日々草子 はじまりはダンス、そして… 7
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水玉

Author:水玉
『イタズラなkiss』のほかには『ゴルゴ13』が好きです☆
多数あるイタキスの二次小説の中で邪魔することなく、ひっそりとマイペースで我が道をゆきつつ生息しております。
そっと見守っていただけたら嬉しいです。

※当ブログに掲載されている文章及びイラストの無断転載・使用はご遠慮下さい。

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当ブログは、『イタズラなkiss』の二次創作をメインとしておりますが、時折管理人の趣味や日々の出来事についての記事も書いております。

原作者様や関係各位とは一切関係ありません。

二次創作については、いわゆる原作の隙間をぬった作品もありますが、主人公以外のキャラクターをメインとしたものや オリジナルキャラクターが出てくるものもございます。

そして、原作と違った時代(平安や明治やその他の時代を舞台にしております)、異なる設定(主人公を医者と看護師じゃない職業にしております)で書いてあるものが多いですが、原作を冒涜しているつもりは全くございません。

二次創作が苦手という方及び原作のイメージと合わないと思われる方はどうぞお引き取り下さいますようお願いいたします。

コメント及びメールなどでの苦情及び批判は公開、非公開を問わず、私へ告げることはご遠慮いただけますよう、お願い申し上げます。

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重々しいベートーベンの曲がこの日も流れていた。
琴子は鍵盤に向かう直樹の後ろ姿を見つめ、耳を傾けている。

―― どんな顔して弾いているのかしら?

ふとそんな疑問が琴子の中に沸き上がってきた。
琴子はそっと立ち上がり、直樹の近くに寄った。
そして背後から首をのばすように、直樹の横顔を覗き込んだ。

―― まつ毛、長いなあ…。

まつ毛が顔の上に落とす影を見て、琴子は思う。

―― 唇、薄い…。

一文字に引き締められた形のよい唇。

―― 前髪、邪魔じゃないかな?

サラサラした前髪が目のところに軽くかかっている。

―― 指、きれい!

長年ピアノを弾いてきただけあって、その指は長く、そして鍵盤の上を軽やかに動いて行く。



「…お前のピアノの聴き方は、そんな失礼な聴き方なのか?」
「え?」
直樹の声に、琴子は見つめていたその指から目を離し、顔を上げた。

「うわっ!!」
いつの間にか直樹の顔とかなり接近していた。
そして琴子が叫び声を上げた時、思わずその唇が直樹の唇に触れそうになり、驚いて琴子はのけぞってしまった。

「何だよ、本当に失礼な奴だな。人の顔をジロジロ見やがって。」
どうやら夢中で見ているうちに、知らず知らずのうちにかなりの至近距離に来てしまっていたらしい。

「あの…。」
決まりが悪くなった琴子は、話題を変えようとした。
「いつもこう…重い曲なの?」
「重い曲?」
言われてみるまで気がつかなかったが、確かにそういう曲を好んで弾いていることは多いかもしれない。

「…何かあるのか?」
「いえ、別に。」
琴子は「何か文句があるのか」という意味にとらえた答えを返した。
「そうじゃなくて、何か聴きたい曲があるのかってことだよ。」
「え?聴きたい…曲?」
琴子はまた、鳩が豆鉄砲を食らったような顔をした。
その顔を見ながら、直樹は自分が琴子のその表情を結構気に入っていることに気がつく。

「ええと…ええと…。」
直樹からのせっかくの機会である。琴子は懸命に考える。
「…ワルツとか?」
「ワルツ?」
「そう。明るい感じで心が弾むようなワルツ!」
ダンス教師らしい選曲だと、直樹は思った。



「あ…。」
邸内の人間、ほぼ全員が驚きの声を同時に上げた。
「何と、珍しい…。」
今まで流れたことのない、明るく弾むワルツが流れている。
自然と人々の顔に笑みが浮かぶ。

「…。」
それは廊下にいた裕樹も同様だった。心が弾んでくる。
居間に入り、長椅子の隅で所在なさげに座らせられていた好美人形を手にし…ステップを踏み始めた。

「一、二、三、一、二、三…。」
琴子から教えられたステップを、慎重に裕樹は踏む。だが、流れてくる曲が緊張している心を解きほぐし始める。

「あ、できた!」
いつも間違えてしまうステップも、初めて成功した。
「楽しい…。」
自信がついたのか、裕樹は踊ることに夢中になっていった ――。



「ありがとう、とっても素敵な曲だった!」
弾き終えた直樹に拍手を送りながら、琴子は心からの感謝の言葉を述べる。
が、直樹は背を向けたまま微動だにしない。

「直樹さん…?」
琴子は傍に近づく。
「あ、ああ…。」
漸く琴子に気がついた直樹は声を出した。

―― 少し…痩せた?

