日々草子 新妻の幸福 1
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水玉

Author:水玉
『イタズラなkiss』のほかには『ゴルゴ13』が好きです☆
多数あるイタキスの二次小説の中で邪魔することなく、ひっそりとマイペースで我が道をゆきつつ生息しております。
そっと見守っていただけたら嬉しいです。

※当ブログに掲載されている文章及びイラストの無断転載・使用はご遠慮下さい。

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当ブログは、『イタズラなkiss』の二次創作をメインとしておりますが、時折管理人の趣味や日々の出来事についての記事も書いております。

原作者様や関係各位とは一切関係ありません。

二次創作については、いわゆる原作の隙間をぬった作品もありますが、主人公以外のキャラクターをメインとしたものや オリジナルキャラクターが出てくるものもございます。

そして、原作と違った時代(平安や明治やその他の時代を舞台にしております)、異なる設定(主人公を医者と看護師じゃない職業にしております)で書いてあるものが多いですが、原作を冒涜しているつもりは全くございません。

二次創作が苦手という方及び原作のイメージと合わないと思われる方はどうぞお引き取り下さいますようお願いいたします。

コメント及びメールなどでの苦情及び批判は公開、非公開を問わず、私へ告げることはご遠慮いただけますよう、お願い申し上げます。

このブログ及び掲載されている話が嫌いだと思われたら、黙ってあなた様の中から、このサイトの存在を消去していただけますよう、お願い申し上げます。

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新妻の幸福 1






「まーずしさに負けたー、いいえー世間に負けたー…。」
機嫌の良い歌声が休日のワンルームマンションに響く。
「おい、やめろ。」
本を読んでいた直樹がベランダにいる琴子に声をかけた。
「どうして?この歌、この間テレビで流れてたよ?流行ってるんじゃないの?」
洗濯物の隙間から琴子が顔を覗かせた。
「お前が見てたのは“懐かしの昭和メロディ”だ。」
「そうなの?」
「休みの日にそんな辛気臭い歌は聞きたくない。」
「ふうん。それじゃあ入江くんの好きな歌にするね。」
「俺の好きな歌?」
そんなこと話した覚えはないと思う直樹。

「あーなたが望むなら、私何をされてもいいわ…。」
「ストップ!!」
気持ち良く歌う琴子の口を手で塞ぎ、直樹は室内へと連れ込んだ。

「…そんな歌、どっから仕入れた?」
「西垣さんが教えてくれた。入江くんの前で歌うと喜ぶよって。」
直樹は西垣のパーマ頭を思い浮かべる。
「あいつ、ろくでもないことを…。」
「続き歌っていい?」
「今日はポイント10倍デーじゃなかったのか?」
直樹は歌から琴子を離そうと、違う話題を口にした。
「あ、そうだった!」
手を叩いて思い出す琴子。
「忘れてた!行ってこないと!」
ポイントをゲットすることを何より大事にしている琴子は、いそいそとエコバッグと財布を用意する。

「あ、そうだった。忘れてた。」
出かけようとした琴子が何かを思い出したらしい。
「よく忘れてる奴だな。ったく。」
「あのね、今度トンブリ新聞とトンブリ国営放送がインタビューをしたいって。」
「何の?」
「ほら…結婚して少し経ったじゃない?新婚生活のあれこれを聞きたいみたい…。」
指で「のの字」を書きながら、琴子は恥ずかしそうに話す。
インタビューはトンブリ大使館で行われ、琴子だけでいいらしい。
「正確な日が決まったら連絡くれるって。」
「あ、そ。」
あまり目立つことが好きではない直樹は、インタビューを受けるのが琴子だけと知り安堵した。
「あんまりくだらないこと言うなよ。」
「んもう。ちゃんとラブラブだってことをアピールする機会なのに!」
琴子は頬を膨らませる。

そんな琴子を見ながら、直樹はふと思った。
琴子はこの生活に本当に満足しているのだろうか?
小国とはいえ、一国の王女だった琴子が、ヒラの新聞記者の妻となり家事をしている。
本当ならば、どこかの王室かそれなりの家の男と結婚するはずが…。
最近、直樹は自分が琴子を幸せにできているのか、疑問に思っていた。

