日々草子 月読みの光に来ませ 4
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水玉

Author:水玉
『イタズラなkiss』のほかには『ゴルゴ13』が好きです☆
多数あるイタキスの二次小説の中で邪魔することなく、ひっそりとマイペースで我が道をゆきつつ生息しております。
そっと見守っていただけたら嬉しいです。

※当ブログに掲載されている文章及びイラストの無断転載・使用はご遠慮下さい。

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当ブログは、『イタズラなkiss』の二次創作をメインとしておりますが、時折管理人の趣味や日々の出来事についての記事も書いております。

原作者様や関係各位とは一切関係ありません。

二次創作については、いわゆる原作の隙間をぬった作品もありますが、主人公以外のキャラクターをメインとしたものや オリジナルキャラクターが出てくるものもございます。

そして、原作と違った時代(平安や明治やその他の時代を舞台にしております)、異なる設定(主人公を医者と看護師じゃない職業にしております)で書いてあるものが多いですが、原作を冒涜しているつもりは全くございません。

二次創作が苦手という方及び原作のイメージと合わないと思われる方はどうぞお引き取り下さいますようお願いいたします。

コメント及びメールなどでの苦情及び批判は公開、非公開を問わず、私へ告げることはご遠慮いただけますよう、お願い申し上げます。

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琴子の初参内の日は、その前途を祝うかのような晴天だった。

直樹が部屋を訪れた時、琴子は既に仕度を終えていた。
「お兄様!」

紀子が丹精をこめて用意した正装に身を包んだ琴子を見た時、直樹は言葉が出なかった。

「こいつはこんなに綺麗だっただろうか…。」
毎日見ていた顔なのに、まるで別の人間のようである。丹念に手入れをされた自慢の髪も光を放っていた。


「お兄様?」
立ち尽くしている直樹の様子を琴子が心配した。
「あ、ああ…。」
直樹は我に返った。
「…どこか変ですか?」
不安そうに衣装を確認する琴子。
「…全て変だよ。」
そんな琴子に直樹は心とは裏腹の言葉を投げつけた。
「嘘!!」
直樹の言葉に琴子は目をむいて、傍に置かれている鏡を覗きこんだ。
「ちゃんときれいにしてもらったのに…。」。
琴子はブツブツと言いながら、髪に触ったり襟元を整える

―― 他の男になど見せたくない。

思わず拳を握りしめて、直樹は本音を心の中で呟いた。

「ほら、もう行くぞ。」
「待って、もう少し。」
鏡から離れようとしない琴子から直樹は鏡を取り上げさせ、
「いくら見たって、変わらないもんは変わらないんだよ。あきらめろ。」
と吐き捨てた。
「ひどい…。」
琴子は鏡に未練を残しつつ、立ち上がった。



俥の中で琴子はそわそわと落ち着かなかった。
「何だよ、ったく。」
直樹はその琴子に苛立ちを露わにする。
「だって…すごく緊張してきてしまって。」
「うまく宮中でやっていけるだろうか」「何か失敗したらどうしよう」と何度も不安を口にする琴子。
「お前が失敗しないわけないんだから、覚悟を決めろ。」
「ひどい。今日のお兄様はいつにもまして意地悪!」
琴子は頬を膨らませた。
「人の気も知らないで。」
と、直樹は琴子から視線を外す。



琴子が宮中で与えられる居所は「藤壺」という御殿だった。
尚侍は通常は「貞観殿」に居住する。直樹も最初はそうだろうと思っていた。
しかし鴨狩帝直々の命により、帝が日常暮らす清涼殿に近い藤壺に決まったのである。つまり琴子と顔を合わせやすい場所ということ。これはいかに帝が琴子の出仕を心待ちにしているかの表れでもある。
「藤壺で暮らせるなんて。まるで藤壺の宮になったみたい!」
源氏物語好きな琴子は、その知らせに大喜びだった。
藤壺に居所が定まったということの重大さに、琴子は全く気が付いていない。
「やはり私の美貌ゆえ…。」
「んなわけあるか。」
直樹は冷たく否定した。
藤壺の宮は帝の妃でありながら、その息子の光源氏と恋に落ち子供をなす女性である。つまり夫がいる身でありながら不倫の恋に落ちたということ。そんな女性のように琴子がなったらたまらない。



