2011'06.18 (Sat)

After Party

更新もないのに、足を運んで下さる皆様、本当にありがとうございます。

副部長の大活躍に部長、すっかり興奮してしまって!!
そして副部長の書かれたティーパーティーに出てきたマカロンが頭から離れなかったことで、許可を頂いてこのようなものを書いてしまいました!

私は副部長のように優しくはありませんから(笑)
副部長は「拍手ボタンを押しただけで部員」と言っていましたが、私は「つづきを読む」ボタンを押したらもう部員に認定しますので!!携帯の方はタイトルを押しただけで部員ですから!!
もちろん、退部は認めません!

それでは、すでに部員の方も部員になりたい方も、こちらからどうぞ。



【More】





「いいか、お前ら!!!」
ただでさえ狭い斗南大学アニメ部の部室。
そこを更に暑苦しくさせるような声が響いている。

その声の主はアニメ部OBの矢野。
彼はれっきとした社会人なのだが、なぜかこうして平日に姿を見せることが多い。
きちんと仕事をしているのか、いや、この男がいない方が仕事がはかどるのだろう。

そしてその彼の背後の黒板に、これまた下手な字で大きく書き殴られている文字。

『ドン入江 抹茶計画』

…彼らがカフェなんておしゃれなものを開こうと思っているわけではない。
本当は『抹殺計画』と書くべきところを、字を間違えているのである。
しかし、ここにはその誤字を訂正する人間は誰もいない。

「今度こそ、あいつの息の根を止めるぞ!!」
「おお!!」
矢野に合わせ、拳を突き出す青木、黄原である。

「おいっ!!!」
そこへ現れたのは、もう一人の部員、白山だった。
「何だよ、白山。遅いじゃねえか。」
矢野は遅れてやってきた白山を睨んだ。
「今ドンの息の根を止める計画を…。」
「それどころじゃないんです、矢野さん!」
白山は敬愛する先輩の声を遮った。
「い、今、これがそこに置かれていて!!」
そして白山が差し出したのは…。

『アフタヌーンティーパーティーへのご招待』
という、矢野の黒板の文字とは正反対の美しい飾り文字が書かれたカードだった。
しかもその宛名は…。

「い、入江直樹、琴子!?」
「ドンとコトリン!?」

信じられないことに、差出人には今抹殺計画を考えている直樹と、その妻琴子の名前が並んでいたのである ――。



「どういうことでしょうかね?」
「ドンの新たな罠では?」
青木たちが矢野を不安そうに見た。
「ドンがわざわざ、こんな手の込んだことをしてくるかなあ?」
「確かに。あいつだったら“こんなくだらないもんに時間を割く暇はねえ!”とこんな目で言うよ。」
青木が直樹の真似をするかのように、自分の目を吊り上げる。

「ドンも結婚して変わったってことだろう。」
矢野の出した結論に青木たちが驚く。
「そ、それじゃあ…。」
「コトリンを世に出した俺たちに感謝の念を抱き始めたんだろう。」
「ドンが!?」
「きっとこのパーティーで俺たちと和睦するつもりだ。」
「和睦!!」
矢野はカードを取り上げ、今日もガサガサに荒れている唇をベロリと舐めた。
「これからは、家族ぐるみでアニメ部と交流したいという奴の意思表示だ!」
「おお!!」

こうして、どこをどう考えたらそう考えられるのかという位、前向き、いや自分に都合よく考えたオタク部の連中は入江家へと向ったのだった ――。



**********

帰宅した直樹は、リビングの中から聞こえる声に足を止めた。
「本当にいいんですか?お手伝いしなくて。」
琴子の声である。
「ええ。私一人で大丈夫だから。」
そして相手は紀子だった。
「ただいま。」
何事だろうかと思いながら、直樹はリビングに入る。