琴子は直樹の顔を見て思った。
仕事と勉強の両立は、やはり相当の無理をしているのではないだろうか。
琴子の胸にそんな不安がよぎったのだった。



そして、琴子のその不安は少しずつ、形となって表れてきた。

「またお食事をお部屋に?」
女中が手にしているお盆を見て、琴子は怪訝な顔をした。
「兄様、このところずっと部屋で食べている…。」
裕樹が心配そうに呟く。

直樹はこの所、仕事が忙しいと言い食事を部屋まで運ばせていた。それだけでなく、朝も早くから起きているようだし夜は遅くに帰ってきたかと思ったら真夜中まで窓から明かりがもれている。

「そんなに仕事、忙しいのかな…。」
裕樹は体を壊すのではないかと心配している。
「…。」
琴子は仕事と学問を両立させているからだということが分かっていた。仕事が忙しいのも本当ではあるだろうが、少しでも勉強の時間を確保するために朝早くから起き、夜中まで机に向かっているに違いない。



「何か用か?」
部屋に入って来た琴子を、直樹は見た。
「あの…。」
琴子は机に目をやる。その上には難しそうな医学書が広げられていた。
「大丈夫?」
「何が?」
「…体。」
直樹は本に目を戻す。どうやら答えたくはないらしい。
「裕樹くんも…女中さんたちも皆心配しているから。」
勿論、自分もだと言いたいが何だか言いにくい。
「…。」
直樹は返事をしない。

「あ、そうだ!」
琴子は手を叩いた。何か思いついたらしい。
「首にネギを巻くとね、元気が出るんですって!」
「それは風邪だろ。」
「あ、そうだっけ?」
琴子はしゅんとなって項垂れてしまった。
「もういいから。勉強の邪魔だ。」
「はあい…。」
確かに、間違った知識を披露したりと琴子がしていることは邪魔以外の何物でもない。ここは大人しく直樹に従おうと、琴子は部屋を出て行こうとした。

「琴子。」
「はい?」
突然呼ばれ、琴子は振り返る。直樹は背中を向けたままである。
「…ありがとう。」
その背中から琴子が驚くほど優しい声が聞こえてきた。
「…ううん。」
琴子はそう返すと、静かにドアを開け、部屋を後にした ――。



「はい、そこでターン…。」
琴子の声に合わせ、裕樹はターンを決める。
「うん。最初に比べると見違えるように上手になったわ。」
琴子は頷いた。
「…ふん。」
褒められているのに、素直に裕樹は喜ばない。
「この分だと、好美ちゃんと立派に踊れるわね。」
「誰があんな奴!」
裕樹は好美の名前を出すと真っ赤になって怒り出す。琴子はそんな裕樹を可愛いと思いクスクスと笑った。

「あ、兄様!」
裕樹が弾んだ声を出した。琴子は振り向く。
「少しはましになってきたな。」
どうやら二人の稽古風景を見ていたらしく、直樹はそんな感想を述べた。
しかし、穏やかな直樹の表情と正反対の表情を琴子と裕樹は浮かべた。

「兄様…顔色が…。」
「本当…直樹さん…。」
「ああ、ちょっと根詰めて仕事をしていたからかな。」
直樹は軽く受け流し、琴子を見た。
「稽古、一段落したか?」
「はい。」
「それじゃ…来るか?」
「え?」
「ピアノ。これから弾くけど。」
初めての直樹の誘いである。
「でも…。」
琴子は躊躇した。疲れを癒すために没頭したいのではないだろうか。それなら他人の自分がいては邪魔になるだろう。
「…。」
しかし、直樹は琴子に来てほしい様子だった。何も言わないが、その目が琴子に何かを訴えているようである。

黙って二人のやりとりを見ていた裕樹が、行けと言わんばかりに琴子の背中を静かに押した。琴子は裕樹を見る。どうやら直樹が心配だから傍についてほしいようだった。



いつもと変わらぬメロディが部屋を包み込む。
―― 大丈夫なの…かな?
今日はおとなしく、後ろの方に座って琴子は耳を傾けていた。
そう思っていた時である ――、

バアーン!!
鍵盤がけたたましく鳴らされた。

―― え…?
腰を浮かせた琴子。その前で直樹の体が鍵盤の上に崩れ落ちていった ――。

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コメント

やっとコメントできました!

なんだか色々しているうちに、1話目にコメントを寄せられず…今日ようやくできました♪

今度はピアノなのですね!うわ~、いいなぁ、かっこいいんだろうなぁ……ついつい原作画で妄想してしまいます。
間違ってもショパンみたいな頭では妄想しませんとも。ええ。

なんだか直樹が心配なことになってますが、琴子ちゃんの看病で元気になったりするんでしょうか!?
続き楽しみにしております(^^)

こんばんは!