「それじゃ、行ってきます!」
「気を付けて。」
そのようなことを直樹が考えているなど気付いていない琴子は、手を振ってドアを開け出て行った。



それから三十分くらい経っただろうか。

ピンポーン。

インターホンの音に直樹は怪訝な顔をして、読みかけの本を置いた。
琴子が鍵を忘れたのだろうか。
ドアを開ける。
しかし、そこには誰もいない。

「?」
いたずらかと思ってドアを閉めようとした直樹。
「…お待ち下さい。」
閉めようとしたドアが動かなくなった。
「あ…。」
直樹は視線を落とす。
そこには小さな老婆が直樹を見上げていた。

―― 新聞の勧誘か?
そう思った直樹。
「…入江様のお宅でしょうか?」
老婆は直樹を睨みつけるように訊ねる。
「はい…そうですが。」
どうやら新聞の勧誘ではないらしい。しかも…敵意を感じる。

「コトリーナ王女様はおいででしょうか?」
「コトリーナ…って、もしかしてトンブリ王国の方ですか?」
コトリーナとは、トンブリ王国王女である琴子の本名である。
「はい。私はトンブリ王国の王宮に仕えております女官長、名前をサシミ・ノ・ツマと申します。」
と、女官長サシミは頭を下げた。
それは本名ですかと訊ねたい気持ちを直樹は堪える。
「お会いするのは初めてですよね…?」
トンブリ王国には何度か足を運んでいるが、この顔に見覚えはない。
とりあえず琴子は留守だと告げ、中に入って待っていてもらうことにした。



「物置としてはまあまあですね。」
どこかで聞いた覚えのある台詞を言いながら、サシミは部屋を見回す。
「…住居です。」
直樹が言うと、
「こ、これが住居!?」
とサシミは目を吊り上げた。そして部屋の端にあるベッドに目を止める。
「…王女様のお寝間は別にあるんですよね?」
「いいえ。そのベッドで二人で休んでいます。」
「んまあっ!!!!!」
サシミは絶叫する。
「こ、ここで王女様が…何とおいたわしや!!」
そしてサシミは琴子がどこへ行ったのかと訊ねた時である。

「ただいま!入江くん、見て!ポイント集まったから500円の買い物券もらったよ!」
と、機嫌のいい声が響いた。

「ポイント?買い物券?」
サシミの眉がつり上がる。
「え?サシミ?」
部屋に入った琴子が目を丸くして、手にしていたエコバッグをドスンと落とした。
「サシミ、サシミじゃないの!」
「王女様、一体何をなさっておいでなのです!」
再会を喜ぶ雰囲気ではなかった。そして直樹はサシミが本名であることを知った。
「何って、スーパーにお買い物。見て、サシミ。買い物券を手に入れたのよ。せっせとポイント集めた甲斐あったわ。」
琴子は機嫌の悪いサシミの前に買い物券を見せる。
「嘆かわしや…王女様が…買い物…。」
「だって、主婦だもの。家計のやりくりは大事な主婦のお仕事よ。」
琴子は胸を張っている。

「王女様、あのような場所で休まれているようですが。」
サシミはベッドを示した。
「あら、サシミったら、もう。」
琴子は頬を染める。
「あのような狭い、そして粗末なベッドで…。」
「あ、大丈夫よ。ちゃんと入江くんが落ちないように抱きしめてくれるから。」
もじもじしながら話す琴子。しかしサシミの機嫌は直らない。

「…入江様。」
サシミはクルリと向きを変え、直樹を見た。
「お風呂はあるのでしょうか。物置に。」
「…ありますが。」
物置じゃない、れっきとした住居だと訂正したい直樹だが堪えながら、サシミを案内する。

「…私はお風呂を見たいと申し上げましたが。」
「ですから、お風呂です。」
風呂を見たサシミは直樹をギロリと睨んだ。
「これはダイコン洗い場でしょう!」
「ダイコン!?」
なぜダイコン限定なのか。直樹はサシミの思考回路に疑問を持つ。
「お風呂はどこなのです!」
「ですから、これがお風呂です。」
「サシミ、お風呂はこれなのよ。」
二人の間に琴子が割って入った。
「なんと…これではダイコンもろくに洗えないではありませんか!」
だからなぜダイコンにこだわるのか。直樹は突っ込みたい。
「このような場所で…王女様がダイコンと一緒に入られていると思うと…。」
サシミは額に手を当て、溜息をついた。



