日々草子 月読みの光に来ませ 20
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プロフィール

水玉

Author:水玉
『イタズラなkiss』のほかには『ゴルゴ13』が好きです☆
多数あるイタキスの二次小説の中で邪魔することなく、ひっそりとマイペースで我が道をゆきつつ生息しております。
そっと見守っていただけたら嬉しいです。

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当ブログは、『イタズラなkiss』の二次創作をメインとしておりますが、時折管理人の趣味や日々の出来事についての記事も書いております。

原作者様や関係各位とは一切関係ありません。

二次創作については、いわゆる原作の隙間をぬった作品もありますが、主人公以外のキャラクターをメインとしたものや オリジナルキャラクターが出てくるものもございます。

そして、原作と違った時代(平安や明治やその他の時代を舞台にしております)、異なる設定(主人公を医者と看護師じゃない職業にしております)で書いてあるものが多いですが、原作を冒涜しているつもりは全くございません。

二次創作が苦手という方及び原作のイメージと合わないと思われる方はどうぞお引き取り下さいますようお願いいたします。

コメント及びメールなどでの苦情及び批判は公開、非公開を問わず、私へ告げることはご遠慮いただけますよう、お願い申し上げます。

このブログ及び掲載されている話が嫌いだと思われたら、黙ってあなた様の中から、このサイトの存在を消去していただけますよう、お願い申し上げます。

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相原大納言家と懇意にしていた僧都は、都から離れた場所にある琴子の生家よりも、更に奥深く入った場所にある寺に住んでいた。

琴子はそこを何とか尋ね当てた。

「父上様の御法事以来で…。」
琴子の姿を見て、僧都は懐かしさに涙を浮かべる。
「あの後、姫様は左大臣様のお家に迎えられたと伺いました。」
「はい。」
琴子は重樹の養女として引き取られることになった時、その経緯を伝え、両親の菩提を弔うことを僧都に文で頼んでいた。

対照的に琴子の表情は硬かった。とても再会を喜んでいる様子ではない。
懐かしさをかみしめている僧都とは正反対である。

「僧都様。」
琴子は手をついた。
「…髪を下ろしたいのです。」
「何と!!」
琴子の突然の頼みに、僧都は驚いた。
何かあったからこそ、このような場所にわざわざ一人でやって来たのだろうとは思っていたが、まさか出家をしたいとは。

「姫様は確か、左大臣様の若君とご結婚されたと伺っておりますが。」
直樹と結婚する時にも、琴子は僧都に文で知らせていた。僧都はそれを知り亡き琴子の両親へ喜んで報告したものだった。
左大臣家の若君は見目麗しく、大層優秀で帝の信任厚い人間ということは、都から離れた場所に住む僧都の耳にも届いている。

「まだお若い身空で…。」
僧都は琴子の決意を何とか止めようと必死に説得を始めた。
「いえ…もっと早く…父上様が亡くなられた時にそうすべきでございました。」
琴子は泣きながら訴える。
「私のような…身寄りのない者は、髪を下ろし仏様のお弟子になるべきでした。その方が…どれだけ幸せだったことか。」
「よろしければ、ご事情を話してみてはくれませぬか?」
僧都は理由を琴子から聞き出そうとする。余程のことがあったことは分かるが、理由くらいは知りたい。

「何もお尋ね下さいますな。どうか…どうか私の願いを聞き届けて下さいませ。」
琴子は理由を言おうとせず、そのまま泣き崩れてしまった。

僧都が困り果てていると、弟子がやってきた。
「何と!」
弟子に耳打ちされた僧都は、琴子を見る。
「姫様、少々席を外します。」
「僧都様!」
「失礼を。火急の来客が来たようですので。」
話は後ほどと僧都は言い残し、琴子を置いて部屋を出て行ってしまった。

一人取り残された琴子は所在なさげに、庭を眺める。
きちんと手入れされた庭は、ここに住む僧都の品の良さを表しているかのような見事なものだった。

「失礼致します。」
先程、僧都の元にやってきた弟子が入って来た。
「姫君様にお客様でございます。」
「私に?」
ここにいることは誰も知らないはずである。一体誰かと琴子は不安になる。
「まさか…。」
まさかとは思う。琴子はそう思いつつ、その「まさか」に備え、サッと几帳の陰に隠れた。