毎日更新うれしいです、本当にありがとうございます!

入江君がピアノって・・・
想像しただけでよだれが・・・うそです(笑)
でも、御曹司なんだしピアノくらい習ってそうですよね~?
女の子として育てられたんだし・・・あっ、これは禁句でしょうか?

それにしても入江君、根詰めすぎたみたいですね(泣)心配です・・・
次回も楽しみにしています!


大丈夫ですか!?

前回、裕樹君の出番が無くて、ちょっと寂しかったんですけど、おめでとう!ダンスが楽しくなってきたんだ。しかも好美ちゃん人形と一緒に踊って♪これからはどんどん上達するでしょうね。でも、直樹のピアノってやっぱり凄いんだ。裕樹君がステップ踏める様になるし、使用人達もうっとりさせるし、でも直樹をそうしたのは琴子なんですよね。でも、無理してとうとう限界がきた直樹。大丈夫何でしょうか?

No title

直樹さん、大変なことに・・・
これからどうなっていくのだろうか??
どんな事があっても琴子ちゃんをいじめないでね♪

ピアノを弾くからと誘う直樹。
秘かに好美人形と踊る裕樹。
もう!!たまらない!!ニマニマとしちゃいます私♪
皆ほど良い距離感がとてもいいわ!

バアーン!!
その後どうなっていくのかしら??心配です!!あーー直樹、繊細な絵が浮かぶ。。


前回のコメの返事の返事です!!
ど~んなにお話長くなっても構いません!!
カットなどせず、水玉さんの書かれたいこと思いっきり書いてくださいね♪


そうねそうね!!直樹イジメ!!これも大切ね!
↑琴子ちゃんの大事さをうーーーんと知るが良い!!←何様??

張り詰めすぎたのかなぁ

  こんにちは
 ワルツ流れるお屋敷ですねぇ。裕樹にも肩の力が抜ける曲でステップ踏めたしねぇ・・・・。 琴子よりダンダン近づく琴子のお顔に直樹がドキィ~してたりしてねぇ。

 気を張らなくても良い時間?琴子が傍に居て・・・直樹は無理しすぎたのかなぁ・・・ 傍に琴子だからホッとフゥウ~と息抜けるピアノ時間だったし・・・ 琴子が親身に看病かなぁ・・・。

 水玉さんへ・・・密かな楽しみの掛け軸ですが・・・お母様も・・・何か購入されたんでしょうかぁ? 掛け軸のお言葉・・・お上手なので・・・思わずふきだし笑い止らずです。すいません

No title

水玉さん、こんばんは^^

---しかし、直樹は琴子に来てほしい様子だった---
---琴子ちゃんに何かを訴えているような目の直樹さん---
そんな直樹さんから、ベートーベンのピアノソナタ『月光』が流れてきました!!
バアーン!!
直樹さんを倒れるまで追い詰めているのは???

☆水玉さんへ~♥
ゆみのすけさんに賛同します!!!
水玉さんのおっしゃっているのんびりテンポが、きっとお話のその後の展開に深みを増し、ファンを楽しませて下さる気がします!!
と、言うか大好きな水玉さんのお話を思う存分楽しませていただきたいというのが本音ですが~。
カットなしで!!~よろしくお願いいたします!!!

miyacoさん、ありがとうございます。

うわ、お忙しい中お越し下さり、ありがとうございます♪
確かに、入江くんの頭がもしもモーツアルトだとかベートーベンみたいだったら…ちょっと。
あ、でもモーツアルトは大丈夫か?そうだ、バッハの方だった←どうでもいいことを長々とすみません。

原作画でピアノを弾く入江くん…かなり素敵かも。
これが高校生とかだったら音楽室に人だかりができそうですね!!

はるさん、ありがとうございます。

こちらこそ、毎日足を運んで下さりありがとうございます!!

本当、お金持ちの御曹司って何でもできそうですよね。
ヨットとか乗馬とか…ピアノも習っていそう!!