ピンポーン。

インターホンが鳴る。
直樹は嫌な予感を感じつつ、玄関へと向った。



「やあ!」
「…。」
ドアの前には今一番来てほしくなかった人物、直樹の先輩の西垣が笑顔で立っていた。
「いや、まいった、まいった。ミサちゃんとデートの約束してたことを忘れて、カオリちゃんとデートしてたらさ。ミサちゃんと街で鉢合わせ。いやあ、モテる男は辛いよ…。」
そう言いながら、西垣は勝手に部屋に上がる。
「ちょっと西垣さん!」
「こんな時は可愛い琴子ちゃんに慰めてもらおうかと思って…って、あれ?」
玄関傍の風呂場にいる琴子とサシミを見つけ、西垣は足を止めた。
そしてこの部屋に漂う異様な雰囲気に気がつく。

「何?お前も二股ばれたの?」
そして西垣はサシミを見ながら、
「しかしお前、熟女好きか?何だよ、琴子ちゃんという可愛い新妻がいながら熟女に手を出すって。しかも自宅まで押し掛けられるって、俺以上の修羅場だな。」
と笑った。

「…どなたです、こちらは。」
サシミは失礼なことを言う西垣を睨んだ。
「入江くんの会社の先輩の西垣さんよ。西垣さん、こちらはトンブリ王国の王宮の女官長のサシミです。」
琴子は西垣にサシミを紹介した。
「ああ!これは大変な失礼を!」
西垣はサシミに謝った。しかしサシミの機嫌はますます悪くなる一方である。
直樹は頭痛を感じ始めていた。



「ところで、トンブリ王国でお会いしていませんでしたよね。」
直樹は疑問を口にした。
「はい、私は旅行に出ておりましたので。」
サシミが答える。
「サシミはね、勤続30年のリフレッシュ休暇だったのよ。」
琴子が補足する。
「はい。トンブリ王国の王宮から御褒美としてヨーロッパ一周旅行を頂戴しておりました。」
サシミは少し誇らしげに言った。
「リフレッシュ休暇が…。」
「ヨーロッパ一周旅行…。」
西垣と直樹は顔を見合わせる。何ともリッチな休暇である。


「で、その留守の間に琴子と結婚した俺が気に入らないわけですか?」
直樹は腹を割ってサシミと話すしかないと思っていた。
「はい、さようでございます。」
そしてサシミも直樹の言葉を否定しなかった。
「サシミ!何てことを言うの!」
これには琴子が腹を立てた。
「入江くんのどこが気に入らないっていうの?どこから見ても素敵でしょ?」
「物置で、しかも自分専用のベッドも与えられず、更にダイコン洗い用のお風呂に入ることがですか?」
確かにトンブリ王宮はスケールが大きい。直樹もそれは認める。そこで長年暮らしているサシミから見ると、この部屋は物置同然に違いない。

「あの洗濯物も王女様が?」
サシミはベランダを指した。
「そうよ。何か文句ある?」
琴子はサシミを睨みつける。
「洗濯、買い物…疲れた体を休めるベッドもない…王女様、このことは国王陛下は御存知ですか?」
「そりゃあ…まあ…。」
琴子の言葉が濁った。それが直樹は気になった。
「このような暮らしをされていること、陛下にお伝えしてますか?」
「…部屋の広さは言ってない。だって聞かれてないもん。」
その琴子の言葉に、直樹はショックを覚えた。
「ごらんなさい。」
サシミは呆れたとばかりに首を振る。

「でも、広いお風呂に入りたかったらね、サシミ。日本には銭湯というものがあるのよ。」
「銭湯!せ、銭湯と申すのは…あの…男女一緒に入り、肌と肌を重ね合う淫らな行為の場所でしょうか!!」
銭湯と聞いたサシミは目を白黒させた。
「違うわよ!サシミ、何を勘違いしているの!!」
琴子が叫んだ。
「泡だらけになって、お互いの体を洗い合う場でございましょう!王女様はそこまでされているのですか、この男に!!」
とうとう「この男」呼ばわりされてしまった直樹。
「何を言ってるの!銭湯はそんないかがわしい場所じゃありません!もう、日本の人が聞いたら怒るわよ。」

