日々草子 はじまりはダンス、そして… 17
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水玉

Author:水玉
『イタズラなkiss』のほかには『ゴルゴ13』が好きです☆
多数あるイタキスの二次小説の中で邪魔することなく、ひっそりとマイペースで我が道をゆきつつ生息しております。
そっと見守っていただけたら嬉しいです。

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当ブログは、『イタズラなkiss』の二次創作をメインとしておりますが、時折管理人の趣味や日々の出来事についての記事も書いております。

原作者様や関係各位とは一切関係ありません。

二次創作については、いわゆる原作の隙間をぬった作品もありますが、主人公以外のキャラクターをメインとしたものや オリジナルキャラクターが出てくるものもございます。

そして、原作と違った時代(平安や明治やその他の時代を舞台にしております)、異なる設定(主人公を医者と看護師じゃない職業にしております)で書いてあるものが多いですが、原作を冒涜しているつもりは全くございません。

二次創作が苦手という方及び原作のイメージと合わないと思われる方はどうぞお引き取り下さいますようお願いいたします。

コメント及びメールなどでの苦情及び批判は公開、非公開を問わず、私へ告げることはご遠慮いただけますよう、お願い申し上げます。

このブログ及び掲載されている話が嫌いだと思われたら、黙ってあなた様の中から、このサイトの存在を消去していただけますよう、お願い申し上げます。

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「はい、それじゃ、私のところまで歩いて来て下さい。」
琴子は部屋の端に立ち、両手を広げた。
その部屋には琴子の他にもう一人、男性がいた。
「あ…あ…ああっ!!」
その男性は頭に乗せた本を落としてしまった。そして本は男性のつま先を直撃した。

「痛い…。」
足を擦りながら顔をしかめる男性。
「大丈夫ですか?諏訪さん!」
琴子は諏訪と呼んだ男性の元へと駆け寄った。
「あ、大丈夫です…琴子さん。」
まだ痛そうにしつつ、諏訪は何とか笑顔を作って琴子を見た。
「難しいですね。これができないとダンスは無理ですか?」
「そんなことはないですよ。」
琴子は諏訪が立つことに手を貸しながら、微笑む。
「これでダンスが嫌いになったら、そちらの方が悲しいです。」
「そうですか?」
「ええ。」



琴子が現在住んでいる土地には、諏訪という男爵家の別邸があった。
そこに滞在中の諏訪家の子息がダンスの稽古をつけてくれる教師を探していたところ、土地の者が伯爵家の令嬢が近くに住んでいるということを教えたのだった。
伯爵令嬢だったらダンスの手ほどきをしてもらえるのではと諏訪家は考え、そしてその伯爵令嬢、琴子へ話を持ち込んだのである。
琴子が喜んだことは言うまでもない。
得意な分野で給金がもらえる。重雄を助けることができるのである。
そして琴子は諏訪家のダンス教師を引き受けたのだった。



「はあ…これで夜会になんて出られるのかな?」
練習後のお茶の時間、諏訪は深い溜息をついた。
諏訪がダンスの稽古をする目的は、数カ月後に東京で開かれる夜会に出なければいけないからだった。つまり彼の社交界デビューが目前なのである。

「大丈夫です。諏訪さんは真面目な方ですから、必ず上達します。」
琴子はそんな諏訪の目をじっと見つめ、励ました。
諏訪は背は高い。そして細い。琴子は失礼だと思いつつ、まるで針金のような人だと思っている。性格は気が弱いのが少々難といえよう。

「琴子さん…。」
「あの方法はやめましょう。諏訪さんが楽しく練習できる方法を私も考えますから。」
真面目に練習を続けている諏訪である。何としても夜会できちんと踊れるようにしてやりたいと思う。
そんな自分に、教師としてではなく一人の女性として熱い視線を注いでいる諏訪に琴子は気がつかないのであった ――。



目の前に座っている令嬢は確か…子爵だか伯爵だかの令嬢だということだった。
熱心に勧める親戚の話に適当に相槌を打っていた直樹は、写真もろくに見ていなかった。
このまま琴子を未練たらしく想っているのも辛いし情けないと思う。
それならば、もう想わずにすむ所まで自分を追い込もう ――。
直樹はそう考え、見合いの席に臨んでいた。