来客が部屋に入って来た気配が、几帳の向こうに感じられた。
「琴子。」
その声はやはり琴子が「まさか」と思っていた人物の声だった。
「…そこにいるんだろう?」
優しく懐かしい声が部屋に響く。
だが、琴子は答えないまま、几帳の陰に身を潜めていた。

高貴な人間が伴も連れずに一人馬に乗って、このような場所までやってきたことに僧都は驚いた。
だが琴子の夫だと名乗ったその貴公子を一目見て、これは本人同士で話をさせるべきだと僧都はすぐに判断し、琴子には黙って、そこへ通したのである。



「…悪かった。」
直樹は無理に几帳を取ることをせず、琴子から距離を置いて座った。
その直樹が最初に口にしたのは、琴子への素直な謝罪の言葉だった。
「…。」
琴子は黙ったままである。

「…帰ろう、琴子。」
色々言いたいことはあるが、自分でも驚くくらい当たり前のことしか口から出なかった。
「帰ろう。」
「…帰れません。」
几帳の陰から、消えるような声が聞こえた。

「なぜ?」
「…もうお兄様のお傍にいる資格がないのです、私には。」
琴子はゆっくりと話す。その声は震えていた。
琴子の返事を聞き、直樹はやはりそうかと愕然とする。が、それをここで出してはまた琴子に逃げられてしまう。

「それは気にしなくともいい。」
直樹はありったけの誠意を琴子へ見せようと努力する。
「たとえ、琴子の身に何があっても、俺の気持ちは変わらない。」
それが本音だった。
たとえ、琴子が帝と関係を持ったからといっても、もう何も怖くない。怖いことはただ一つ。琴子を失うことだけである。

「…ごめんなさい、お兄様。」
琴子の涙に震える声がまた聞こえた。
「だから謝らなくとも…。」
「いいえ。」
琴子は直樹の声を遮る。
「私は…お兄様のお役に立てなかったのです。」
「…え?」
どういう意味だろうか。直樹の胸がざわつき始めた。

「あの夜…私にできることは、主上のお子を身ごもってお兄様のお役に立つことだけだと思いました。」
琴子が静かに打ち明け始めた ――。




直樹が琴子と寺で対峙していた時。
鴨狩帝は一人部屋にいた。
「…。」
懐から取り出したのは、琴子が描いた下手な藤の花の絵がつけられた扇である。
そして帝は思いをめぐらす。



**********

あの夜、いよいよ琴子と肌を合わせようとした時、帝が琴子の腰紐を解きかけた時である。

「…です。」
か細い声が、帝の下から聞こえた。
思わず帝は解く手を止め、琴子の顔を見た。
そこには涙をあふれさせた、琴子の美しい顔があった。

「…私のことを必要だと仰せでしたら、お傍におります。」
「それはもう…。」
傍にいてほしい。帝はそう答える。
「…私に帝のお子を産めと仰せでしたら、産むよう努力いたします。」
琴子が自分の子を産んでくれるのなら…その子が男子であろうが女子であろうが嬉しいことは間違いない。そう帝は答える。
「ですが…。」
琴子は泣きながら帝に訴えた。

「主上のお傍にいても、私はいつも夫の顔を思い出します。」
「え…?」
「お傍にいて、私を可愛がって下さっても…私は夫のことを常に考えております。」
「…。」
「そしてもし、お子を産んだら…私はこの子が夫との間の子であったらといつも思うことでしょう…。」
「琴子…。」
琴子は大きな目からぼろぼろと涙を零しながら、続けた。

「そして…私は生涯を終える時…この命が尽きるその時まで…最後まで夫のことを想い…愛し続けております…。」

帝の手が琴子の腰、襟から離れた。

「それでも…それでもお傍にいろと仰られますか?そのような私でも主上はよろしいのでしょうか?」



**********

「あそこまで言われたら…もう何もできないし、言えないよな…。」
描かれた藤の花を眺め、帝はフッと笑いをもらした。
「あそこまで想われる中納言がうらやましいものだ…。」
心から帝はそう思ったのだった。