そして琴子は続ける。
「あのね、男女一緒に入るのは温泉といって…まあ、ここで夫婦のコミュニケーションをはぐくむっていうか…。」
そして琴子は新婚旅行を思い出したのか、ポッと顔をまた染めた。
「へえ…そういうことしてるんだ。」
聞いていた西垣は直樹をニヤニヤしながら見る。
「どちらにせよ、何ということでしょう!」
サシミはへたへたとその場に座り込んでしまった。

「私の王女様が…大切にお育てした王女様が…まさかそんな結婚をされるとは…ああ、亡き王妃様がどれほど嘆き悲しんでいることか…。」
「まあまあ、サシミさん。」
西垣が笑顔でサシミの肩に手を置く。
「どうでしょう?入江が気に入らないのなら、この僕では?」
数々の女性を落としてきた魅惑の笑顔を西垣はサシミに向けた。
サシミはジッと西垣を見る。
しかしすぐに、
「選択肢にも入りませんね。」
とプイと顔を背けてしまった。西垣は「チェッ」と舌打ちをしてサシミから離れた。



「こうしてはいられません。」
サシミは立ち上がった。そして琴子の手を取る。
「さ、帰りましょう!」
「帰るってどこに?」
「トンブリ王国でございます。このような場所に王女様を置いておくことはできません。」
「冗談じゃないわ!私の家はここ!」
サシミの手を振り払おうとする琴子。しかしサシミは離さない。

「入江くん、何とか言って!!」
琴子は直樹に助けを求めた。
しかし、直樹の返事は琴子が求めたものとは全く違うものだった。
「…しばらく離れるか。」
「え…。」
琴子は呆然となる。
「どういうこと?」
「お前も…慣れない暮らしで疲れているだろうから、少し休んだ方がいいんじゃないのか?」
「おい、入江?」
これには西垣も真顔になった。
「入江くん?」
「俺も仕事…忙しいし、な。」
直樹の冷たい言葉に、琴子は顔を赤くする。しかしそれは先程までの恥じらいとは違って怒りのためだった。

「入江くんの馬鹿!!もう知らない!!」
止めに入ってくれると思っていた直樹が手を離したのである。琴子はショックでたまらなかった。
「分かったわよ。行くわよ、サシミ!!」
「はい、王女様。」
機嫌が良くなったサシミは、部屋を出て行く琴子の後をいそいそと追いかけて行った。



「入江…。」
後に残された西垣は、直樹を心配する。
「…。」
直樹は何も答えず、そのままベッドに座り込んだのだった ――。











☆あとがき
相変わらずのくだらなさで申し訳ありません。
長くはならないので、どうぞご安心を。
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コメント

ヅケヅケ官庁のお出まし・・・

    こんにちは
 琴子が王女でもあるから官長には、この場総てが『ありえない』と思い不憫に思ってるようだけど・・・琴子には『幸せの空間』なのに、すれ違ってしまったねぇ。 西垣先輩の存在も、引っ掻き回してくれるし・・・やり過ぎたぁ~とちょこっと思ってるようなぁ・・・引っ掻き回しの天才だぁ・・・毎度のタイミングの悪さですねぇ。

 サシミ・ノ・ツマさん・・・王国に、はなくてはならない存在のようにネーミングで思いました。

ああ、もう~!

何か考えがあってのこととは思いますが、もどかしいです~!
琴子にとっては、狭くたって物置みたいだって、入江くんといられれば豪邸と一緒なのに!

サシミ・ノ・ツマという名前に、水玉さんのセンスの輝きを感じました。こういうお名前大好きです♪
ああでも、今回はこの方が引き離してくれちゃったんですよね……琴子ちゃん、頑張って!

新キャラ登場

一度お話が消えててびっくりしました。何かあったんですか?でも、また読めて嬉しいです。新妻シリーズの琴子ちゃんのテーマソングは「昭和枯れすすき」ですか?明るい琴子と正反対ですね。そしてサシミ女官長!最高のネーミングです!是非とも命名の由来を教えて下さいませ。私のサシミ女官長のイメージは女優の佐々木すみえさんですが、よろしいでしょうか?でも直樹、何か変ですね?直樹らしくな~い。

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