日々草子 父遠方より来る 上
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水玉

Author:水玉
『イタズラなkiss』のほかには『ゴルゴ13』が好きです☆
多数あるイタキスの二次小説の中で邪魔することなく、ひっそりとマイペースで我が道をゆきつつ生息しております。
そっと見守っていただけたら嬉しいです。

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当ブログは、『イタズラなkiss』の二次創作をメインとしておりますが、時折管理人の趣味や日々の出来事についての記事も書いております。

原作者様や関係各位とは一切関係ありません。

二次創作については、いわゆる原作の隙間をぬった作品もありますが、主人公以外のキャラクターをメインとしたものや オリジナルキャラクターが出てくるものもございます。

そして、原作と違った時代(平安や明治やその他の時代を舞台にしております)、異なる設定(主人公を医者と看護師じゃない職業にしております)で書いてあるものが多いですが、原作を冒涜しているつもりは全くございません。

二次創作が苦手という方及び原作のイメージと合わないと思われる方はどうぞお引き取り下さいますようお願いいたします。

コメント及びメールなどでの苦情及び批判は公開、非公開を問わず、私へ告げることはご遠慮いただけますよう、お願い申し上げます。

このブログ及び掲載されている話が嫌いだと思われたら、黙ってあなた様の中から、このサイトの存在を消去していただけますよう、お願い申し上げます。

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ナオキヴィッチ・イーリエ公爵のタウンハウスの玄関の呼び鈴が鳴り、執事シップはドアを開けた。
そこにいたのは、野菜を抱えた一人の農夫だった。
「ああ、裏手へまわって下さい。」
シップはただの配達だろうと思い、勝手口へと案内する。

キッチンには最近雇われたばかりのメイド、モッティがこの家の家政婦であるノーリー夫人直伝のチェリーパイに挑戦しているところだった。
「なかなか夫人のように上手に焼けないわ。」
モッティもかなりの料理の腕前なのだが、カリスマ家政婦で有名なノーリー夫人にはまだ及ばない。
そのノーリー夫人は今、公爵夫人コトリーナに付き添って病院に出かけていた。

「モッティさん、野菜が届きました。」
「あら?お野菜を届けてもらう覚えはないんだけど。」
シップの声に首を傾げながら、モッティはミトンを外し、勝手口のドアを開けた。
「どうも…。」
農夫が抱えていたのは大根、ホウレン草、じゃがいもなど見事な野菜ばかりだった。
「まあ、何て新鮮な!」
いずれも獲れたてで新鮮なことは、モッティの目に明らかだった。
これなら注文した記憶はなくとも買って損はない。もしかしたらノーリー夫人が病院へ行く途中、コトリーナ一緒に買ったのかもしれない。

「全部頂きます。おいくらかしら?」
「あ、いや。代金なんてそんな。」
農夫は手を振る。
「あら、それじゃあタダ?だめよ、おじさん。もっと儲けることに熱心にならないと。」
こんなに新鮮で、しかも量もある。きちんと代金を受け取るべきだとモッティは主張する。
「いやいや。ほんとにいらねえずら。」
農夫はどこから来たのだろうか。方言がすごいとシップとモッティは思う。
もしかしたら、田舎からはるばる運んできたのかもしれない。
「でも…。」
「いや、本当にいらねえ。食ってくれさえすりゃ、嬉しいっぺ。」
「そう?それじゃあそこまで言うのなら…。」
モッティはありがたく農夫の言葉に甘えることにした。

モッティがシップに手伝ってもらい、野菜を全てキッチンに運びこんだ後も、その農夫はそこから動かなかった。
「おじさん、ありがとうね。またいいお野菜があったら届けてくれると嬉しいわ。」
モッティがそう言っても、農夫は笑っているばかり。
「さ、そろそろ旦那様がお戻りになる時間ですので。」
シップは農夫を追い出そうとする。が、動こうとしない。

「おじさん、こちらは公爵様のお家ですので…。」
暗にこの家はお前のような者がいる場所ではないと言うシップ。
「知ってるだべさ。」
それを聞いてシップは嫌な予感を覚えた。
もしかしたら野菜で近づいて何か脅迫でもする気では…警察に連絡すべきだろうか。

「なぜ誰もいないんだ?」
キッチンに聞こえた声に、シップとモッティは振り返る。
そこは帰宅したナオキヴィッチが立っていた。
呼び鈴を鳴らしても誰も出て来ないので、ここまで様子を見に来たらしい。

「お帰りなさいませ、旦那様。」
「申し訳ございません。」
シップとモッティは頭を下げる。
「そこにいるのは…。」
ナオキヴィッチは二人の後ろにいる農夫に気がついた。
「あ、こちらは…野菜を届けてくれた気前のいい人でして。」
モッティが変な紹介をすれば、
「ほら、おじさん。早く帰ってくれ。旦那様がお戻りになった。」
と、シップは農夫を追い出しにかかる。

しかしナオキヴィッチはシップの肩を押し、農夫の前に立つ。
「申し訳ございません。すぐに追い出しますから…。」
焦るシップの傍で、ナオキヴィッチは口を開いた。
「お義父さん!」
「はい!?」
ナオキヴィッチの言葉に、シップとモッティは揃って変な声を上げた。
「お義父さん、いついらしたんですか?」
丁寧な態度を取るナオキヴィッチに向かって、その農夫はケタケタと笑った。
「朝に着いたばかりだっぺよ、ナオキヴィッチ。元気そうで安心ずら。」
その農夫はナオキヴィッチの愛妻コトリーナの父、シゲオだったのである。