琴子と帝の間には何もなかったことを直樹は知った。
「では、なぜ朝まで戻らなかったんだ?」
あの日、琴子は明け方になるまで戻らなかった。
「主上が…それならばせめて、朝まで…添い寝をと…。」
何もしない、だからせめて朝まで傍にいてほしいと帝から懇願され、琴子は従ったのだという。
一度は身を許す気で帝の元へ向かった琴子であるが、直前になってそれを拒んでしまった。
申し訳なさと、それを許してくれた帝へのせめてもの償いの気持ちが琴子にはあったのだろう。

「ではなぜ、突然消えたんだ?」
何もなかったのであれば、琴子が直樹の前から消える理由はない。
「それは…先程も申し上げたとおり、何も役に立てなかったからです…それが辛く…。」
「そんなこと!」
直樹は何をバカなことをと思い、膝を浮かす。しかし二人の間を隔てる几帳が邪魔をしている。

「それで、あの時俺を拒んだのか?」
あの朝、今まで見たことのない険しい顔で琴子は直樹を拒んだ。
女房たちもあの時は琴子が帝にみを許したと思っていたのだろう。
「お兄様のお役に立てなかった上、一時でも…別の殿方と…。」
「しかし、何もなかった。」
何もなかったのであるから、琴子が気にすることは何もないはず。

「いいえ。」
しかし几帳の向こうからは、きつくそれを否定する声が聞こえた。
「…私はお兄様が他の女性と夜を過ごされていた時、とても辛かった。」
「それは…。」
「お兄様と誰か他の女性との間にできたお子を、私が育てなければいけないのかと思ったら…もうたまらなく苦しかった。」
「それは…言い過ぎた。」
琴子がそこまで…帝にあのようなことを話すくらい、自分を想ってくれていた。
それなのに、嫉妬のあまりに、琴子を深く傷つけてしまったこと。直樹は悔やんでも悔やみきれない。

「自分もそれが辛くてたまらなかったのに…それなのに私は他の方と…一夜を共にしようと思ってしまったのです。」
琴子も自分を責めている。

「もう私のような人間に、お兄様の傍にいる資格はありません。私は…このような辛い思いを抱えて生きるくらいなら、仏様のお弟子になることを選びたいのです。」

夜な夜な、他の女性の元を歩く直樹を思い、泣いた日々。そして帝との間を疑われ嫉妬された辛かった日々。せめて最後に直樹の役に立ちたいと決意したものの…結局帝すら傷つけてしまった。
直樹の役に立ちたいと願い、出仕したものの、それが全てを壊す元になってしまった。
自分の浅はかな考えが全て招いたこと。琴子は後悔してもしきれない。
全てに疲れ果ててしまった琴子は、出家することで俗世から別れ、心穏やかに暮らしたい。そう思ってこの寺にやってきたのである。

直樹は几帳の陰から出ている、琴子の美しく豊かな黒髪を見つめる。
その黒髪に何度も顔を埋めたし、握り締めた。
もうその日々は返って来ないのだろうか。

いや、そんなことはないはず。

直樹は顔を上げる。


「俺と暮らすのは…嫌か?」
少しの間の後、「はい」と小さな答えが戻って来た。
だがそれを聞いたからといって、それならばと思うことはできない。

「髪を下ろしてはならないのですか?」
琴子から問いかけられる。
「…ああ。髪を下ろすことは許さない。」
これが夫の権力をかざすことは直樹も知っている。
だがそれくらい言わねば、琴子の決意は翻らないだろう。

「どうしても?」
「どうしても、だ。」
あの黒髪を切り落とすことなど、直樹には許すことはできない。

「それでしたら…私はあの生まれ育った邸で暮らしてもよろしいですか?」
信じられないことに、琴子は直樹に別居を求めて来た。
髪を下ろさない代わりに、別々の家に暮らす。

「それもだめだ。」
直樹はそれも許さなかった。
「…横暴です、お兄様。」
自分でも横暴だと思う。だが直樹は何を言われても引くことはしたくない。
「せめて…同じ邸で暮らしてくれ。」
「…それが私にとって辛いことでも?」
今の琴子には、直樹と同じ屋根の下で暮らすことは辛いことであることを直樹は知り、愕然となる。