あまりに何でも悪く考え過ぎる自分に嫌気がさし、直樹はまだ宮中へ向かう途中でありながら、疲れを感じていた。
「お兄様…。」
琴子が直樹を呼んだ。
「何だ?」
「あの、これを。」
琴子がそっと直樹に差し出した物は貝合わせに使う貝の片割れだった。
「『恋すてふ…』」
そこに書かれてあった和歌は、直樹が琴子に想いを打ち明ける際に贈ったものだった。
「これ、下の句は私が持っています。」
琴子は自分の分の貝も直樹に見せる。そしてそれを直樹が手にしているものに合わせる。貝は当然、ぴったりと合わさった。
「二人で一つですよ?」
少し恥ずかしそうに頬を染めて琴子は直樹を見た。
「お守りです。どこにいてもお兄様と私は一緒という意味のお守り。」
「お守り、ね。」
ようやく愁眉を開いた直樹はクスッと笑った。琴子が自分を想っていることを確認できただけでと、我ながら呆れる。

「必ず持っていて下さいね。私も肌身離さず持っていますから。」
心配そうに琴子は直樹に話す。
「分かったよ。」
その懸命な様子が可愛いと思う直樹も懐から何かを取り出す。
それは扇だった。
琴子が広げると、見事な絵が描かれている。
「まあ…素敵。」
うっとりと見とれている琴子に、
「俺が描いた。」
と言う直樹。
「お兄様が!」
琴子は驚く。
「お前よりはだいぶマシだろ。」
「…比べ物にもなりません。」
しゅんとなる琴子。まさか直樹が絵まで上手だとは。そんなことも知らず下手な絵を描いて喜んで贈っていた自分が恥ずかしい。

「でもこれも見慣れれば悪くはない。」
直樹は懐から琴子からもらった扇を広げる。
「お前の自画像も、破天荒な性格がよく出ているし。」
「破天荒って、ひどい!!」
「アハハハ。」
和やかな雰囲気に包まれた俥は、やがて宮中の門をくぐった。



帝の覚えめでたく、そして京の都の女性の憧れを集める公達を夫に持ち、時の実力者を義父にもつ新尚侍の参内は注目の的であった。
夫自ら付き添っていることに加え、その支度は女御の入内かと思わせる豪華さ。
後宮にいる帝の妃やその女房たちはかなり警戒していると言っても過言ではない。
何せ、新尚侍はかつて帝自らが妃にと望み、入内するところまで具体的に話が進んでいたのである。天下人の帝の求婚を直前で拒み、都一の貴公子が他の女性に目を向けずに寵愛している新尚侍はどれほどの女性なのだろうかと皆が待ち受けていた。



その新尚侍、琴子はこれまた女御入内同様の数の女房たちを引き連れ、藤壺へと入る。
そこは左大臣家、特に奥方の紀子の指示を受けた仕度が整えられていた。
「すごい…。」
その豪華さに目を奪われる琴子。そこまでしてもらっていいのだろうか。あとできちんと姑にお礼の文をしたためねばと思う。
「今日からここでしばらく暮らすわけね。」
まだ落ち着かないが、いつもの自分らしく過ごせばいいだろうと琴子は暢気に構えていた。
「お兄様は?」
「後ほどおいでになるとか。」
女房の返事に少し不安になってしまう。ほんの少し離れただけでこれなのだ。

少し休んでいると、鴨狩帝が訪ねてくるとの知らせが入った。
「なぜ?」
明日琴子の方から挨拶に出向くことになっていたのにと、途端に周囲が慌ただしくなる。
琴子も直樹から教えられたとおりの挨拶の仕方、受け答え等を急いで頭の中で復習する。



「主上(帝)が?」
別室で待機していた直樹は顔色を変えた。
「今夜はお見えにならないはずでは…。」
明日の挨拶も待てないほど、そんなに早く琴子に会いたかったのかと不安になる。しかしここでその場に乗り込んでいくことはできない。




「主上のおなりでございます。」
琴子は教えられたとおり、扇で顔を隠して鴨狩帝を出迎えた。
「これで大丈夫かしら?」
自分でもぎこちないと思う。懐にそっと収めているもう一つの扇――直樹から渡された扇を思い出し落ち着かせようとする。
そうして待っていると、人が入って来る気配がした。

声がかかるまで待つ琴子。
しかし、一向にその声がかからない。
「何で?」
顔を隠したまま、緊張が頂点までのぼりつめる。

その時、手にしていた扇が取り払われた。
「え…?」
「…何をかしこまっているんだか。」
そこには見覚えのある顔が笑って自分を見ていた。
「いつもの…そう、蹴鞠が得意なおてんばぶりは?」
「んまっ。」
思わず琴子が噴き出す。だが、ここは宮中。そして今は帝の御前であることを思い出し、すぐに表情を取り繕った。

「久しぶりだな。ちっとも変ってない。」
鴨狩帝は嬉しそうに琴子に話しかける。
こうして宮中で顔を見ると、やはり雰囲気が違うと琴子は思った。
「主上も…お変わりなく。」
しかし、その笑顔はあの時…別邸で初めて会った時とちっとも変っていない。そこに琴子は嬉しさを覚えた。

