日々草子 月読みの光に来ませ 1
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水玉

Author:水玉
『イタズラなkiss』のほかには『ゴルゴ13』が好きです☆
多数あるイタキスの二次小説の中で邪魔することなく、ひっそりとマイペースで我が道をゆきつつ生息しております。
そっと見守っていただけたら嬉しいです。

※当ブログに掲載されている文章及びイラストの無断転載・使用はご遠慮下さい。

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当ブログは、『イタズラなkiss』の二次創作をメインとしておりますが、時折管理人の趣味や日々の出来事についての記事も書いております。

原作者様や関係各位とは一切関係ありません。

二次創作については、いわゆる原作の隙間をぬった作品もありますが、主人公以外のキャラクターをメインとしたものや オリジナルキャラクターが出てくるものもございます。

そして、原作と違った時代(平安や明治やその他の時代を舞台にしております)、異なる設定(主人公を医者と看護師じゃない職業にしております)で書いてあるものが多いですが、原作を冒涜しているつもりは全くございません。

二次創作が苦手という方及び原作のイメージと合わないと思われる方はどうぞお引き取り下さいますようお願いいたします。

コメント及びメールなどでの苦情及び批判は公開、非公開を問わず、私へ告げることはご遠慮いただけますよう、お願い申し上げます。

このブログ及び掲載されている話が嫌いだと思われたら、黙ってあなた様の中から、このサイトの存在を消去していただけますよう、お願い申し上げます。

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時は平安の世 ――。
ここは入江左大臣家の長子、中納言直樹は妻であり義妹でもある琴子と仲睦まじい暮らしを送っていた。

「いかがでしょうか、お兄様?今度は上手に染めることができたと思うのですが。」
ニコニコとして話すのは、中納言直樹の妻である琴子。
琴子は結婚した今でも、夫のことを「お兄様」と呼んでいる。
「…。」
そして無言でその品を広げている直樹。その手元には微妙な藍色で染められた衣があった。
「この色のムラは?」
「ああ、それは違います。わざとぼかしてみたのです。」
琴子は自分で染め物をすることが好きだった。何かというと夫の衣を染めて楽しんでいる。
これが器用な女性だったら、さぞ見事な趣味といえるだろう。
しかし琴子は、これ以上不器用な人間がいるのだろうかというくらいの不器用な人間だった。

「ちょっと肩にかけてみてくださいませね。」
琴子は自ら直樹の体に、その衣をかける。
「ああ、やはりこのぼかしがよく映えるわ。」
「…。」
そう思うのは琴子本人のみ。ぼかしというより、染めている部分と染められなかった部分の差がひどい。

「お前、全然成長しないな。」
大事そうに衣をたたむ琴子に、直樹は呆れた視線を送る。
「結婚して半年、少しは成長したかと思ったが。」
直樹の父、左大臣に養女として引き取られた頃とちっとも変っていない琴子。だが口ではそう言いつつも、その天真爛漫さは変わってほしくないと直樹は思っている。

「あ、そうでした。こちらもご用意したのだった。」
次に琴子が用意したのは…。
「また扇か。」
染め物に並ぶ琴子の趣味は扇に絵を描くことであった。
「さ、広げてみてくださいませ。」
琴子に言われるがまま、直樹は扇を広げる。

「ああ、上手になったな。」
広げた扇を見て、直樹は琴子を褒めた。
「まあ、本当ですか?」
琴子の笑顔が顔じゅうに広がる。
「ああ、これはあれだろ?大江山の鬼。うん、よく描けている。」
直樹の言葉に、琴子が姫とも思えない顔をした。
「何だ、そんな顔をするな。可愛くないぞ。」
「お兄様、それは…私の顔です。」
「えっ!!」
直樹は扇と琴子の顔を比べる。

「だって、ここに角が…。」
「それは髪をちょっと芸術的に表現してみたのです。ひどい…鬼だなんて。妻を鬼呼ばわりするなんて。」
大きな目に涙をため、恨めしそうに直樹を見る琴子。
「お前の顔を描いた扇なんて恥ずかしくて持ち歩けるか。」
直樹は気まずさを隠そうと、更にきつい言葉を琴子に投げつけた。
「下手くそなくせに、芸術的とか挑戦するなよな。」
「下手って少しは上達したかと思いますけれど。」
「後退しているな。」
「ひどい。」
この会話も日常茶飯事なこと。
結局のところ、直樹は琴子が可愛くてたまらなく、こうして毎日からかって遊んでいるのである。
何よりも、琴子が一生懸命自分に尽くしてくれることが堪らなく嬉しいのだった。



さて、宮中では尚侍(内侍司の長官である女性)に欠員ができてしまい、その後任を探していた。
内侍司は帝の秘書役ともいえる重要な役職でそこの長官なのだから、それなりの家柄の女性が求められる。
また尚侍は、帝の寵愛を得ればそのまま女御となることもあるので、この欠員補充には名家が娘を何とか入れようと躍起になっていた。