「あ、ちょうどよかった!!お兄ちゃん、明日は暇でしょ?」
紀子が目を輝かせて直樹を見る。
「何か?」
ろくなことじゃないだろうと警戒しながら、直樹は紀子に訊ねる。
「明日はお休みだし、琴子ちゃんと二人でお出かけしていらっしゃいよ!」
「はあ?」
突然何を言い出すのかと、直樹は呆れた声を出した。
「でも、お義母さん…。」
不思議なことに、いつもならそう言われて大喜びするはずの琴子があまり乗り気ではない。
「ほら、ね!新婚さんなんだから、デートしないと!」
「でもお義母さん、パーティーのお手伝いはいいんですか?」
「パーティー?」
明日そのようなことがあるなど、直樹には初耳だった。
どうやら琴子はそれを手伝いたいと主張しているらしい。
「だってお嫁さんですよ、あたし?」
一応、琴子なりに嫁としての立場を考えているらしい。
「いいの、いいの。大したパーティーじゃないから私一人で平気よ。」
紀子は手を振る。

―― おかしい…。

その紀子の様子に直樹はただならぬものを感じた。
いつもだったら、琴子を自分の可愛い嫁だと紹介したがるのが紀子である。
近所の山本夫妻にだって意気揚々と「我が家のお嫁さん」とこの間も紹介していたというのに。
パーティーという大舞台でそれをしないなど、おかしい。

「琴子ちゃんにはちゃんとお嫁さんらしいことをしてもらったもの。ほら!」
そう言って見せたものは、色とりどりのマカロンだった。
「琴子ちゃんがちゃんと選んでくれた、なんておいしそうなマカロン!」
紀子はマカロンに目を細める。
「お客様に喜んでもらいたいと、一生懸命選びました。」
琴子は褒められて満更でもない。
きっと店であれでもない、これでもないと迷いに迷ったのだろうと直樹は想像する。

結局、紀子の強い勧めに負け、明日は琴子は直樹と映画を見に行くことになった。



***************


「ふう…。」
苦痛に苦痛の監禁パーティーから戻ったアニメ部の面々は、どっと疲れを感じていた。
連中が今いる場所は矢野のアパートである。

パーティーは直樹の母、紀子のペースだった。
「散々くだらない映像を見せられて…。」
「挙句の果てにはドンに追い出され…。」
「しかもパーティーだってのに、お茶も口にできず。」
「一体俺ら、何しに行ったんだ?」
矢野、青木、白山、黄原は「はあ」と盛大な溜息をつく。
その大きな溜息のため、矢野の狭い部屋には二酸化炭素が充満した。


「…腹減った。」
青木が最近ますます出っ張っている腹に手をやる。
パーティーだというのに、何一つ食べることができなかった。
「あのお菓子、見たこともなかったのに…。」
「どんな味だったんだろう。」
彼らの脳裏には、テーブルに並んでいたカラフルなマカロンが浮かんでいる。

「フフフ…。」
その時、不気味な笑い声が狭い部屋に響いた。
「どうした、黄原?」
笑っていたのは黄原である。青木たちが怪訝な顔を向けた。
「ジャジャジャジャーン!!」
少し裏返った声を発しながら黄原が取り出した物は、皺だらけのティッシュにくるまれたものだった。

中から出て来たのは…あのマカロンである。

「どうした、これ!!」
「隙を見て、こっそりと持ってきたんだよ!」
いつもは目立たない黄原が胸を張って見せた。
かなりの数のマカロンである。

「すげえ、よくやった!!」
黄原の肩を叩く矢野。
「さ、矢野さんからどうぞ!!」
黄原は後輩らしく矢野にまず勧めた。
「いいのか?お前が持って来てくれたのに…。」
矢野がらしからぬ遠慮を見せる。
「いいんです、いいんです。さあ!」
「それじゃあ、せっかくだから。」
矢野は一つ手に取り、そしてそれを分厚い唇の中へと押し込んだ。

「どうです?矢野さん?」
青木が感想を求める。
「ムフフフフフッ!!!」
矢野の顔に笑顔が広がった。

「おお!!矢野スマイル!!」
「矢野スマイルが出ました!!」
後輩たちが興奮する。
某イタリアンシェフのスマイルには程遠い、このオタクスマイルの不気味さ。

しかし、その直後 ――。

「ムゥッ…?」
矢野の顔が醜く歪み始めた。
醜い笑顔が、更に醜いものへと変貌を遂げ始める。
「や、矢野さん?」
「どうしました?」
先程まであんなに機嫌がよかったのにと、青木たちは顔を見合わせる。

そして青木たちは手にしていたマカロンを各々の口に放り込んでしまった。
矢野の顔を見て、異変が起きていることが分かっているのに。普通なら食べないのに、食べてしまうのはこの連中の愚かさ所以であろう。