「…ああ。」
だがそれでも直樹は一緒に暮らしたかった。
「お前が俺を嫌がるのなら、別棟で俺は暮らす。寝る部屋も別だ。それならいいだろう?」
どんなに未練がましいと思われても、直樹はそれは譲れなかった。
「ただ時折、顔を見ることは許してほしい。」
また暫く間があく。

「勝手です、お兄様。」
また几帳の向こうから、直樹を非難する声が聞こえた。
「そのような勝手な方と共に暮らすなど…。」
「父上と母上が心配する。」
直樹の言葉に、琴子の様子が変わった。

「お前を引き取った父上と母上が…悲しむことになるぞ?」

これは本当に最低だと自分でも思う。
琴子は重樹と紀子に恩を感じている。かつてそれを元に直樹は琴子を傷つけかけたこともあったというのに。

「…分かりました。」
そして両親のことは、やはり琴子に胸をついたらしい。

―― 愛しているから、傍にいてほしい。

本当はそう言えたらどんなにいいだろうか。
そして…浮気などしていないことも言えたら…。
だがそれを今更言ったとしても、琴子の心に届かないのだろう。直樹はそう思い口にすることはできなかった。



寺を出て、琴子は車、直樹は馬で戻ることになった。
馬の背に揺られながら、直樹は前にもこのようなことがあったことを思い出す。
あれは確か…琴子が鴨狩帝の元へ入内することを一度は決めた時。
琴子が入内の前に、生まれ育った邸に行きたいと言い、直樹が付き添ったのだった。

―― ばあ!
あの時、琴子はおどけて車の小窓から顔を覗かせ、直樹がそれを叱りつけたものだった。

直樹は琴子が乗る車を見る。その小窓は固く閉ざされたままだった。

―― もう、あのような琴子とは二度と会えないのだろうか。

開く気配のない小窓を見つめ、直樹は胸がつぶれる思いであった。










コメントありがとうございます!
お返事ができなくて、本当に申し訳ございません。
でも本当、いつも元気の素となっております!
…というか、皆様の反応が面白くて!!(笑)

入江くんはもうちょっとお仕置きが必要だというお声もチラホラあるので…予定より少し長くなってしまっております。
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コメント

NoTitle

水玉様!はやく続きが読みたいです
なんで直樹、そこで琴子に本当のこといわないの
最後はラブラブにしてくださいね

いつも思う!

毎回 何時も思いますが、続きが読みたい’’
直樹はなぜ 素直にぶつからないのか!
直樹にお仕置きしたいけど少しでも琴子の気持ちを楽にしてあげたい。
でも、間に合ってよかった。
意地悪でも取りあえず一緒に帰れて良かった。

まずは一安心

まずは謝罪から(>_<)直樹を琴子をそして水玉さまを信じずすみませんでした。直樹は浮気してなかったんですね。そして琴子も帝と何もなくまずは一安心です。やっと心おきなく眠れます。ただ何故直樹は愛してるから一緒にいたいと言えないかなぁ。琴子が辛いのは直樹に愛されてないからだと思ってるからに違いないのに…一言直樹が言えば丸くおさまると思う。2人はどうなるんだろう。ラブラブになることを祈りたい。忙しい中の更新大変とは思います。続き楽しみに待ってます。

確かに

もう少し、お仕置きが必要だと思います。
でも早く誤解を解いてほしい。
ラブラブがみたい。
そうすると終わってしまう。
いつも楽しみにしているので
それは寂しいですぅ。
んむむむ。

更新ありがとうございます。

いいかげん本心出せ!!!

   こんばんは
 直樹は素直に何故言わない・・・腹立つなぁ・・・。パパママ持ち出して琴子繋ぎとめて・・・本心言えば琴子だってなのに・・・ 琴子に苦痛を与えるなぁ・・・。 直樹の言い方が責めてるようにしか聞こえないから・・・ 腹立つ

いつになったら!

更新有難うございます♪ 直樹いつになったら、本心を言うのかな?お仕置きも必要だけど、もうそろそろラブラブにしてほしいです!でないと、胸が苦しくて眠れません!まだ、続くのですか? もう、許してあげてください!

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