「どうしたものだろうか…。」
時の帝、鴨狩帝はこの状況に頭を悩ませていた。
貴族たちが自分の娘を尚侍にとしているのは、まだいない帝の子をなんとか産ませようと考えていることは一目瞭然である。
鴨狩帝にはすでに多数の后妃が侍っていたが、未だ寵妃と呼べる后妃はいなかった。

「いずれも素晴らしき姫君たちなれば…。」
相談を受けている直樹もそうとしか答えようがない。
「しかし、后になるべく育てられた姫は皆、面白味がないしな。」
「面白味がないという基準で判断されるのはいかがかと。」
直樹は若い公達の中では一番の出世頭である。帝の信頼も厚い。そして帝に対しても遠慮なく物を言う。
「だが…。」
鴨狩帝は額に手をやり溜息をつく。
直樹とて、帝に仕える身としては早く寵愛する妃が帝の前に現れてほしいと願っている。

「ああ、そうだ。」
鴨狩帝は顔を上げた。
「尚侍は、未婚の姫とは限らないはず。」
その時、直樹は嫌な予感がよぎった。
「…だな?中納言。」
「…さようで。」
念を押す鴨狩帝に、絞り出すように返事をする直樹。
「それならば、中納言の北の方でもいいわけだな。」
直樹の不安は的中した。
鴨狩帝は、琴子を尚侍にと言っているのである。

かつて鴨狩帝は、琴子に想いを寄せていた。
入内も寸前まで話が進んでいた。しかし、琴子が直樹への恋心を抱いていたことと、直樹が琴子を義妹以上に想っていたことを帝は知り、身を引いたのだった。

「お恥ずかしきことなれば、妻はとても尚侍のような大役は務まりません。」
「構うことはない。尚侍というのは飾りのようなものだ。」
鴨狩帝は引かない。
「しかし、尚侍は…。」
「将来女御なることもあり得る」との言葉を、直樹は呑み込んだ。
「それは気にしなくてもよい。」
鴨狩帝は直樹が言いたいことを察した。
「私は寵愛や世継ぎなど気にする必要のない、純粋に話相手を求めているのだ。」
確かに帝にはそういう友人のような相手が必要なのかもしれない。
それは直樹にも分かる。

鴨狩帝から琴子を奪ってしまったという後ろめたさから、直樹はそれ以上断ることはできずに、琴子の意向を聞くと約束させられてしまったのだった。



枕を共にした後、眠る琴子を横に直樹は単衣を着た。身に纏ったそれがひんやりと感じたのは、先程の情事の激しさを物語っている。
部屋の隅まで移動し、直樹は空を見上げた。月が美しく輝く夜だった。

結局、直樹は尚侍の件を琴子に切り出せなかった。
今でも鴨狩帝は、琴子を想っている ――それは直樹にもすぐに分かった。だからこそ琴子をと言っているのである。
その反動で、今宵直樹は琴子を激しく求めてしまった。



「…何か悩んでいらっしゃるでしょう?」
突然聞こえた声に、直樹は驚いて振り返った。
夜着の中から、琴子が直樹を見ていた。
「寝てると思ってた。」
驚きを隠すことなく、直樹は琴子に答える。
「お兄様が起きられた時に、目が覚めました。」
琴子は笑った。
「月がきれいだから、見惚れていたんだ。」
直樹は琴子の問いには答えなかった。
「来いよ。」
「…では、向こうを見ていて下さい。そして目を閉じていて。」
「どうして?」
「どうしてって…お兄様の意地悪。」
琴子は恥ずかしさで顔を赤くし、そして頬を膨らませた。夜着の中の琴子は何も身にまとっていない。
「…着替えるところを見られたくないのです。」
着替えるためには、起き上がらなければいけない。月の光で琴子の体が直樹の前に露わになってしまう。
もう何度も見ているのにと思いつつ、だが妻の恥じらいをまた可愛らしいと思う直樹は言われるがまま、庭に目をやった。

「まあ、本当にきれい。」
単衣をまとった琴子が直樹の傍に来て、空を見上げた。
「だろ?」
「はい。お兄様はこんなきれいな景色を独り占めしようとしていたんですね。」
「ずるい」と琴子は直樹を上目で睨んだ。
「だから、こうしてお前にも声をかけただろ。」
そんな琴子の肩を直樹は抱き寄せた。
「夫婦っていいものですね。」
直樹の体にもたれながら、琴子は呟く。
「こうやって美しいものを二人で見ることができるんですもの。」
「そうだな…。」
本当に琴子の言うとおりだと直樹は思った。