「ふつつか者ではございますが、心をこめてお仕えさせていただきます…。」
「いやいや、そんな気取った言い方はよせ。」
琴子が一生懸命覚えてきた挨拶を帝は遮った。
「御自慢の蹴鞠の腕を見せてもらおうかと思い、ここへ呼んだのだから。」
「そうなのですか!」
帝の冗談を真に受けた琴子は目を丸くする。それには鴨狩帝が爆笑した。
「蹴鞠は冗談だとしても、私の話し相手になってもらえればそれでよい。」
「話し相手?」
「ああ。」
帝は頷いた。
「…私の周囲には、心を打ち解けて話す相手がいないから。」
それを口にした帝の顔はどこか寂しそうだと琴子は思った。何もできない自分だが、気の置けない相手になることくらいはできるのではとも。
「だから私の友人になってほしい。ここも自分の家だと思いくつろいで過ごしてもらえれば。」
「…主上のお相手など畏れ多いことではございますが、私が出来ることでしたら何なりと。」
琴子は笑顔を見せる。その笑顔に鴨狩帝が魅了されているなどとも思わず ――。



「あのように嬉しそうな主上のお顔は久方ぶりですわ。」
「今日は朝からそわそわされて。尚侍様の到着はまだかと何度訊ねられたことか。」
帝に仕える女房たちの声が聞こえる。
直樹の顔色が変わっていくことに、その前に控えている琴子付きの女房は緊張を覚える。
早く帝が藤壺から出たという知らせは来ないのだろうか。その女房は何度も部屋の入り口を見る。

「主上が清涼殿に戻られました。」
使いが来た時、女房は胸を撫で下ろした。
胸を撫で下ろしたのは直樹も同様だった。もしこのまま帝が藤壺に泊るなどと言い出したら…そう思うと気が気ではなかった。
直樹の表情が少し和らいだことにも、その女房は胸を撫で下ろした。

しかし使いの者が口にした帝と琴子の様子を聞くと、直樹の顔がまた一変した。
「主上は姫様…いえ尚侍様をからかわれて。そのご様子に尚侍様の緊張も解されたようで、お二人で楽しそうにお話されておいででした。」
「こ、これ!」
女房は使いの女房の口を止めさせようとする。しかし使いの女房は気がつかずに続ける。
「本当に仲睦まじくおなりでして。きっとこれからは藤壺が後宮の中心に…。」
そこまで言いかけた時、やっとこの女房も事の重大さに気がついたらしい。
「ほう…。」
その声はどこから聞こえてくるのかと言うくらいの低音で、傍にいる誰もが凍りつくかのような恐ろしさが含まれていた。

「あ、いえ…その…もちろん尚侍様には直樹様という方がおいでなのも…。」
後の祭り。使いの女房は震えが止まらなくなっている。

「では、直樹様。尚侍様の元へ…。」
最初にいた女房が一刻も早くこの場から逃れようと、直樹を藤壺へと導こうとした。
「今日は帰る。」
「え?」
「琴子も疲れているだろうから、ゆっくり休めと伝えておくように。」
その物言いは、反論できるような感じではなかった。女房たちは平伏して直樹を見送ることしかできなかった。



「帰られた?お兄様が?」
直樹が退出したことを知り、琴子の顔に落胆の色が浮かぶ。
「そんな…。」
そして琴子は女房に訊ねる。
「何か、何か私に伝言は?」
「…お疲れだろうから、ゆっくりお休みになられるようにと。」
「それだけ?」
「…はい。」
「明日また来るとかは?」
「…何も。」
その時、直樹の元に使いに出した女房が、
「申し訳ございません!!私が悪うございました!!」
と謝った。
「どういうこと?」
「私が…私が主上と尚侍様のご様子をお話したばかりに!」
「いえ、私も悪いのです。直樹様のお傍にいながら…。」
もう一人の女房も一緒になって謝った。

「それはお兄様に失礼よ。」
琴子は女房たちを諌めた。
「お兄様は私と主上の仲を疑うような、醜い感情は持っていないわ。そのようなことを思うのは、お兄様だけではなく主上にも大変失礼よ。」
琴子は厳しい顔で女房たちをたしなめる。
「私と主上はお友達なの。主上もそう仰ったでしょう?」
琴子は他の女房たちに確認を求める。
「…はい。」
そう返事はするものの、女房たちも鴨狩帝が琴子に並々ならぬ思いを抱いていることに薄々気が付いている。
気が付いていないのは当の本人だけなのだ。

「お兄様もきっとお疲れになったのでしょう。お忙しい身でありながら、私に付き添って下さったのですもの。悪いことをしてしまったわ。」
琴子は心から直樹に申し訳ないと思っていた。

「お兄様のためにも…私がしっかりと宮仕えを果たさないと!」
直樹からもらった扇を広げ、琴子は直樹のために出来る限りのことをやろうと、改めて心に誓ったのだった。










☆あとがき
その節は沢山の励ましのお言葉、ありがとうございました!!
続きを書いてみました…結構、書くのが難しいことに今頃気づくバカな私(汗)
意味が分からなくてすみません!

