日々草子 月読みの光に来ませ 5
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水玉

Author:水玉
『イタズラなkiss』のほかには『ゴルゴ13』が好きです☆
多数あるイタキスの二次小説の中で邪魔することなく、ひっそりとマイペースで我が道をゆきつつ生息しております。
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当ブログは、『イタズラなkiss』の二次創作をメインとしておりますが、時折管理人の趣味や日々の出来事についての記事も書いております。

原作者様や関係各位とは一切関係ありません。

二次創作については、いわゆる原作の隙間をぬった作品もありますが、主人公以外のキャラクターをメインとしたものや オリジナルキャラクターが出てくるものもございます。

そして、原作と違った時代(平安や明治やその他の時代を舞台にしております)、異なる設定(主人公を医者と看護師じゃない職業にしております)で書いてあるものが多いですが、原作を冒涜しているつもりは全くございません。

二次創作が苦手という方及び原作のイメージと合わないと思われる方はどうぞお引き取り下さいますようお願いいたします。

コメント及びメールなどでの苦情及び批判は公開、非公開を問わず、私へ告げることはご遠慮いただけますよう、お願い申し上げます。

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「家と同じように過ごしてよい」と鴨狩帝に言われた琴子であったが、だからといって本当にそのように過ごせる場所ではないのが宮中であった。
とにかくしきたりが多い。今までいかに自分が自由に過ごしていたかと琴子はつくづく思った。

そのようなしきたりを色々教わりながら、あっというまに七日ほど過ぎた。
その間、鴨狩帝はほぼ毎日琴子を自分の居所である清涼殿に呼んだり、自ら琴子の居所である藤壺を訪れたりしていた。
しかし、直樹は来なかった ――。

「お忙しいのね…きっと…。」
琴子は自分に言い聞かせる。自分の所へ文を届ける暇もないくらい忙しいのだと。
「まさかとは思うけれど…どなたか別の女性の元へ通っているとかは…。」
そのようなことを考えかけ、琴子はブンブンと頭を振ってそれを追い払う。
「お兄様に限って、そんなことあるわけないわよね。」
琴子は溜息をつく。それが最近の琴子の日常だった。



琴子にとっては直樹の訪れがないことが一番の悩みであった。
しかし、宮中ではもっとすごいことが起ころうとしていた。

新しい尚侍琴子が参内してから、宮中…後宮の女性たちの警戒心はどんどん上がる一方であった。
寵愛する妃がいまだいない帝が、毎日のように会っているのである。いくら尚侍が夫ある身だといっても、帝がその気になれば手は出せないことはない。
幼き頃より、帝の妃となり皇子を産めと言われながら、教養を身につけてきた女御たちが琴子に憎しみを抱き始めることも時間の問題であった。



その日、琴子は家にいた時と同様、女房たちを相手に双六で遊ぼうとしていた。

「ま…双六ですって。」
聞こえた声に、琴子の周囲の女房たちが振り返る。
見るとどこの殿舎に仕える女房だろうか。見慣れぬ顔がこちらを見てクスクスと笑っていた。
「子供じみたことを尚侍様はされるのですね。」
「双六なんて下々の遊びではありませぬか。」
嫌味を言い残し、その女房たちは去って行った。

「何てことでしょう!!」
「嫌味を口にすることの方がはしたないでしょう!」
琴子に仕える女房たちが憤慨して、後を追いかけようとした。
「おやめなさい。」
それを琴子が止めた。
「なぜですか!尚侍様!」
女房たちが琴子に詰め寄る。
「…私が悪かったのだわ。」
琴子は双六を悲しそうに見つめて呟いた。
「ここはお家とは違うんですもの。私が至らなかったの。」
「そんな!双六は恥ずべき遊びでは…。」
「でも、お兄様に恥をかかせてしまうわ。」
琴子はそれを心配していた。
「あまり私が変なことをすると、お兄様が笑われてしまうもの…ね?」
まだ口惜しそうにしている女房たちに命じて、琴子は双六を片付けさせた。



「片付けなくとも、堂々と遊べばいいのに。」
そこに突然やってきたのは、鴨狩帝である。
何の前触れもない訪問にはもうすっかり琴子たちは慣れてしまっていた。とにかく帝は早く琴子と会いたいがために僅かな時間すら惜しいという感じなのである。
琴子の方はそれは友人相手に早くくつろぎたい、政事で疲れた体を休めたいからだろうと思っているが。