「風邪を引くから中へ入ろう」と直樹は琴子を再び夜着の中へと連れ込んだ。
琴子は直樹が何を悩んでいるのだろうかと心配していたが、再び直樹の愛情を受けているうちに、その心配は忘却の彼方へと去っていったのだった。









☆あとがき
水玉ジンクス その25(1から24まではどこ?)
『続編は失敗する』

水玉の掟 その15(1から14まではどこ?)
『平安物は和歌からタイトルをもってくる』

それなのに、『忍ぶれど』の続編です。
『ダンス』に続いての時代物の連続で失礼いたします。

そしてタイトルも和歌から拝借しました。久方ぶりにピーンと来たので(笑)。


断らなくても大丈夫とは思いますが、やっぱり念のために。

時代考証については、温かい目で見て下さい…。
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コメント

      

水玉様
新しいお話しですね。読めて嬉しいです。有難うございます。
月夜に肩を並べる2人・・・この時期にこの平安朝のまったり感がなんとも嵌っていて♡落ち着きます。
お茶目で可愛い琴子と、ついイジワルしちゃう直樹のコンビが微笑ましくて素敵です。
あの時はすんなり引き下がってくれた鴨狩帝でしたが、今回はどうなるのでしょうね?
水玉さんの後書きのジンクスと掟に大爆笑!いやいや、少なくともジンクス25は当てはまらないと思いますが(笑)続きを楽しみにしています。有難うございました。

思い合う気持ち

           こんばんは
 大好きな月がタイトルにもお話しにも入っていて嬉しいです。
直樹の複雑な思い・・・満月のようにマルク治まって欲しいです。

 あいも変わらぬ琴子・・・直樹の事思う気持ちは、より一層・・・しっかり直樹の理由判らぬが悩みは気づいたんだから・・・。

hirominさん、ありがとうございます。    

こちらこそ、読んで下さりありがとうございます♪
続編はどうも毎回、「うーん…」という感じなんですよね。自分では(笑)
書きたいと思って書いているのに、なぜか?という感じです。

初回という事でかなり糖分多めにしてみました。
もうこれ以上甘くはならないだろうっていうくらいに!

ジンクス25、どうか当たらないように頑張りたいと思います!

吉キチさん、ありがとうございます。

ありがとうございます♪
書いていくうちに月をキーワードにしたらうまくいくんじゃないかなと思って、タイトルもそれに近いものを探してきました←探すところが何だか…(笑)

琴子ちゃんは直樹をしっかりと見ているから、些細な変化も見過ごさないんですよね!

拍手コメントありがとうございます。

拍手コメントありがとうございます!!

Foxさん
『Foxのジンクス』それ、私もです!!
私もまっすぐに線が引けない。マーカーでフリーハンドでスッとラインを引きたいのに、おもいきりぐにゃっと曲がってしまいます。だからいちいち定規で…涙。
線がちゃんと見えるウィンドウのついたマーカーとか使っていても意味がなーい(笑)
でもFoxさんを見習って前向きに生きていきます!そう、少々の雑さもまた人間味があるはず!!
信者道、どうかこれからもよろしくお願いします♪

chan―BBさん
タイトルはうまくいったと思ったのですが…。
ちょっとマニアックになりすぎた感じが大きくて。これからどうしようかと検討を始めました。
お兄様は嫉妬の加減を知っているのか、いやいや。お兄様、嫉妬するということを実感してないでしょう♪
これからそれが書けるのか…うーん(汗)。

佑さん
全体的にゆったりとしているかもしれませんね。
今回は話をサクサクと進める気満々だったのですが、それでも宮中へ行くまで3話かかってしまいました。
この話は入江くんは啓太くんに『敬語』なんですよ~(笑)これがまた何とも♪

クチナシさん
ありがとうございます!!
平安物といっても、あまりマニアックにならないように(いや、マニアじゃないのでなろうと思っても無理ですが(笑))書けたらなと思っているのですが((+_+))
どんな形になっても書きたいなあと思ってはいるので、どうか読んでいただけたらと思います。

ぴくもんさん
その本、タイトルは知っていたのでぴくもんさんのコメント拝見したら早速図書館に予約しました!!
『あさきゆめみし』の影響があって、朱雀帝ってそんな熱愛ってイメージがないんですよね!でも、林真理子さんの手にかかるとどんな風に描かれているのか…だけど、六条御息所がタイトルに入っているので、彼女の気持ちだけを描いたのかと思ったら、そうじゃないんですね。かなり楽しみです!!
最近はコバルトなんかでも平安物が人気みたいで(読んではいませんが)。
そんな本格的な物は当然書けないので、適当に読み流して頂けたらと思います(笑)
でもやっぱり平安って読み返すと熱が戻りますね♪
無駄にいちゃいちゃシーンを増やしてしまい、何だか呆れられているのではないかと思うと心配です…。

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