「あの…直樹さんはどのようなご趣味が?」
表情変えずに座っている直樹に、仲人は困り果てていた。それは直樹の前に座っている令嬢もその両親も同様であった。
「趣味…ですか?」
問われてふと、ピアノのことを直樹は思い出す。趣味といえばそれが趣味なのだが…。
ピアノを思い出すと、自然と琴子のことも思い出される。
弾いている自分の後ろに座っていつもその旋律を聴いていた琴子。
時には、何を考えているのか弾いている自分の顔を間近で覗きこんでくることもあった…。

「…盆栽、ですかね。」
「ぼ、盆栽?」
直樹の返答に、それまで恥ずかしそうに俯いてばかりだった令嬢も仲人も目を丸くした。
直樹の脳裏には、かつて琴子に言われたことが思い出されていた。
「そ、それは…なかなか…渋い…ですね。」
この若さで盆栽が趣味とは珍しいと誰もが思った。
「ええ。こんな性格ですから人間と付き合うということが苦手でして。」
「は…あ…。」
どう答えていいか分からずに令嬢は戸惑っている。
直樹はそれに気付きつつも話し続ける。
「まあ、人間と違って盆栽は喋りませんしね。こんな俺を相手にしてくれるのは盆栽くらいでしょう。そしてこの分だと…。」
「この分だと?」
思い出し笑いをしそうになることを堪え、直樹は言った。
「誰からも相手にされずに一人ぼっちになるんでしょうね。そして、盆栽相手に“このダメ盆栽が!”と八つ当たりしている偏屈老人の道、まっしぐらでしょう。」
「…。」
気まずくなってしまった空気を変えようと、仲人が令嬢の趣味に話を変えたが、直樹は何も聞こえていなかった ――。



「ただいま。」
「…お帰りなさい。」
見合いの帰りを今か今かと待っていた裕樹は、直樹を心配そうに出迎えた。
「お見合い、どう?」
「どうって?」
「…相手、気に入った?」
直樹の自暴自棄の様は見ていてとても不安だ。
直樹の最近の様子だと、ある朝裕樹が目を覚ましたら、「裕樹くん、おはようございます」と見たこともない女性がいて、直樹が「今日からお前の義姉だ」と紹介する…なんてこともあり得るのではないかと思う。

「…豪華な振袖を着ていたな。」
直樹は女中にお茶を運ぶよう命じて、裕樹にそう返事をした。
「振袖?顔は?どんな人?」
「さあ?」
新聞を広げながら、まるで他人事のような直樹。覚えていることといったら、令嬢が身に纏っていた友禅の振袖くらいなのである。
「さあって…。」
「興味がなかったから、覚えていない。というかろくに顔も見なかった。」
「そんな…。」
相手の女性を気の毒だと思う反面、裕樹はどこかホッとしていた。



しかし、そんな裕樹の安堵も次の瞬間消えた。
「話、進めてもらおうかと思う。」
直樹の意外な言葉に、裕樹の顔色は変わった。
「何で!」
「…いつかはしなければいけないもんだろ、結婚って。」
直樹は入江侯爵家の長男である。跡取りとしても結婚は避けられない。
「だったら、さっさと決めた方がいい。」
直樹はまるで夕食の献立を決めるかのように、自分の妻も決めようとしているようだった。
「自分の将来だよ、兄様!」
裕樹は叫んだ。

「…。」
直樹は手にした新聞を全く読むことなく、バサッとテーブルの上に置き立ち上がった。
「…琴子からの小切手、また届いているから部屋に置いておいた。」
そんな兄に裕樹は伝える。そして、
「…兄様が結婚した後も、何も知らない琴子はきっと…小切手を送るんだろうね。」
と呟いたのだった。



裕樹の言うとおり、直樹の机の上には達筆で宛名書きされた封書が置かれていた。
一体これは誰の文字なのだろうか。琴子の文字ではないことは確かである。父親である相原伯爵であろうか。
そんなことを考えつつ直樹は机の前に座り、封筒の中を開ける。
小切手もこれで四枚目となった。そして琴子がいなくなってから七カ月…。
小切手の金額はいつも同じ金額というわけではなかった。今日届いた小切手は先月のそれよりも金額が少ない。
琴子の暮らしが厳しいものとなっているのではないだろうか。直樹は心配になる。

その小切手を見ている直樹の胸に、先程の裕樹の言葉が蘇った。

裕樹が言うとおり、直樹が結婚してもこの小切手は毎月送られてくるのだろう。
琴子を忘れるために、琴子への想いを断ち切るために結婚しても…送られてくるこれを目にする度に、直樹は琴子を想い出すことになる…いや、結婚したとしても直樹が琴子を忘れられる日はくるまい。それは自分が一番分かっている。