そういえば、原作でも入江くん、ピアノを幼少時に習っていた感じでしたよね(笑)

倒れた入江くんの今後をどうぞお楽しみに…(笑)←お楽しみにって一体

祐樹'Sママさん、ありがとうございます。

一応、主役は入江くんと琴子ちゃんなのでいいかなあと思ったら、今回裕樹くんの出番がないという方が多くて、ちょっと驚いています(笑)
反省して、次回からはワンシーンでも出すようにします(笑)

入江くんのピアノはやっぱり人々を魅了するんでしょうね。
琴子ちゃんがそこに加わるとますます、魅力的になるんでしょう。

ゆみのすけさん、ありがとうございます。

私たちの願いは、そこですよね(笑)
「琴子ちゃんをいじめないように」
…それがわかっていて、どうしても琴子ちゃんをいじめる入江くんが書きたくなる私が(笑)

どんなに神経が図太そうでも(なんて言い草)、やっぱり入江くんも人間だから倒れる時は倒れるんだわね…。
琴子ちゃん、キスで起こしてあげたら…なんて、可愛い琴子ちゃんにできるわけないか。

そして、ありがとうございます!!
私の書きたいように…そうですよね、ゆみのすけさんはいつもそうやって私を励ましてきてくれました!!
今回もありがとうございます!!
書きたいものを好きなだけ書くがいい(←いや、そこまでは言っていないとゆみのすけさんの突っ込む様子が目に浮かぶ(笑))とのお言葉に甘えて頑張ります!!

吉キチさん、ありがとうございます。

絶対入江くんもドキッとしたでしょうね。琴子ちゃんの顔と接近して!
そこを出さないところがクールなところなんですけれど。

気を抜ける存在ができて、ほっとしてしまった途端に力が抜けてしまったのかも。
ほら、あの休日の前になると熱出すとかと一緒←私がよくそうなります(笑)

そして掛け軸ですね!!
母に吉キチさんからのコメントを話したら、
「コンドロイチンを買い、そして健康ドリンクを試飲させてもらったと伝えておいて!!」
…だそうです(笑)
いや本当、この薬剤師さん、若いだけに詳しいんですよ、薬剤の知識が。

あおさん、ありがとうございます。

ありがとうございます!!
お二人に励ましていただけて、私もこのまままっすぐ進む勇気が出てきました!!
…といっても、そんなに長くならないのでご安心を(笑)

ただ、その後の展開に深みが増す…という事は保証しかねます(笑)
もう、あおさんったら~(笑)

『月光』、なかなかいい曲ですよね。
確かにこの話の入江くんが好んで弾きそう…。

拍手コメントありがとうございます。

拍手コメント、ありがとうございます!!

あけみさん
琴子ちゃんの手厚い…もとい、ぶっ飛んだ看護だったら、きっと元気になりますよね!!
そろそろ話も新しい展開をめざします!!


るんるんさん
本当に入江くんって何をやっても絵になりますよね。
たとえそれが琴子ちゃんをいじめている様子でも(笑)
かっこいいって得だな~。
どうかそのまま、目を離さずにお付き合い下さい♪

佑さん
そうなんです。私どっかで書いたつもりだったのですが、どうやら書いていなかったみたいで。
琴子ちゃん、住み込みです。
考えてみたら、男所帯に女性一人で乗り込むって…かなりの度胸ですよね(笑)

紀子ママさん
私も看病したいけど…紀子ママさん、一緒に入江くんに蹴り出されましょう!!(笑)
せめて額の汗くらいは拭いてみたいものだわ(笑)
おお、ベートーベンではカンマエでしたか!!そこも一緒、一緒!!(笑)
グンソクくん、『ファンジニ』で子役から脱皮したそうですね。何かそれを知ったら『ファンジニ』が見たくなりました。

meganeさん
いえいえ、そんな後悔するほどのものでは(照れ)
やっと私が書きたかった部分まで辿りついて、安心しています。
といっても、一応ここからが山場予定なんですけどね^^
琴子ちゃんのダンスの先生設定に味をしめ、また違う話で何かさせてみようかと企みそうです(笑)

りあさん
6から続けてのコメントありがとうございます。
ショパン、いいですよね~。
小学生の時、同級生の子でピアノの発表会でショパンを弾くからと参考にするんだと曲集を買った子がいて、ダビングさせてもらった記憶があります。
それからショパン、好きです。
幻想即興曲は一時、携帯の着信音にしていました。
一番好きなのはやっぱり「英雄ポロネーズ」です。あのイントロがよくて。
りあさんのおすすめの「華麗なる大円舞曲」も!!←ダンスにいいですね^^
フジコさんで思い出したのは…「ラ・カンパネラ」!!
ところで…私以外に知っている人に今まで会ったことがないのですが…大昔に風間杜夫が出ていたドラマで、風間杜夫がピアノの教授かなんかで、富田靖子が娘だとかでやってきて…音大を舞台にしたドラマがあったんですよね。
そのドラマの最後に、富田靖子が病気の風間杜夫に弾くのが「ラ・カンパネラ」で。「私、お父さんのために弾くわっ!!」とか言っていて…。
誰も知らないですよね、すみません、変なことを言って。

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