「お聞き苦しいことを…。」
琴子は謝る。よりによってこのようなことを聞かれてしまうとは。
「どれ、出してみよ。」
帝は女房に片付けたばかりの双六を出すよう命じる。
「これは主上のようなお方が遊ばれるものでは…。」
琴子は止めるが、帝は落ち込む琴子を慰めたい一心からそう言っているのである。
そしてそれだけではない。
「お兄様が笑われる」――この言葉に帝は少し嫉妬しているのであった。



「こうやって賽を振りまして…。」
遊び方を知らない帝に、琴子は丁寧に教える。
「こうか?」
「はい、お上手でございます。」
琴子は帝に笑いかけた。
「…蹴鞠の他に褒められることがあったんだな、私も。」
帝も笑い返す。
「まあ、おそれおおいことを。」
先程までの沈んだ気分が、少しずつ浮上してきていることを琴子は感じる。

「尚侍と話すとこちらも疲れが取れる。」
鴨狩帝はすっかり双六に夢中になり、夜が更けるまで琴子と共に過ごして戻って行った。
「よかった…お役目が果たせて。」
帝を見送りながら、自分の役目を果たせたことに琴子は喜びを感じていたのだった。



しかし、このことも瞬く間に後宮に広まる。
そして琴子へ向けられる攻撃は増していく――。

「まあ…何ていうこと。」
移動していた琴子たち一行の足が止まった。途中の通路が汚されていて通ることができなくなっているのである。
これにはさすがの琴子も動揺を隠しきれない。
「あらあら、お気の毒ですこと。」
戸惑う琴子たちを遠くから嘲り笑う声が聞こえてくる。
「どうされるのかしら?主上に助けを求められればよろしいのに。」
クスクスと嫌味な笑い声を、琴子は唇をかみしめて耐える。
そんなこと、できるわけがない。

結局、琴子たちは元来た道を戻り遠回りして目的地へと向う羽目になった。
「ごらんなさい、何と情けないお姿!」
戻る琴子たちの背中に笑い声はずっと響いていた。



「大丈夫でございますか?」
部屋に戻りぐったりとしてしまった琴子を女房たちが心配する。
日々エスカレートしていく嫌がらせに琴子も困り果てている。
「左大臣様や直樹様にお話しましょう!」
女房たちは全員口を揃えた。琴子の後ろ盾は強力なものである。これを利用するのが一番早い。
「だめ!!」
琴子は厳しい口調で諌めた。
「なぜですか?」
これ以上嫌がらせを受ける女主人を女房たちは見たくはない。
「このようなことが起きているなどとお兄様やお義父様が知ったら、お立場が悪くなってしまうわ。」
「そんな…。」
「とにかく。絶対に口外してはだめよ。お兄様にも言わないで。」
琴子がそう言うのだから仕方がない。

「それに、嫌がらせって…。」
不満そうな女房たちに琴子は笑いかける。
「ほら、『源氏物語』でも桐壺の更衣が受けていたでしょう?何だか私も更衣になった気分だわ。美しいって罪ね。」
冗談を言って笑う琴子につられ、険しかった女房たちの顔にも笑顔が広がった。



しかし、琴子とて落ち込んでいないというわけではない。
明るく話すのは、女房たちを落ち込ませないようにするため。自分が不甲斐ないばかりに迷惑をかけていることが心苦しいのである。
そして、両親に迷惑をかけることも避けたい。
実の娘ならともかく、自分は養女の身。落ちぶれて行く所を救いだしてもらった境遇である。それなのに大切にしてもらった上、直樹とも結婚させてもらった。
恩返しをしなければいけないところなのに、迷惑をかけることなど絶対に避けたい。



夜が更けた後、一人になった琴子は月が照らす場所まで移動し鏡を覗きこんだ。
「…美しくないことは自分がよく知っているわ。」
鏡の中の顔は平凡そのもの。きっと自分をいじめている女房たちの方が美しいに違いない。
こんな平凡な娘が、女房たちの憧れの的である直樹と結婚したことが許せないのだろう。それも嫌がらせの一因になっていることを、琴子も薄々感じている。