それならば…。

暫く小切手を見つめた後、直樹は椅子から立ち上がった ――。



「兄様!」
居間に戻ると裕樹の他に、今日も二人の様子を見に来たのだろう、好美がいた。
気遣わしげに自分を見る二人に、直樹は言った。
「…まだ、全てに力を尽くしたわけじゃないことに気がついた。」
「え…?」
裕樹と好美は顔を見合わせる。そんな二人に直樹は微笑んだ。
「今、俺にできることをしてみるよ。」
「えっ…。」
「それじゃ…?」
裕樹と好美は同時に声を上げた。そしてその顔に笑みが広がる。

「俺にできることをしてみて、それでもだめだったら…。」
「そんなことはありません!」
直樹の台詞を遮るように叫んだのは、好美だった。その迫力に裕樹が目を丸くする。
「そんなこと、絶対ありません!直樹さんと琴子さんは…お二人は必ず結ばれるんです!」
そこまで口にして、好美は我に返った。その途端、自分はなんてことを口にしたのだろうと恥ずかしさで顔を真っ赤に染めた。

「…僕もそう思う。」
そんな好美の気持ちを受け継ぐかのように、裕樹が静かに言った。
好美は裕樹の顔を見る。裕樹は好美の視線を受け止め、そしてはっきりと言った。
「きっと琴子も兄様が探し出してくれることを待っているはずだよ。」
「…ありがとう、二人とも。」
二人の励ましに背中を押され、直樹は家を出たのだった。
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コメント

今晩は

直樹、酷すぎです。お見合い相手にも失礼でしょ!でも、さすが裕樹君。よくぞ直樹を諭してくれました。好美ちゃんも裕樹君も直樹には琴子しかいないってわかってるのに、当の本人が何してるんだか。でも、やっとやるべき事に気付いてくれてホッとしました。でも、まだ一波乱まってそうですね。直樹が琴子と諏訪さんの関係を誤解しなければいいけど…

よし!!直樹!!
とりあえず直樹さんは自分をきちんと見つめることができ
良かったです。
そして琴子ちゃん、琴子ちゃんは何一つ悪い事を行なっていないし
自分に正直に生きているのだろうけど
何だかとっても心配です。
なんだろう・・・このモヤモヤ感は。。。
ダンスの先生をしていて本来ならがんばっている琴子ちゃんに
素直に喜ぶはずなのに・・・・
あ~~早く琴子ちゃんと直樹さん二人良い方向に向かいますように!!

いつでも心に

こんにちは
 盆栽直樹かぁ・・・懐かしい響きです。琴子が直樹の事言った言葉だから忘れるハズなんかないよねぇ。

 フゥトでも思い出すのは琴子の事だから・・・やっとこさ素直に探し出そうですねぇ。 

 諏訪さん・・・良い人だろうけど やっぱり誤解の幕開けか?キューピット???気になる存在です。諏訪さんには申し訳ないが琴子に入る隙間はゼロだと思うけどなぁ。

前向き琴子ちゃんと♪いざ前向きへの直樹さん!

直樹さん、琴子ちゃんへの想いを断ち切ろうとして、かえって忘れることが出来ない自分に裕樹くんの一言で気が付く事が出来たようですね。
琴子ちゃんの暮らしを心配する直樹さんに愛を感じました。

後押ししてくれる裕樹くんと好美ちゃんの優しい言葉のリレー~~~♪
前を向くことができた直樹さん!!
・・・・・よかった、盆栽も偏屈老人には嫌気をさして、“このダメ盆栽”と言われる前に枯れてしまいそうな、一人寂しい直樹さんの行く末を心配しなくてよさそうで。。。
(まだ分からない。。。けれど。。。)

ところで!達筆な文字で宛名を書いているのは誰なのでしょうか~!?(わくわく)

☆~今日も水玉さんの書かれる可愛い琴子ちゃんに会えて嬉しかったです!~♪
琴子ちゃんの心からの笑顔が待ち遠しいですが、いつまでも待っていられます^^♪
続き楽しみにしております~~♪

コメント&拍手ありがとうございます。

祐樹'Sママさん
本当にお見合い相手は真剣に臨んでいるというのに、大変失礼な態度ですよね。
しかもその上、話を進めようとしているし。
このまま結婚したらどんなことになるか、ちょっと興味もあったりしますけど(笑)
周囲の誰もが気が付いているのに、本人が動こうとしないというこの情けなさ。
でもやっとエンジンがかかったようです。

