FC2ブログ
2020年05月/ 04月≪ 12345678910111213141516171819202122232425262728293031≫06月

2008年12月05日(金)

秘密 第24話

ナースセンターへと戻った琴子は、自分を落ち着かせようと一旦、席についた。そして深呼吸をし、仕事へ取り掛かろうとした。
「あ、ボールペン書けない。」
傍にいた同僚の看護師が言った。どうやら自分のボールペンのインクが切れたらしい。

【More・・・】

「私、余分に持ってる。」
琴子がポケットから予備のペンを取り出し、同僚へ渡した。その時、琴子は気づいた。
「…指輪!!」
同僚に動揺を悟られないよう、ポケットの中身を全部取り出してみたが、入っているはずの指輪がなかった。
「今日は新生児医療センターへ行く用事があって、赤ちゃんを抱き上げる時、危ないからと一旦外してポケットに入れておいたはず…。」
しかし、いくら探しても見つからない。
「落とした?え?どこで?」
琴子は落とした場所にすぐに気がついた。先ほどの薬剤部で落としたとしか考えられない。
「どうしよう…。今更探しに行けない。でも、絶対あそこしかない…。」
青ざめたまま、琴子は頭を抱え込んだ。

ノックの音に、うとうとしていた直樹は起こされた不機嫌さを露にして返事をした。
「お休みのところ、すみません。」
“普通の”仮眠室にて手術の疲れを取っていた直樹の前に現れたのは、水沢だった。
「医局で伺ったら、こちらだと言われたので…。」
「何か?」
不機嫌さを全く隠すことなく、直樹は尋ねた。その直樹の目の前に水沢はネックレスをぶら下げた。
「奥さんの忘れ物です。」
「え?」
水沢に渡された指輪は確かに琴子のものだった。
「わざわざ、どうも。」
「何で僕が持っていたのか、訊かないんですか?」
水沢は笑顔で直樹に尋ねた。
「別に。大体想像つくし。」
直樹も水沢に負けない笑顔で答えた。先程の琴子の様子から、水沢と何かあっただろうとは薄々勘付いていたので、特に驚くこともない。

「…すごい余裕なんですね。」
水沢は直樹の態度に肩をすくめた。
「奥さんと僕との間に、何かあったとか疑わないんですか?」
水沢の疑問に直樹は笑顔を崩さずに答えた。
「全然。」
直樹は水沢の目をじっと見つめて、言った。
「あいつ、6年かけてこの俺を落としたんだぜ?」
「6年?」
「それだけ長い時間かけて俺を落としたあいつが他の男に、そう簡単になびくわけない。」
「…でも、先生より心惹かれる男性が現れたら、分からないんじゃありません?」
「あいつの目の前に、俺以上の男が現れることなんて、絶対あり得ない。」
直樹の自信たっぷりの態度と答えに、
「すごい自信ですね。」
水沢はそう返すと、仮眠室を出て行こうとした。そこへ直樹が声をかけた。
「妻が世話になったね。改めて本人からお礼を言わせるから。」
そして水沢が出て行った後、直樹は再びベッドへ潜り、眠りに落ちた。
関連記事
22:14  |  秘密  |  TB(0)  |  CM(0)  |  EDIT  |  Top↑

Comment

コメントを投稿する

URL
コメント
パスワード  編集・削除するのに必要
非公開  管理者だけにコメントを表示  (非公開コメント投稿可能)
 

▲PageTop

Trackback

この記事のトラックバックURL

→http://suisen61.blog77.fc2.com/tb.php/101-49067fb4
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

この記事へのトラックバック

▲PageTop

 | HOME |