「大変申し訳ございませんでした!!」
まるで午後8時44分の『水戸黄門』のワンシーンのように、床に平伏するシップとモッティ。
「いやいいずらよ。知らんかったんだからしょうがないだっぺ。」
だから頭を上げろと何度もシゲオは二人に言うのだが、二人は上げようとしない。
「奥様のお父様とは気がつかず…。」
「本当に何と失礼なことを…。」
「いやいや。こっちも名乗らなかったんだから仕方ないっぺ。」
そしてシゲオはナオキヴィッチに何とかしてくれと頼んだ。

「どう見てもお前たちが悪い。」
ナオキヴィッチは二人を叱る。
「人を見た目で判断するからこういうことになるんだ。」
「は、はい。」
「相手が誰であれ、この家を訪れる者は客人に間違いはない。見た目で判断せずきちんと迎えるのがお前たちの仕事だろう。」
「仰るとおりでございます。」
「今後は気をつけるように。」
「はい!」
二人はやっと立ち上がった。

「コトリーナは?」
「今定期検診に行っている所です。そろそろ戻るでしょう。」
「そうかそうか。」
シゲオは笑顔でうなずく。
「孫ができたって知らせをもらって、いてもたってもいられなくなってな。新鮮な野菜を食べて栄養もつけてほしかったし。」
「ありがとうございます。きっとコトリーナも喜ぶでしょう。」
そしてナオキヴィッチは、改めて紹介した。
「お義父さん、メイドのモッティです。」
「おお!どうも、コトリーナの父です。」
「よろしくお願いいたします。」
モッティは挨拶をする。
「そして執事のシップです。」
「よろしく…。」
言いかけたシップはその後が出ない。
「シップ…おめえがシップさんねえ…。」
モッティに対する愛想の良さはどこへやら、なぜかシゲオはシップに敵意を込めた眼差しを向けている。
シップは初対面のはずなのに、なぜだろうかと緊張する。
先程まではシップ達の失礼な態度を笑って許してくれていたのに…シップと名前を出した途端、シゲオの顔色が変わったのである。

―― まさか…まだ誤解が…。
ナオキヴィッチは思い出した(注:その誤解の元が何かを知りたい方は『公爵夫人の家出』を参照のこと)。

「ナオキヴィッチ、おめえ…まさか…。」
シゲオはナオキヴィッチをギロリと睨みつけた。
「…誤解ですよ、お義父さん。」
「ほんまかいのう?」
二人の間に緊張が走った。



「ただいま!」
そこに明るい声がやってきた。コトリーナが帰宅したのである。
「先生、また遅くなって…え、お父さん!」
居間に入って来たコトリーナはシゲオの姿を見て飛び上がらんばかりに驚いた。

「コトリーナ、元気そうでよかったずら!!」
「お父さん!!来てくれたの?」
二人は固く抱き合う。
「お前に食ってもらおうと、たんまりと野菜さ、持ってきた。」
「嬉しい!お父さんの野菜はここらの野菜なんかと比べ物にならんくらいおいしいもの!」
「当り前だっぺ。俺が丹精込めて育てているずら!」
ガハハハハとシゲオは誇らしげに笑った。

「お腹の子、鶴瓶は元気だっぺか?」
「鶴瓶?」
ナオキヴィッチが怪訝な顔をする。
「鶴瓶?やだ、お父さん。ジュゲムよ。ジュゲムちゃん!」
コトリーナは笑う。
「ああ、そうか、そうか。何か落語に関係した名前がついていたとは覚えていただっぺが。」
ガハハとシゲオは笑った。
「なぜ、鶴瓶…。」
ナオキヴィッチがボソッと呟くのをシップとモッティは聞く。
「…落語なら歌丸だろうが。」
「なぜ歌丸!!」
シップとモッティは心の中で同時に突っ込んだ。変なナオキヴィッチのこだわりである。

「シゲオさん、ご無沙汰しております。」
ノーリー夫人が挨拶をする。
「おおこれは奥さん!うちの娘がお世話になっております。」
シゲオはノーリー夫人にも丁寧に挨拶をする。
「本当にこの度はおめでとうございます。」
「ありがとうございます。コトリーナも母親になるとは…こいつの母親エッティーナも喜んでいることでしょう。孫の三枝の顔を見せたかった…。」
「だからジュゲムだって、お父さん!」
「ああ、そうか、そうか。どうも落語家の名前になってしまうずら。」
「もうやだ!」
笑い合うコトリーナとシゲオを眺めナオキヴィッチは、以前コトリーナが散々ダイ・ジャモリの名前を間違えていた事を思い出し、「やはり親子」と納得した。

「それにしても、モッティさんとやら。」
焼きたてのチェリーパイを切り分けるモッティはシゲオに顔を向けた。
「本当にあんた、べっぴんさんじゃのう。」
「ま、嬉しいですわ。」
ウフフと笑うモッティ。
「こげんべっぴんさんが傍におると…ナオキヴィッチは浮気せんかのう。」
「あらあら、シゲオさん、大丈夫ですわよ。」
モッティが分けたパイを配るノーリー夫人が笑う。
「ナオキヴィッチ様はコトリーナちゃんだけしか目に入りませんもの。」
「まあ、おばさまったら。」
コトリーナは両手で頬を挟みポッと赤く染めた。
「それにね、シゲオさん。」
ノーリー夫人は言った。
「モッティさんは男ですのよ。」

ガッシャーンッ!!!

シゲオの手からティーカップが落ち、テーブルの上に染みを作った。

「ま、大変!モッティさん、拭くものを!」
「は、はい!」
モッティは急いでキッチンへと走っていく。

「お父さん、どうしたの?そんなに驚くこと?」
モッティが来た時にも同じくらい驚いたことをすっかり忘れてコトリーナは笑った。

「…まずい。」
ナオキヴィッチはこの場から今すぐ逃げ出したい気分になる。
しかしそうはいかなかった ――。



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