ゆみのすけさん
そう!
今回も琴子ちゃんは何もしていない!周りのことを考えて一生懸命行動しているだけ!
そして直樹さんはやっとお目目を覚ましてくれたようで(笑)
うーん、今回は私の大好きなゆみのすけさんの「おばか!」が聞けないようでちょっと寂しい←完全Mな私を許して。
本当にもう、お子ちゃまなんだから~♪
早く琴子ちゃんによしよしと慰めてもらいなさいと言いたい(笑)
そしてゆみのすけさんのモヤモヤ感…私はそこが気になります。
え?それは何?何か波乱を待ち望んでいるのかしらん?
いや~もうこれ以上琴子ちゃんを苦しめたら、さすがに私の神経がもたないわ。

吉キチさん
琴子ちゃんの言葉は一字一句、全て覚えているんでしょうね、直樹さん。
そこまでいつも琴子ちゃんを想っているのだから、さっさと素直になって探しに行けばよかったんですよ。
日本中、いや世界中をね。
ま、やっと探す気になってよかった、よかった。
諏訪さん…確かに入る隙がないですよね。

あおさん
達筆文字、そこに目をつけられるとは!!
そこも次の次には明らかになる予定です!
それにしても、盆栽からも見放されるって、あおさん(笑)最高です!!
盆栽に見放される直樹さん…本当に哀れとしか言いようがない(笑)
確かにそんな直樹さんの行く末、私でも心配になります…。
そうならないためにも、必死で琴子ちゃんを探さないとね!
盆栽以外で唯一(?)、相手にしてくれる素敵な子のですから。
☆こちらこそ、待っていて下さりありがとうございます♪
早く琴子ちゃんの笑顔を皆様にお届けしたいです。


佑さん
やっと重い腰を上げましたよ、入江くん!
諏訪さんは…少なくとも天宮司よりはいい人ということだけをお伝えしておきます♪

Foxさん
まだ今の直樹は、琴子ちゃんに忍び寄る男性の影に気が付いていませんからね。
でも入江くんは琴子ちゃんを責める資格はないですし(笑)
琴子ちゃん、何も悪いことしていないから!
穏やかに話が進むことだけを祈っていて下さい♪

りあさん
やっぱりメロドラマは毎日続くから見続けることができるんですよね(笑)
琴子ちゃん、自分が結構モテるってことに鈍感ですからね。
直樹さんの盆栽話、ここで出せば琴子ちゃんへの想いがどれほど深いかが少しでも伝わるかと思って。
もう琴子ちゃんなしでは生きられない身体…って所に爆笑しちゃいました!!本当にそうなんですよね、入江くん!
そして、あのお返事は二転三転したいけれどできるかなあって意味ですから(笑)
そしてキャッチフレーズね!あれは違うお話に頂戴したものなんですが、本当に大爆笑でしたよ!!
りあさんがうちに頂戴するコメントを楽しんで下さっているということを知り、私、すごく嬉しかったです。
私、りあさんのコメントにもかなり爆笑していますからね!りあさんのコメントもいつも素敵だと思っております♪

hirorinさん
本当の趣味も口にしたくないくらい、お見合いに乗り気じゃなかったんでしょうね。
でも弟たちに背中を押してもらってやっとその気になって、よかった、よかった。
あのまま結婚しても、相手の女性も気の毒ですしね。
そして、あそこにいかれてたんですね!!
いや、恥ずかしい…あの頃は本当に夢中で毎日何回も投稿してました!
でもこのブログに掲載していない話が確か…一つあったはず!
あそこは本当に私の原点ですね。投稿始めた頃は「飽きたらトンズラ」するつもり満々でしたから(笑)
それがここまで続けていることが今持って不思議です。
読んで下さり、ありがとうございます。

あけみさん
やっと気がつきましたよ、入江くん。
これから琴子ちゃんを見つける旅に出かけるのでしょう!
見つけられるのか、見つけた後…どうするのか。ああ、また頑張って書かなければいけない場面が出て来た~!!

みづきさん
暴走するくらい頑張ってほしいものです。
また変なプライドが邪魔をしなければいいのですが。
それにしても琴子ちゃん、モテモテですね。
明るく素直な人はいつの時代も男の人が放っておかないのでしょう!

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