「もっときれいだったら、皆からお似合いだと言われるのでしょうね。」
琴子が宮中に出仕した最大の理由は、立派な貴公子である直樹の妻として認めてもらいたいということだった。
どんな理由にせよ、名誉職にせよ、帝から請われたのである。その期待に応えることができたら、
「中納言直樹様の奥方は本当に素晴らしい。」
「あのような奥方がいれば、家は万全。」
と皆から認めてもらえるのではと思ったのである。

直樹が出仕に反対していることも知っていた。でも養妹だった自分を選んでくれた直樹のために、その一心で琴子は宮中に上がる決意をしたのである。

なので、どんなことがあっても直樹に助けを求めることはできないし、したくない。

「頑張らないと。」
鏡に向かって口にした時、
「何を頑張るんだ?」
という声が聞こえた。

「お兄様!」
驚いて大声を琴子は上げてしまった。その口を直樹が袖で塞ぐ。
「馬鹿、夜中だぞ。」
「…ごめんなさい。」
でも怒られることも今はとても嬉しい。
こうして直樹が会いに来てくれたのである。

「悪かった。少し忙しくて。」
琴子の傍に座り、直樹は謝った。
「いいえ。御公務は大事だもの。でも…。」
琴子は少し口を尖らせた。
「どこかの女性の所へお通いじゃないですよね?」
「馬鹿か、お前は。」
直樹はいつものように小突く。そういう態度を取りつつ、ヤキモチを妬く琴子に安心する。
「そんな暇があったら寝てる。」
「それならいいです。」
安心してニッコリと微笑む琴子。

直樹が琴子を訪れなかった理由は忙しかったということではなかった。
公務など直樹の能力を持ってすれば、人よりずっと早く片付けられる。つまり時間は作ろうと思えばいくらでも作れるのである。

だが、直樹の耳にはある噂が届いていた。
「新しい尚侍に帝はことのほか御執心。」
やはり鴨狩帝は、琴子のことをまだあきらめていなかったのだと直樹は確信した。
周囲が面白半分で直樹を見る。その視線を直樹は冷たく跳ね返した。それくらいは何ともない。直樹の実力は誰もが認める所であり、彼に言い返されて反論できる人物は宮中には誰ひとりいない。

やがて噂を興味本位で口にする人間はいなくなったが、直樹の心は穏やかではなかった。
自分が知らない所、いない所で琴子と帝はどんな会話をしているのだろうか。何をしているのだろうか。
想像すればするほど気が滅入っていく。

しかし、いつまでも悩んでいても仕方がない。
日が経つにつれ、直樹は琴子に会いたくてたまらなくなっていた。自分の気持ちが落ち着かないから文も届けていない。
嫉妬と琴子への愛情を秤にかけたら…愛情が勝ったのだった。



「お兄様、見て。」
琴子の声に、直樹は我に返った。
「お月さまがとてもきれい。」
「…月なんていつも一緒だろ。」
月を見上げながら直樹が返す。今夜は満月だった。
「いいえ。」
琴子は首を振った。
「…お兄様と一緒に見る月が一番美しいんです。」
その言葉に、直樹はとげとげしかった気持ちが丸く、そう、今夜の月のように丸くなっていくことを実感する。
「そうだな。お前と一緒に見る月が一番きれいだな。」
琴子の素直な態度によって、直樹の心も素直になっていく。
琴子は嬉しそうに笑った。琴子も直樹に会えたこと、感動を分かち合えたことでいじめられていることなど忘れることができる。

「くしゅん!」
可愛いくしゃみを琴子がした。外に面したこの場所は冷える。
直樹はそっと自分の袖で琴子の体を覆った。
「…あったかい。」
琴子は体を直樹の体に預ける。直樹はその肩を抱く。

「お兄様…。」
琴子が出したのは、例の貝合わせの貝だった。
直樹も懐から取り出し、琴子が手にしている貝と自分の貝を合わせる。ぴったりと合わさった。
「ちゃんと持っていてくれたんですね。」
「持ってないとお前がギャーギャー喚くだろ。」
相変わらず意地悪なことしか出ない口が、やがて静かに琴子の唇へと近付いて行く。

―― 大丈夫、何も変わっていない。

お互い同じことに安心していることを知らず、二人は長い時間唇を重ねていたのだった ――。
















☆あとがき
『あさきゆめみし』でも描かれたあの嫌がらせを…^^;
あと、あやうく入江くんの出番がないところだった(笑)
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コメント

帝の真意は?

