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2008.12.07 (Sun)

好美の機転

学校の帰りに、好美と待ち合わせをして、街をぶらぶら歩く。
週に1、2度のことだが、そういうのが楽しいと僕は最近思う。


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今日もいつもの場所で待ち合わせをし、まずはカフェに入る。
好美が学校でのことをいろいろ面白おかしく話す。そしてその話に突っ込んだり、笑ったり僕はする。これもいつものことだ。

好美が追加でデザートを注文しに行っている間、僕は何となしに窓の外へ目を向けた。このカフェの道路を挟んだ反対側には、花屋がある。色とりどり、きれいな花が並んでいる。…いつか、好美にも何か贈ってやるか。そんな優しい気持ちに僕はなっていた。
「ん?」
僕は花屋へ向かって歩いてくる人間に目を止めた。
…あれは、お兄ちゃんの上司?である爬虫類じゃないか?ニタニタ笑いながら、花屋へ向かってくる。今日も変わらず気持ち悪いな。
爬虫類は、花屋へと入っていった…。何する気だろう…?何だか嫌な予感がする。

「裕樹くん!」
いつの間にか、好美がデザートを手に、前の席に座っていた。
「どうしたの?あの花屋さんに誰か知り合いでもいたの?」
「え?えーと…。」
僕は隠すことでもなかったし、話すことで自分の不安な気持ちを和らげたかったので、好美に全部話した。爬虫類がお兄ちゃんを狙っていろいろ仕掛けていることを全て。

「で、花屋に入っていったんだよ。何をする気か怖くてさ。」
「見に行ってみる?」
「いや…。僕は爬虫類と言葉を交わしたことがあるから、面が割れているからダメだ。」
「…じゃあ、私が様子を見てきてあげる!」
好美が言った。
「ええ!?お前が!?」
「だって私なら、その爬虫類さんと会ったことないから平気でしょう?何を企んでいるのか、見てくる!」
こういう時、目を輝かせる好美というのは、琴子やお袋にそっくりだと僕はつくづく思う。
入江家の男って、こういう女に弱いんだろうか…?

そんな話をしていると、爬虫類が店から出てきた。好美にもあれが爬虫類だと教える。
「よく分からないけど…。裕樹くんが爬虫類だって言うなら爬虫類なんだよね、きっと。」
好美は素直な感想を述べた。
そして、好美は「私に任せて!」と言い残し、花屋へと入っていった。

数分後、花屋から好美が出てきた。僕へ向かって笑顔で手を振っている。…可愛いな。

「うまくいったよ!裕樹くん!」
僕の前へ戻り、好美はVサインをした。
「で、あいつは何を企んでいた?」
「直樹さん宛に花を贈ろうとしていたみたい。」
やっぱり…!何て奴なんだ。
「でね、私、さっきの人の妹ですって言って、注文を止めてきたよ!」
「い、妹!?」
何てことを!いくら止めるためとはいえ、あんな気持ち悪い男の妹と名乗るなんて…。
「あんな男の妹に、お前は勿体無いよ!」
僕はブスッとした顔で好美に言った。だって本当にそう思うから。
「平気、平気。身内じゃないとまずいかなと思って。」
好美はそう言うと、ニコッと笑った。
本当に可愛いなあ。こんな所が僕は好きなんだよな。
「…お前って可愛いよな。」
つい、僕は本音を漏らしてしまった。
「え!?」
好美がゆでダコみたいに顔を真っ赤にした。それを見て、僕も顔が真っ赤になってしまった。

「…お前にも何か買ってやるよ。好きな花。」
その場をごまかすように、僕は好美に言った。
「えっ、本当!?」
好美が嬉しそうに言った。
「本当。それ食べたら選びに行こう。」
「うん!」
好美への愛情と、お兄ちゃんの危機を救ってくれたお礼だ。

数日後、僕の部屋に琴子が入ってきた。
「裕樹くん…。」
「何?」
「これ、本当にもらっちゃっていいの?」
そう言って、琴子が僕の目の前に白いバラの蕾だけの花束を出した。
「何のこと…?」
何が何だかさっぱりわからない。
「さっき届いたの。裕樹くん、私に贈ってくれたんでしょう?」
「何で僕がお前にそんなものを贈らないといけないんだ?僕はそんなことしてない!」
「だって、これ…。」
琴子が僕に宅配の伝票を渡した。
宛先、世田谷区…入江琴子様。送り主、住所同上、入江裕樹…。
…何だこりゃ!?
…好美の仕業か!あいつ、注文を止めたって言ったのは、こういうことだったのか!
何を考えているんだ!
「カードまでご丁寧に入れてくれたのは嬉しいけど…。こういうのって好美ちゃんにしてあげないと!」
僕は琴子からカードをひったくった。
“このバラの花言葉を捧げます”
あの爬虫類、こんな洒落たものまで付けてたのか…。迂闊だった!

「で、裕樹くん。花言葉って何なの?」
「知るか!これは…。」
僕が事情を全て説明しようとした時、お兄ちゃんの声がした。
「白いバラの花言葉は“私はあなたにふさわしい”。そして、蕾の花言葉は“愛の告白”…。」
何、この状況!?デジャヴ!?二人とも冷静に考えてくれ!僕が琴子になぜ愛の告白をしなければいけないんだ!
好美、今すぐ家に来い…!頼む!
僕は琴子の困ったような視線と、お兄ちゃんの冷たい視線を前に、好美に届くはずもないテレパシーを必死に送った…。

うふふ…。
今頃、裕樹くん、琴子先生や直樹さんに感謝されているだろうな。
普段、裕樹くんって琴子先生に悪態ばかりついているけれど、本当は大好きなんだよね。
照れ隠しだってこと、みんなに教えてあげたかったんだ、私。
だからこの間も、ただキャンセルするより、裕樹くんから琴子先生に贈ることにした方がいいと思って、送り主とか書き直しちゃった!

きっと「裕樹くん、ありがとう!」と琴子先生は感動して泣いちゃったりしてるかも。
そして「琴子に気を遣ってくれてありがとう」って直樹さんにも感謝されててね。
裕樹くんは照れくさそうに笑っているんだろうな。
あーあ、私も3人の仲間入りしたいなあ…。
って、それって裕樹くんと結婚…?いやだ!私ったら、何てことを!恥ずかしい!

…そういえば、爬虫類さん、何の花を選んだのかしら?
ま、好きな人に変な花なんて贈らないだろうから、大丈夫よね、きっと。


☆あとがき
初めて好美ちゃんを書いてみました!
書いていて、好美ちゃんの可愛らしさに改めて気づかされました!
やっぱり「入江家の人々」ってカテゴリ作った方がいいかなあ…。
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