「ヒィィィィィッ!!!」
「オォォォォォッ!!!」
忽ち断末魔の叫びとも思える声が、狭いアパートに響き渡った。
そして喉をかきむしり始める面々。

「な、何だ!!これは!!」
「水!!水はどこだ!!」
ヒーヒー叫びながら、冷蔵庫を開ける連中。一人は水道の蛇口に直接口をつけ、水を飲み始める。

「何が入ってるんだ、この辛さは!!!!!」

マカロンは…激辛だった。

おんぼろアパートの一室は一晩中、阿鼻叫喚図が展開されることとなった…。



**********

「あたしのマカロン…あたしが選んだマカロンをあいつらが…。」
「まだ言ってるのかよ。」
こんな状況でそんなことを考えるのかと、直樹は呆れ果てていた。
どんな状況かというと、二人はベッドの中。もちろん、体には何も身につけていない。

「だって…お客様に喜んでもらおうと思って…お義母さんのお友達だと思ったから…マダムの皆さんに喜んでもらえるようにって…!!」
直樹に腕枕をしてもらっている、甘い雰囲気の中だというのに琴子はあろうことか、オタク部への恨み事を口にしている。
それだけショックだったのだろう。

その時、琴子は空腹を感じた。
「お腹すいた。」
「ったく、お前って奴はどこまで。」
「だって…。」
琴子は顔を赤らめ、直樹を恨めしそうに見る。
「…今日の入江くん…ちょっと…いつもより…。」
最後まで言えず、うつむいてしまう琴子。
それに直樹はニヤッと笑った。
「まあ、お預けくらってたし。俺も新婚だし。」
「やだ、もう!」
自分で言っておきながら、琴子は恥ずかしくなって布団の中に潜ってしまった。



「ほら。」
直樹の声に、琴子は顔を出した。
「あ、マカロン!」
驚いてガバッと起き上がる琴子。だが自分が何も身につけていないことに気がつき、慌ててまたベッドに潜る。

「これって…あたしが買ったマカロンだよね?」
箱を見て琴子は確認する。自分が昨日買って来たものだ。
「何で?あいつらに食べられたんじゃないの?」
「ほら、余計なことはいいから。」
直樹はピンクのマカロンを一つ手に取り、琴子の口へ入れた。

「おひひい(おいしい)。」
口をモゴモゴさせながら、満面の笑みを顔に浮かべる琴子。
「入江くんも食べよう!」
「俺はいいよ。」
「そんなこと言わずに!ここのお店とっても美味しくて有名なのよ?」
「ほら」と言いながら、琴子は甘さが比較的抑えられている抹茶味のマカロンを直樹の口へ入れた。

「どう?」
「…やっぱり甘い。」
顔をしかめながら感想を述べる直樹。
その直樹の傍で、琴子はマカロンを食べ続けている。

「それじゃ、食後の運動の時間だな。」
満足している琴子を琴子は押し倒した。
「え?ちょ、ちょっと!」
「ほらほら。そのまま寝ちまうと太るぞ?」
「それは嫌だけど…でも…。」
「新婚、新婚。俺たちは新婚。」
「もう、入江くんたら…。」

マカロンなど比べ物にもならないくらいの甘さに、二人の寝室は再び包まれた ――。



「食後の運動後」、ぐっすりと眠っている琴子。
その隣で直樹はレシートに眉をしかめていた。
「無駄な出費をさせやがって…。」
そのレシートには『S&C 本わさび ¥138 ×20』と印字されている。

紀子が何かを企んでいることは明らかだった。
そしてパーティーの招待客が誰か…それを知った直樹は愕然となった。
紀子が何を考えているのかは分からない。自分と琴子のビデオでも見せつけるつもりだろうか。

家の中に入られるのも我慢できないが、琴子が買って来たマカロンをあの連中を食べることが我慢できなかった。

そこで直樹は同じマカロンを買い求め、琴子が買って来た物とすり替えたのである。

「入江くん…寝ないの…?」
琴子がうっすらと目を開ける。その様子に直樹は目を細めた。
「寝るよ。」
そして直樹は華奢な琴子の体を抱きしめ、目を閉じた ――。

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