あと、後宮の図を参考までに(クリックすると拡大されます)。

koukyuu
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コメント

満ち欠け

          こんばんは
  直樹も不安だよねぇ・・・詳しく知らないんだけど、一緒に過ごせなくなると思っていますが・・・帝が琴子を首を長くしてお待ちだし・・・綺麗な姿に惚れなおし色々不安がある中の的中・・・帝が早々にやって来ちゃったので、やきもきち嫉妬が既に出ちゃったねぇ・・・

 琴子と直樹が一緒に居た時は満月のように周りが光り輝き寄り添う感じだったのに、月の満ち欠けのように、気持ちが離れていくようで不安です。
 
 貝の片割れに直樹への思いを忍ばせて・・・直樹の為に頑張ろうと思う気持ちが速く直樹に届いて欲しいなぁ。 琴子は、どんな時でも直樹優先だから・・・嫉妬で直樹は琴子に辛くあたって欲しくないなぁ・・・。

吉キチさん、ありがとうございます。

ちょっと離れ離れに生活することになってしまうんですよね、この二人。
でも会おうと思えば毎日会えるんですけれど。

自分の手の届かないところへ行ってしまったような感じなんでしょうね、直樹にとっては。
こんなに離れたことがなかったから不安ばかりが募るのでしょう。
原作では神戸に入江くんが行っている間、琴子ちゃんがとても不安になってましたが…今回はその逆パターンとでもいいましょうか。

琴子ちゃんはいつでも直樹のことを一番に考えているんだから、それに直樹が気がついてくれるといいんですけれど。

拍手コメントありがとうございます!!

拍手コメントありがとうございます。

紀子ママさん
帝のすぐそばに部屋をもらったということがまた不安ですよね。
もう帝やりたい放題だし!
そうそう、原作はとっても勘違いしてましたよね。こっちの啓太くんは…キャラが全く違うことに(涙)
でもちょっとは彼にもいい思いをさせてあげたいなと思ってます。

Foxさん
わくわく…やっぱり彼が出るとそんな気分になるんでしょうか?
私も見取り図を見て、「ああなるほど、ここがこうか」と一人頷いていました。
ただ自分の知識不足と文章力のなさをすごく思い知らされることになっていて…それが情けないです。
身の丈に合ったテーマを選ぶことが大事だということに気付き、そしてその後悔は遅し…。
本当に読んで下さってありがとうございます!

まあちさん
まあちさんもわくわくしてくれますか!ありがとうございます。
今回入江くんは啓太を牽制できない立場なので…どう動くか(どう動かせるか)なんです。
もう、それがちゃんと書けるか今も不安で…。
一人ノートに今後の展開を書きつつ、「これでいいかな~」と思っています。
どうかまあちさんが最後まで読んで下さることを祈ってます!!(本気)
壊れたまあちさんを沢山見たいです♪

hirominさん
コメントのお返事にまたお返事をありがとうございます!!
そっか、それでいいんですね!何だか難しく考えてました!
教えて下さりありがとうございます♪
ぜひまた遊びに行きますね!
そしてこちらの続きも読んで下さりありがとうございました!
無邪気に振る舞う琴子ちゃんと、その琴子ちゃんを見て不安になっていく入江くん。
確かに昔の男(付き合ってはいないけど)が出て来て心穏やかではいられませんよね。
このシリーズは入江くんに耐えて耐えて耐えてもらうことになります(笑)。

あけみさん
こちらこそ読んで下さりありがとうございます!!
ひと波乱、ふた波乱ですめば…なあんて!
琴子ちゃんが鈍感なだけに、入江くんの心配は増す一方ですね。
琴子ちゃんが何も気が付いていないから、自分から言うわけにいかないし。
しかしうちの入江くんはどうしてこう、いつも自信がないんだろうか(汗)

佑さん
佑さんも読んで下さりありがとうございます!
そしてやっぱり琴子ちゃん大好きな佑さんらしいコメントに微笑みが(*^_^*)
確かに琴子ちゃんは何も悪くない!一人悩んでいる入江くんと、立場を利用してつけこんでいる帝が悪いんですよね~。

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