やっぱり帝は琴子を妃にしたいんでしょうか?無理強いする事はないと思うけど、なまじ優しいだけに琴子も無下にできないし…琴子は直樹の妻として相応しくなろうと一生懸命で、帝の気持ちなんか考えも及ばないんでしょうね。でも、こんな所に閉じ込められたら、琴子らしさが失われそうで心配です。でも、このシリーズの直樹は嫉妬より琴子への恋慕が勝っているので、ちょっと安心です。やっぱり相手が帝で、その帝から琴子を奪ったという負い目にがんじがらめなってますね。そんな時に過ごせた2人の時間がとても優しくて安心します。

祐樹'Sママさん、ありがとうございます。

妃にしたいかどうかは謎ですが、明らかにあきらめていないことは確かでしょう。
まあ、邪魔(直樹)がいないからプッシュプッシュですね(笑)
琴子ちゃんが全くその真意に気が付いていないから、今のところ進展はありませんが…。
鈍感がゆえにそのうち琴子ちゃんがとんでもないことをしでかすのではと、ちょっと緊張しております。
今のところ入江くんも嫉妬心を抑えていますが、溜めこんじゃうと爆発した時が大変なんですよね~。
祐樹'Sママさんは、嫉妬直樹と穏やか直樹、どちらがお好みでしょう?

拍手コメントありがとうございました。

拍手コメントありがとうございます!

ぴろりおさん
傍にいるとあきらめたくても、あきらめられないものですよね~。
人妻になってますます魅力的になっているでしょうし、琴子ちゃん!
入江くんが毎日やってきて見張るわけにもいかないでしょうし…。
と、こうしてすれ違いの日々が始まるのでありました…(笑)
色々参考になりそうな本を読みながら書いているのですが、最近そんなに難しく書かなくてもいいんだと漸く気がつきました(笑)7話くらいからは軽くなるといいな…と思っています。

hirominさん
「忍ぶれど」では琴子ちゃんは明るくお茶目だったのですが、「月読み…」ではちょっとおとなしくなっていますね。
琴子ちゃんの明るさは帝を魅了するのは仕方がないのですが、これで嫉妬をかってしまっては…^^;
直樹は琴子ちゃんの気持ちが自分に向いているかどうかしか、今は考えていないようですし!本当にもっと支えてあげなきゃと声をかけたいくらいです。

紀子ママさん
そうそう、これがないと宮中物じゃないですよね!
でも私、「高貴な方の嫌がらせ(笑)ってどんなのがあるんだ?」と悩んでしまって、また女人天下やチャンヒビンを思い出してみたのですが…。
そうしたら、
1.王妃を呪いころす
2.放火して中の邪魔者をころす
とかしか出て来なかった…(汗)
もうこれ、嫌がらせを通りこして犯罪だし、ここまでさせられない~。

あけみさん
うっかり入江くんの出番がないまま、5話を終わらせるところでした^^;
とにかく、毎話入江くんは出そうと思っているので!
いい男から好かれると、嫉妬はつきものとはいえ…琴子ちゃんは何も悪いことはないので可哀想ですよね。
ほんのひと時、琴子ちゃんにとっても安らぎの時間が来たみたいでよかったです。

佑さん
早くもこの話、入江くんの影が薄くなりつつ…(笑)
意識して出そうとしているのですが、どうしても舞台が舞台なだけに女性メインになりそうです。
琴子ちゃん、いつまでお仕事しているんだろ…考えてなかったわ(笑)

オソロシィやぁ・・・

こんばんは
 女の園の嫉妬はオソロシやぁ~ですねぇ。 帝も直樹も琴子にゾッコン《もう死言ですよねぇ・・・エヘ》だからこそ、琴子のすること総てが子供じみて写るんでしょうねぇ。・・・琴子の魅力に気づいてない~嫉妬炸裂ですねぇ・・・。

 もうちょっと・・・キチンと直樹が琴子を守ってあげないと・・・周りの毒牙~・・・帝への嫉妬などから距離なんぞ取ったら後で後悔しても知らないよぉ・・・。
月夜にはぜて・・・思いが心に染みわたるKiss・・・絵になるぐらいに綺麗ですよねぇ。・・・でも直樹の公務が忙しいのは帝の差し金?琴子との時間作りの為にでしょうかぁ?

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