてみないか?」
琴子は俺の言葉の意味が分かっていない。不思議そうな表情を見せた…。

そして、俺は仰向けになり、両手をかざしてみた。
隣で眠っている琴子の顔を見る限り、俺の演奏もなかなかのものではないだろうか…?
ただ、西垣先生は一つ忘れていることがある。
確かに、素晴らしい音色を奏でる為には、演奏家の腕も重要だ。
しかし、演奏家を満足させる“楽器”も重要だということを彼は知らない。
名演奏家は、楽器を選ばずとも素晴らしい演奏をするとは言う。
だけど、素晴らしい楽器があるに越したことはないだろう。

俺は手のひらで琴子の頬を優しく撫で、そして人差し指で唇をなぞってみる。

俺が奏でる名器は琴子だけでいいし、琴子が素晴らしい音色を出すのも俺の演奏だけで十分だ…。

☆あとがき
どの口が三つで終わりとか言ったんでしょうかね(笑)
何気にやみつきになってしまったみたいです。
でも風邪薬ミラクル時の話には遠く及ばない(笑)
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